ザ・グレート・展開予測ショー

!朝食の席。


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/11/15)

目の前で、笑っていてほしかった。

たとえそれが、恋人でなくても。

きっとそれがシアワセにきまってるから。



朝陽の差し込むダイニングキッチンにて独りの少女が楽しそうに、動いていた。


その少女はいわずもがな(なにが?)、横島蛍である

蛍は、珈琲豆をフィルターにセットして、珈琲メーカーにセットする。

ぽたぽたと、心地よい香りをたてて水滴が落ちていく中、手際よくパンをトースターに入れ、コンロでミルクを温めると同時に、フライパンに火をつける。
冷蔵庫からバターを取り出し、じゅうっと音をたてて溶けていくのと同時に、卵を二個。


少々の水を入れ、火を弱火にしてふたをする。


その間に、沸騰直前までいっているであろう、ミルクパンの火を止め、おそろいもマグカップに半分注ぐ。

生野菜の乗った皿にドレッシングをかけ、フライパンの火をとめ中の目玉焼をのせる。

もちろん半熟。


「よしっ」


会心の出来に思わず、笑顔である。





ちーんっと

軽やかな音をたててトースターがなる。

くるっとフライパンをコンロの上におき、焼きあがったパンを皿に載せる。

もちろんバターもたっぷり塗って。


そしてその頃丁度できあがっていた珈琲を半分ほどミルクの入ったマグカップに注ぎ。


「よしっかんせーっ」



蛍ちゃん特製の、朝ご飯出来上がりである。





同時に珈琲の香りに釣られてきたのか、おにいちゃんこと横島登場である。

「あ、呼ぼうとおもっていたのに」


「んー…いやまあ」

ぽりぽりと頭をかきながらまだ、覚醒してないのか半分ほど意味不明のことを呟きながら、ぱすんっと椅子に座る。



半分ほど、瞼が下がった状態で、それでも律儀に両手を合わせいただきますと手を合わせる姿が妙に可愛い。


「はいっどうぞっ」


くすくすっと笑い蛍。

何気ない時間。

恋人だったときには持ち得なかった、時。

そして今だからある時間。

ずっと、こんな時間に憧れていた。

激しい感情で、欲しがるのではなくて。

穏やかに、微笑む時間。

ちょっとしたことで笑える時間を。



はむはむと、まだ覚醒していないのだろう、機械的に動く手を表情をそしてそんな光景なぞ望めなかった時間。


「あー…そういえば」

そろそろ覚醒してきたのか、目にも照点もあってきている。

「ん?なあに?」


「今日、夜仕事だから、飯はいいぞ」

「はぁい」

「まって無くてもいいから、オマエ絶対俺のこと待つだろ?」

「うん」

「眠いだろーし先ねてていーって」


苦笑しながら横島(兄)がいうと、蛍は首を傾げいう。


「だって待ってないと、怖いもん」


と。


「だってそうじゃないと帰ってくるかどうか、確認しないと怖いよ…おにいちゃん」


そっと目を伏せ蛍は言う。

それは、危険をしっているからこそ、そして当たり前でない事を、簡単に人の命が消えることを知っているからこそいえる言葉であろう。


本当は、ついていきたい。

けれどこの地位を。

このシアワセを、横島の妹になるために、全てをなくした自分には出来ない相談で。



ただ、できるのは、待っていることだけ


そして

おかえりなさいということだけ。


こんなに、帰ってこないかもと想う事が哀しいとは、怖いとは想わなかった。

けれど、それでも欲しいと想ったこの日常。


横島は、くしゃりと、蛍の頭を撫でる。

「じゃあ、早くかえってこんとな〜」


「……ゆっくりでいいよ」

待ってるだけだから。

「いやでもな〜オマエ目をこすりながら、おどろどどろって効果音つけそうな感じでおかえりなさいって言われてみろ?すんげーこええぞっ」



「蛍そんな風に、おかえりなさいなんて言ってないもん!」


かあっと顔を赤らめ蛍。

「い−やいってるね」

にたりと、どことなくいぢわるそうに、横島。


「だからさ。」

「え?」


「早くかえってくるわな」



「………………うん」
その声はすこしだけ、掠れている。


「、この珈琲うまいな」
じわっと涙の滲むほたるにあわあわと、慌てるが横島としては効果的な慰めなど言えるわけもなく呆れるほど平凡な言葉を言う。

「珈琲メーカーだもん」

そっぽをむくように、蛍。

その言葉に尚更あわてて何かいいつくろう横島。

くすくすと目じりにひかる涙をぬぐいながら笑う蛍。




そんな、当たり前の一日の朝の風景。

こんなシアワセがずっとほしかったんだ。

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