ザ・グレート・展開予測ショー

!クリーニング


投稿者名:BOM
投稿日時:(03/11/15)


注 このお話の舞台は大晦日です。
  片手に年越しソバを持ち、紅白を見てるような気分でご覧ください。
  それではどーぞ!





カチッ ムィーン・・・

ズゴー ズゴー

ガッタンゴットンッ!!

「のわーっ!?」
「もう、お兄ちゃん!そこどいてよ!掃除機かけられないじゃない!」
「い、いや、どけと言われてもこんなに荷物に囲まれてちゃ・・・」
「だいたいムダな荷物が多すぎるの!」
「んなこと言ってもお前、思春期の青年にはいろいろと・・・」
「とにかく、早く片づけないとダメ!新年になっちゃうよ?」

そう言い放つは横島蛍。
かつては魔族ルシオラだった少女である。
現在は見事復活を果たし、六道女学院の2年生でおキヌとは同級生だ。
蛍の容姿はルシオラそのもの。まあ、妹なぶん幼くも見える。もちろん、人間なので触覚はない。

昨日まで蛍はおキヌのところに泊まりに行っていた。
その間横島は1人でお留守番。そして今日、蛍はアパートに帰ってきた。
・・・が、

「・・・ねえ、お兄ちゃん?」

掃除機をかけつつ、蛍が尋ねる。

「ん、何だ?蛍?」
「一体、どーやったらこんなに汚くなるの?」
「どうって・・・何がだ?」
「どーゆー生活してたらたった3日間でこんなに汚くなるの!?
 1人暮らしのときと全く変わりないじゃない!」

そう、蛍が意気揚々としてこのアパートに帰ってきたとき、部屋の中は何というかもう・・・凄かった。
辺りにはインスタントラーメンの空袋が、缶ジュースや雑誌や服などが・・・
そしてなぜか大量のティッシュまでが所狭しと落ちていた。
それを目の当たりにしたときの蛍の動揺は激しく、思わず叫んでしまったぐらいである。

とにかく、このままではとてもじゃないが気持ち良く新年を迎える・・・なんて出来るはずがない。
と、いうことで大掃除に取り掛かることになった。
横島が床に落ちているゴミを片づけてゴミ袋に入れ、蛍が掃除機をかける。
そんなことをしてたら、横島が片づけてたものにつまづいてゴミの山につっこんだ。
それがさっきの『ガッタンゴットン!!』である。

・・・とまあ、そんなことをしているうちに、床の掃除が終わった。

「じゃあ次は押し入れね?お兄ちゃん」

そう言ってふすまを開けようとする蛍。手を掛けた瞬間、

「だぁぁ!ち、ちょっと待て、蛍!」

そう言って蛍を止める横島。蛍からは見えないが、背中には冷や汗をダラダラとかいている。

「何?どーしたの、お兄ちゃん?」
「い、いや、その、何だ?・・・あー、ここは俺がやるから、お前は台所のほうをやってくれないか?」
「え〜?何でよ〜?」
「いや、ほら、ここにはいろいろと物が入ってるだろ?
 落ちてくる可能性だって充分にあるわけで・・・危ないだろ?なっ?」
「・・・・・・うん、もう!わかりましたぁ、じゃあ私はお台所の掃除してくるね?」
「おう、頼むぞ」
「言っとくけど、ちゃんと掃除してよね?」
「あ、ああ!もちろんだ」

パタパタパタパタ

蛍が台所へと行った後、横島は「ほっ」と安心した後で一言。

「・・・よし、いくらなんでもこればっかりは蛍には片づけさせられないしな」

そう言って横島はふすまを開け、中に入っていたモノを片づけ始めた。



===========================================



「「終わった〜!」」

そう言って床にペタン、と座る2人。2人の目の前には・・・

どんっ

山積みになったゴミ袋が10袋、積み重なっている。
下手すれば倒れてきそうなくらい、不安定に積み重なっている。

「それにしてもお兄ちゃん、よくこんなに溜め込んでたよね・・・」
「めんどくさくて掃除してなかったからな・・・自分でもビックリした」
「とりあえず、これで大掃除はお終いね。ちょっと休まない?」
「ん?ああ、そうするか」

そう言ってコタツに入る兄妹2人。横島はテレビをつける。
とたんにブラウン管から歌声が聞こえてきた。
どうやらつけたのは紅白歌合戦だったらしい。どこかで聞いたような歌が聞こえてくる。

『捨ぅ〜てぇたぁ、女ぁのぉ〜、涙ぁ〜酒ぇぇ〜・・・』

2人はブラウン管に見入っている。特に横島は信じられん、と言ったような顔をしている。
不意に、横島はこう喋った。

「アイツ・・・そこまで人気歌手になってたんか!?」
「え、どういうこと?お兄ちゃん?」
「アイツはな・・・」

横島はそれから何個か、蛍に話をした。蛍がルシオラだったときより前の話をした。
蛍はそれを面白そうに聞いている。兄の新たな一面を知れて嬉しいらしい。

「・・・って言うわけでな、そん時は散々だったんだ」
「アハハハ、やっぱりお兄ちゃんってそのころから女の子好きだったんだね?」
「や、やかましい!」
「アハハハ・・・あ、そーだお兄ちゃん。年越しソバ、食べない?」
「年越しソバか・・・よし、食べるか!」
「そうこなくっちゃ!」
「でも何でお前そんなこと知ってんだ?」
「泊まりに行ったとき、おキヌちゃんに教えて貰ったの」
「なるほど、でも家には蕎麦麺なんてないぞ?どーすんだ?」
「大丈夫、おキヌちゃんが少し分けてくれたよ♪」

そう言って微笑みながら袋入りの生麺を取り出す蛍。

「へぇ、おキヌちゃんに感謝しなきゃな。あ、俺も手伝うか?」
「いーよ、私が作ったげる」

言うやいなや、台所に行って調理を始める蛍。
カチッという音と共にコンロに火がつく音がする。
それと同時にシャーッという、鍋に水を入れる音が聞こえてくる。

蕎麦を作る蛍の後ろ姿を見ながら横島は思った。

(ルシオラ・・・いや、蛍。俺は今幸せだよ。
 兄妹とは言え、こうしてまたあの時と同じように時間を一緒に過ごせることが・・・
 お前の幸せは、俺の幸せ。この幸せは、誰にも壊させないからな・・・!)

「お兄ちゃん?ちょっとお兄ちゃん?」
「はっ!?ほ、蛍?」
「何呆けてんの?ほら、お蕎麦出来たよ!」
「え?も、もう?」
「当たり前じゃない、年越しソバは早いのがウリなの!さぁ、のびないうちに食べよ?」
「お、おぉ・・・・・・ん?美味い!」
「本当!?良かったぁ!」

ズルルッ ズルルッ

しばし、部屋の中には蕎麦をすする音しか響かなかった。
そして食い終わった横島がこう喋る。

「プハーッ。ごっそさん。本当に美味かったぞ、蛍」
「良かったぁ!昨日作り方教えて貰ったばかりだから自信なかったの」
「その割には上出来だったがな」
「ありがと♪・・・良かった、本当に。お兄ちゃんが喜んでくれて」
「え?」
「私ね、転生したときからずっと思ってたの。どうしたらお兄ちゃんを喜ばすことができるかな?って・・・」
「・・・・・・」
「ルシオラだったときにはあまり考えなかったけど、今は人間でしょ?これから、どうしたらお兄ちゃんを・・・」

ぎゅっ・・・

「お、お兄ちゃん!?」

蛍を抱き寄せて横島はこう言った。

「・・・大丈夫だ、蛍。今俺はとても幸せだぞ。お前が一緒にいてくれるだけで・・・」
「・・・!・・・・・・うん♪・・・」

ちょっとだけ、ちょっとだけだけど2人の空間が出来た。
そろそろ紅白も終わった時間帯。次の番組が放送されている。

「ちょっと寒いね。毛布もうちょっと出そうか?」

押し入れに近づく蛍。

「そうそう、おキヌちゃんがね、二年参りに行くから後から迎えに来るって言ってたよ」
「あ、ちょっと待った、蛍!」

蛍は横島の言葉は気にせずにふすまを開ける。すると、、

がらっ

どざざざざざ・・・・・・

中から出てくるは『よい子は見ちゃダメ♪』な本、ビデオテープの数々が・・・
物音一つ立てずにその場から逃げようとする横島。だが、

ぐわしっ

何者かに襟首を掴まれる。
キリキリキリキリ・・・と首をひねりながら見てみると・・・

「お兄ちゃ・・・いえ、ヨ・コ・シ・マ?これはどーゆーことかしら?」

片手に問題のブツを抱えて問いただす蛍。その顔はとても魅力的だが、目だけは笑っていない。

「い、いや、これはその・・・チガウンダヨ?ソレハソノ・・・」

しどろもどろの横島。そしてこの一言。

「オカシイナ?サッキオチナイヨウニツンダハズナノニ?」

・・・墓穴を掘る、とはこのことである。

「ふ〜ん、そうなんだ・・・落ちないようにねぇ・・・」
「違ーーーーーーう!!俺は無実だーーーーーーーーーっ!」
「・・・お兄ちゃんの・・・」


ブラウン管からはこんな声が聞こえてくる。
『さあ、いよいよ今年も終わりです。除夜の鐘を聞きながら今年を惜しみつつお別れを・・・
 あ、今除夜の鐘が鳴らされようとしています!』


「バカーっ!!」

『ぼわ〜〜ん』

ドッガーンッ!!

除夜の鐘と同時に、横島の煩悩の鐘も鳴ったようだ。


===========================================



その後、約束通りにおキヌちゃんと二年参りに行った2人。

「横島さん、何をお願いしたんですか?」
「んー?何だったっけな?美味いモンと給料UPと美人の姉ちゃんと・・・」
「いくらお願いしたんですかっ!?」

そこですかさず蛍が尋ねる。

「おキヌちゃんは何をお願いしたの?」
「え?わ、私はその・・・世界平和を・・・」
「おキヌちゃんらしいね、それ」
「そうでしょうかね?ハハハ・・・」

(い、言えない!横島さんと恋人になれますようになんて・・・)

「そういえば蛍ちゃんは願い事何にしたの?」
「えっ!?私は・・・やっぱり教えないよーだっ!」
「あっずるい!こら、教えなさいよー」
「やだやだ!いくらおキヌちゃんでもこればっかりは教えらんない!」

言えるわけないもん!このお願いは!

『ずっとずっと、お兄ちゃんや、他のみんなと一緒にいれますように!
 これからも、ずぅっとずっーーーーーーーーーと、この幸せが続きますように!』

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