ザ・グレート・展開予測ショー

悲劇に血塗られし魔王 25-A


投稿者名:DIVINITY
投稿日時:(03/11/12)


世界には様々な魔術書が存在する。
「蛆虫の泡沫」やら「黄金不文律」やら邪悪な魔術書は数え切れないほど存在するが中では邪悪と判別できないものもある。
持つだけで知識が流れ込んでくるという「賢樹は産声をあげて」はその代表例だ。
つまり結局は術者によってその善し悪しが決まるのだろうという話になるのだが、実はそうでもないので始末に悪い。
上位の魔術書になるとその本事体が意思を持ち、術者を操ることができるというのだ。
そんな危険なものがなぜ消されずに残っているのか。
それは一重にその中身の有用性だろう。
例え邪法のみがもっている本だとしても、よく研究すれば様々な解呪法を編み出せたり、邪法を良い意味で転用できたりもする。
まさに「光と影」の関係なのだ。
しかし、だからと野放しになっているという事は決してない。
様々な国、研究機関が厳重に管理していて、魔術書が外に出るような事はめったにない。
だから術者がもし魔術書を見たければそういう研究機関等に属さなくてはならなくなるわけだが、やはり中にはその事に不満を持つ者が現れたりする。
とはいえ、魔術書を見る事など上記の理由からほぼ不可能だ。
なら、という事で注目されるのが「写本」である。
写本。
名は体を表す、とはよく言ったものでその名の通り、オリジナルをコピーした本の事だ。
魔術書の写本は世の中に様々な形態をとって存在する。
小説、論文、日記、はては絵本になっていたりする。
さてその価値だが、やはり価値は本物よりかなり劣り、劣るが故に危険であった。
写本を使っての魔術は失敗して当たり前と言われるほどだ。
だが、そうと解っても写本が使われなくなるということはない。
成功した時の価値がそれ程にあるという事だ。
話は少し変わるが、写本にも勿論ランクというものがある。
上位にいけばいくほど、オリジナルに近くなる事を意味するのだが、一つ判定不能の本が存在した。
その本は魔術の行使法など一切載っていなかった。
しかも訳をすると、人によって意味が全く違うのだ。
ある人はそれをラブストーリーだと言い、ある人はそれをどこかの情景を描写した詩だと言う。
ついには誰も寄りつかなくなった作者不明のその本。
異名を「無面」
本当の名前は・・・・・・

「ウィニケト写本」







昨日の夜。
事務所で美神の雷が三回鳴った。
一回目はシロが夜遅くに帰ってきたときに。
二回目はそのシロの帰宅後にさも当然のようにタマモが帰ってきたときに。
三回目はその二人が余り反省していないことに切れて。
それは明け方まで続き、しまいには美神の声が掠れてしまいそこでやっとお開きとなった。
そして今日。
睡眠時間が著しく少ないが、だからと始業時間を遅らせてはいけない為、眠い目を擦りながら事務所の入り口の鍵を開けに行くとそこには既に依頼人さんがいた。



美神の前に一冊の本が置かれている。
美神はその何の装丁もされていない味気ないただ分厚いだけの本を繁々と見つめる。

「これがあの役立たずと言われているウィニケト写本ね〜」

この本のことは美神も知っていた。
といっても、どんな頭の良い人が訳そうと上手くいかなかったというくらいの事だが・・・・・・

「本当にこの本を手に入れようとして魔族が現れるの?」

美神は自分に依頼してきた女性に語りかける。
その女性は美神の知り合いだが、ここ何年か姿を見ていなかった為非常に懐かしい。

「間違いないのね〜。この本を管理していた場所の付近で最近魔族がうろちょろしているみたいなのね〜。」

・・・まあ、独特の喋り方で解ると思うがヒャクメである。
彼女は「ウィニケト写本」を魔族から守るよう美神に依頼してきたのだ。

「本をここに移動した事はきっと筒抜けなのね〜。きっと明日にはここに襲撃しにくると思うからよろしくなのね〜」

「全く、急な話よね」

「いつもの事なのね〜」

ヒャクメのにべにない物言いに美神は苦笑いを浮かべる。
GSは職業柄、危急に仕事が入る事など全然珍しくもなんともない。
それだけに美神は文句など言えるはずも無かった。

「その魔族が誰か解るでござるか?」

隣にいたシロが多少勢い込んでヒャクメに聞く。
仮面の魔族だという事を期待しての事だろう。

「解らないのね〜」

がっくりと傍目から解るほどにシロは落ち込む。
それを慰める横島はまだ出社していない為、美神がその役を担う。
慰めながら、ヒャクメに聞く。

「せめてどれくらいの強さなのかくらいは?」

「解らないから、ここに依頼しにきたのね〜」

「うぐっ・・・・」

相手の強さが解って、しかもそれが弱そうであれば美神になど頼まないと言われている様で美神は口を引きつらせる。
その横でタマモが興味深そうに本を見ている。
タマモは仮面の魔族の言っていた「行動」とはこの本を奪う事だと確信に近い予感をしていたのだ。
彼女はどんな内容か知る為にその本を読む事を美神とヒャクメに許可を求め始めた。

「ねえ、ちょっと読んでみても良い?」

「昔の文字だからきっと読めないわよ?」

「・・・・・」

(あっちゃ〜、そういえばそうだったわ・・・・)

簡単なミスをしてしまい、思わず呻いてしまう。
知らず知らず、かなり切羽詰っていたみたいだ。
自分に余裕がないことを感じる。
タマモは深呼吸をして気を一時的に落ち着け、それでも読みたいという己の欲求を冷静に認識すると改めて頼んだ。

「それでも良いから、読ませて」

「う〜ん、まあ別にいいんじゃないかしら。ヒャクメ、構わないわよね」

「別に構わないのね〜」

そういってヒャクメが問題となる本を渡してくれた。
タマモは礼を言ってそれを受け取ると早速本を開いた。

(・・・・えっ!?)

一瞬頭の中に何かの映像が浮き上がり、すぐにそれが消えた。
何だったんだ、と思いつつ本に注目すると、そこにはやはりというべきか、わけのわからない文字で埋め尽くされていた。
読む事はとても不可能。
次のページを開く。

(またっ!!)

再びタマモの頭の中に謎の映像が浮かび上がった。
何の映像かは、一瞬でよく解らない。
タマモは次から次へとページをめくる。
するとその映像は連続して映り、やがて一つの動画になった。



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