ザ・グレート・展開予測ショー

夕焼け空を三人で・・・・・・・


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/11/15)


これは俺が美神さんに頼まれて、シロとタマモを連れ厄珍堂へ買い物に出かけた帰りの話である。












真っ赤に染まる夕焼け空。
寄り添うように伸びる三つの影は、唯一深紅の世界からはみだした色だ。
世界を覆う赤は次第に黒と混ざり、地平線を紫めいた色に染める。
紫めいた、つまりその色は不安定で脆い境界線の色。
だけど、赤よりも黒よりも一層綺麗に見え、人の心を打った。

「夕焼けって全てが終わりを迎える予兆みたいで寂しいわね」

タマモがぽつりと落とすように呟く。
誰に向けた言葉でもなく、内に隠した声を寂しげに口にした。
きっと、タマモが夕焼けに抱いた正直な感想なのだろう。

「タマモは夕焼けが嫌いなのでござるか?」

シロが興味本位に尋ねると、タマモはそれを首を振って否定した。
その様はだだをこねる子供の仕草に似ていてとても可愛らしい。
タマモは夕日を眩しそうに見上げ、自分の中にある本心に手を回した。
まるで脆い壊れ物か、今にも爆発しそうな爆弾を抱えているように慎重な手つきで自身の内に湧く言葉を選ぶ。

「・・・・・夕焼けは全てが終わりそうで凄く寂しいけど、嫌いじゃないわ」

その言葉に俺は少し共感を覚え、その理由をタマモに教えてあげた。

「タマモ。それはな、『寂しい』から嫌いになれないんだよ」

「・・・・・先生、それでは意味が分からないでござるよ」

シロの突っ込みに俺は「今、それを説明してやる」と手を振って応えた。

「『寂しい』から嫌いになれない。つまり、この夕焼けという代物は『寂しい』雰囲気を持ってるからこそ、その美しさを表現できるんだ。だからタマモは夕焼け色に染まった寂しい空を嫌いになどなれない」

「へっ?それでは矛盾するでござるよ。だって先生の論理でいけば『醜いのに美しい』だって成り立ってしまうでござる」

「・・・・・シロ、お前鋭いところを突くな」

俺はしばし悩み、逆に質問した。

「お前等は、物を美しいとか醜いとか、何で判断する?」

「決まってるでござる!それは・・・・・・・・えっと、何でござるかな?」

「感性よ」

困るシロを尻目にタマモが応える。
その顔は多少優越感を思わせる笑みを浮かべていた。
う〜ん、ライバル心?
まあ、それはともかくだ・・・・

「そう感性だ。その感性なんだけど、人それぞれによってその尺度が違うのは分かるだろ?」

「ええ、自分が綺麗だと思った人が、他人とってはそうではなかったなんてよくある話ね」

「その通り。で、人は目の前に比較する対照物を置かれると、それを自分の感性で測りやすくなりより深くその美しさを掘り下げる事が出来る。それが夕焼けの場合、その比較対照が「寂しさ」だったって事」

俺の説明にタマモは納得したように頷き、俺を見て笑った。

「横島って、意外とロマンチストなのね」

「なっ、馬鹿言うなって。俺は夕焼けにちょっと思い入れがあって、だから説明できただけだよ」

俺は頬を染めて照れてしまう。
だって、俺がロマンチストだぜ。
似合うはずがねえし、それじゃあ、あの西条の馬鹿はどうなるってんだ。
もはや、狂人のレベルを軽く超えちまうじゃねーか。

「あの〜〜〜」

「およっ。どうした、シロ?」

「先生の話が難しすぎてよく分からなかったでござる・・・・・」

・・・・・・シロには俺の説明では理解できなかったか。
だが、これ以上どう上手く説明すればいいんだ?

俺は困ってタマモを見る。
タマモは「仕方ないわね」と肩を竦めるとシロに俺の代わりに答えた。

「いい、シロ。簡単に言うとね、夕焼けってそれだけで綺麗じゃない?」

「綺麗でござるな」

「その美しさの中に「寂しい」や「儚い」という負の感情、つまり「醜さ」が内包しているの。それが元々あった美しさをさらに際立たせて、見る人の心を震わせるのよ」

・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・分かりやすい。
何でそんなに分かりやすくお前は説明できるんだ!
あ〜くそ、頭がいいからだな・・・・・・
頭がいいからそんなにごく当然のように説明できるんだな・・・・・
畜生っ!
俺だってなあ、俺だってなあ・・・・・・
勉強すればそれくらい・・・・・・

・・・・・・うわああああーーーーん!!

「どう、納得した?」

俺のタマモへの嫉妬(?)に気づくはずもなく、タマモはシロに理解できたか尋ねる。
まあ、これならシロだって・・・・・

「・・・・・・・」

シロは頭を抱え、少し時間をかけてからやがてにっこりと笑って言い切った。

「さっぱりでござる」

「「だぁーーーーーーーー!!」」















それから、しばらくシロにあれこれと様々な観点から教えるが、どうも無理っぽいので俺は断念した。

タマモは「これは、私への挑戦よ!」と言って、今もまだ粘っている。



頑張れ、タマモ!
俺は心から応援しているぞ!



心の中で精一杯タマモを応援してから、もう一度夕焼けに目を移した。














『人は失って二度と戻らなくなってから初めて、その大切さを理解する動物だ』






ふっと、その言葉が頭をよぎった。

「ルシオラ・・・・・・」

俺とお前の仲はそんな安っぽい仲じゃなかったよな・・・・・

お前が死んじまう以前からお互いに大事に思い合ってたもんな・・・・・・























夕日が沈んでいく。

その一瞬ともいえるその美しさは俺とルシオラの大切な宝物・・・・・・・


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