ザ・グレート・展開予測ショー

彼女の憂鬱


投稿者名:蜥蜴
投稿日時:(03/11/15)

 とりあえず、これが私の処女作になります。
 正直、グレ展(勝手に略すな)の全ての過去ログを見た訳ではないので、内容的に被るものが有るかも知れません。
 ハンドルネームにおいても、然りです。
 その際には容赦無く、指摘してやって下さい。
 ディスプレイの前で、五体投地してお詫びしたいと思います。

 一応、横島×ルシオラで、甘々……なのかなあ?
 拙い部分が多々有るとは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。

 それでは、この話を全てのルシオラーの方々に捧げます――

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 何の変哲もない土曜日の昼下がり。

「はあ……」

 高級マンションの1部屋の窓辺に、溜息を吐いている女性が一人。

「はあ……」

 見上げる空は、彼女の心を映すかの様に曇っていた。




     *** 彼女の憂鬱 ***




 後世、俗に『魔神戦役』と呼ばれる事になる、神界・魔界・人界全てを巻き込んだ戦いが勃発した。

 その戦いの中心となった横島忠夫という人間の少年と、ルシオラという魔族の少女。

 激しい戦いの最中、首謀者である魔神アシュタロスの野望をくじくのと引き換えに、ルシオラの命は喪われた筈であった。
 ……が、ルシオラの妹であるベスパの眷属である妖蜂の働きにより、何とか彼女は復活を果たしたのであった。


 ルシオラ復活後の横島は、他の女性に対し、煩悩丸出しの態度で接する事が皆無になっていた。
 余程それまでの恋人に対する自分の態度に思うところが有ったらしい。

 ルシオラの方にも、懸念された魔族特有の破壊と殺戮衝動は顕われる事は無く、人々の中に混じっての穏やかな日々を満喫していた。

 これには、彼女と彼女の姉妹、ベスパとパピリオの三人の生まれに理由が有った。
 アシュタロス配下のメドーサとベルゼブルが月へ攻め入った際、アンテナ魔族からアシュタロスへ送信されたエネルギーと一緒に、霊的に中性である月神族の霊基構造の情報も送信されていたのである。
 調整槽の中で最終調整に入っていた三人は、直属の上司になる土偶羅の手により、その霊基構造の情報を元に大幅に改造を施された。
 いかなる状況下でもコンスタントに能力を発揮できるようにする為の措置で有ったが、これこそが、後にルシオラが横島の霊基構造を自らのそれで補っても、横島の体が拒絶反応を起こすことなく存続できた原因で有り、彼女が普通の人間の様に振舞える要因にもなったのである。

 魔神戦役から一年後、正社員待遇で美神除霊事務所に再就職を果たした横島とルシオラは事務所の近所に4LDKのマンションを購入、同棲を始めた。

 雇用主である美神令子が横島の待遇改善をすんなりと許した事に、彼女の為人を知る者全てが驚愕を顕わにしたが、美神にしてみれば、ルシオラを喪った時の横島の慟哭を間近で見ていただけに、二人の新生活を阻害する様な真似は出来るだけしたくないと思っていた様である。

 周囲の人々の祝福を受け、幸せな生活を営む二人。気が付けば、あの全てを飲み込むかのような激しい戦いから2年が過ぎていた――。




 
「ただいまー」

 横島が仕事を終え、家に帰って来た時、いつもと違う雰囲気をいぶかしんだ。
 先に帰っている時には、抱き着いてキスを送りながら、自分の帰宅を喜んでくれる恋人の姿が現れないのである。

 不審に思いながら二人の寝室を覗いて見ると、彼の恋人であるルシオラが、どんよりとした空気を纏わりつかせながら、窓辺に座って空を見上げていた。

「ルシオラ……?」

「はあ……」

「ルシオラ!!」

「きゃっ! え? 横島? いつ帰って来たの?」

「今さっきだよ。どうしたんだ? そんなに暗い顔して?」

 ルシオラはしばらくの間、言い淀んでいたが、やがて現在の鬱屈の原因を話し出した。


「えとね……。今日の昼頃、パピリオから電話が有ったの……」

「へえ、パピリオから? そう言えば、来週の日曜に一年ぶりに会えるんだったな。
 で、どうだった? 元気そうだったか?」

「うん……。有り余る程、元気そうだったわ。
 それでね……、しばらくの間お互いの近況を話し合ったの……」

 ルシオラの末妹のパピリオは、現在魔界軍への就職が決まっていて、正規配属前の一年間の実戦さながらの長期訓練の最中だった。
 その為、訓練期間中は連絡も取れない状況下に有ったのである。

「なのに、どうして浮かない顔をしてるんだ?
 いつものお前なら、すごく喜んでいる筈じゃないか?」

「話の最後にね、あの娘こう言ったの。
 『あたしもこの一年でずいぶん成長して、身長は10cm、胸も5cm大きくなったよ。
  身長はまだまだだけど、胸の大きさは一年前のお姉ちゃんに並んだね。
  お姉ちゃんはどう? お義兄ちゃんに揉んでもらって、少しは大きくなった?』って」

 横島は絶句していた。この先の展開が読めたからである。

「それで私、つい、『もちろんよ。今度会う時にはびっくりすると思うわ』って言っちゃったの」

 苦笑しながら溜息をつく横島。ルシオラの涙腺は決壊寸前である。

「どうしよう横島? 0からの出発だったパピリオにすら追い越されちゃったら、私、私……」

 自分の恋人が胸の大きさを気に病んでいた事は知っていた。
 その大きさが出会った頃からまるで大きくなってはいないことも。
 しかし、これ程追い詰められていたとは……。
 女性を欲望の対象としてしか見ていなかった頃には、自分も女性の胸の大きさに拘ってはいたが、今となっては正直ここまで気にする事もないだろうに、と言う気持ちの方が大きい横島である。

「どうして? あんなに横島に揉んでもらってるのに、どうして大きくならないの?」

 いや、むしろ、揉む事で脂肪分が燃焼されて、却って小さくなってるんじゃないか?という疑問は、円満な同棲生活の為に口には出さず、心のごみ箱に放りこんで削除を掛けておく横島。
 これでも少しは成長しているのだ。

 もはや言葉も無く、さめざめと泣くだけになってしまった恋人の為に、横島は以前から思い付いてはいたものの、実行するまでも無いと放っておいた策を提案する事にした。


「お前の悩みを解決する方法は有るぜ、ルシオラ。ちょっと卑怯くさいけどな?」

「え!? 何!? 横島、どうすれば良いの!?」

 突然元気になり、横島の胸倉を掴んで前後に激しく揺さぶりながら詰問するルシオラ。

「ちょっ、待っ、落ち着けってえの!」

 横島はルシオラの手を引き剥がし、落ち着かせる為にしばし間を置いた後、言葉を紡ぐ。

「疑問や質問は後で受け付ける。とりあえず、俺を信じて言う通りにしてくれ」

 その言葉に頷くルシオラに対し、さらに指示を続ける。

「まず上着を脱いで、ブラジャーも外すんだ。そうしたらリラックスして体を楽にしな」

 ルシオラが自分の指示に従ったのを見た後、両手に一個ずつ文珠を生成する。
 そして、文珠を発動させながら、両手でルシオラの胸を包み込んだ。

「痛っ!」

 直後、ルシオラは自分の胸に痛みとも快楽とも付かない感覚と、何かが引きずり出されるような悪寒を感じたが、横島の言葉を信じ目を閉じて必死に耐えていた。

「よし、終わったぜ。目を開けてみな、ルシオラ」

 どの位の時間が経ったのだろう、横島の言葉に従い目を開けたルシオラの視界に映ったのは――

 ついさっきまでは、かろうじてAカップか?という感じだったのに、軽くDカップに届く位の大きさに育った自分の胸であった。


「ど、ど、どうやったの?」

 動揺してどもりながらも疑問を投げ掛けるルシオラに、横島は首を竦めて答える。

「何、簡単な事さ。二つの文珠にそれぞれ『豊』『胸』と入れて発動させたんだ。
 実体を持っている普通の人間なら効果は一時的なものでしかないけど、前にお前が言ってたろ?
 『私たち魔物は幽体が皮を被っているようなものだ』って。
 それなら、現在の肉体の情報を取り込む事で、効果を永続させられると思うぞ」

「……どうして今まで、これをやってくれなかったの?」

「お前が胸が薄いのを気にしていたのには気付いてたけど、言っちゃ悪いが俺にはどうでも良い事だったんだ。
 俺がお前の事を好きだって言う気持ちの前には、胸の大きさは全然関係無かったからな?
 それにお前が生きかえったと知った時、自分自身に誓ったんだ。お前の望む事は出来得る限り何でも叶えてやろうって」

「それに成功するかどうか解らなかったし」という横島の呟きは、感極まったルシオラの耳には幸いな事に届かなかった。


「横島っ……!!」

 勢い良く恋人に抱き付き、顔中にキスの雨を降らせる少女。そこには先程までの憂いは欠片も見当たらない。

「ありがとう、本当にありがとう、横島! お礼に今夜はい――っぱいサービスしてあげるからね?」

 脱いでいた上着を着込み、用を成さなくなったブラジャーを手に持つと、ルシオラは軽い足取りで部屋を出ていった。
 恐らく夕食を作りにキッチンへ向かったのであろう。
 今夜の献立には精が付く物がこれでもか、と並ぶに違いない。

 そんな恋人を微笑みながら見送る横島の脳裏には、近い未来に訪れるであろう、勝ち誇る蛍の少女と悔しがる蝶の少女のやり取りが浮んでいた。







追記:
 月曜の朝、ごみ捨て場の脇で世間話に勤しんでいたオバタリアンズの視界に、ゾンビの様な重い足取りで職場に向かう恋人二人の姿が有ったそうな。
 どれだけ頑張ったんだ、君達?


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後書き:
 状況説明に多くの行数を取られた上に解り辛い……。
 話作りが上手い人のものを参考にしようとしたけれど、今の自分にはこれで精一杯です。
 単に文珠の『豊』『胸』のアイデアを使うだけだった筈なのに、こんなに無意味に長くなるんでしょうか?

 こういう短編の場合には、思いきってバッサリ切るのも手かな、と思わないでもなかったのですが。
 ついつい、余計な情報まで書いてしまっています。

 こうした方が良いよと言う忠告は、いつでも受け付けますので、よろしくお願いします。

 もしもこれが好評だったら、次はシロの話かな……。

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