ザ・グレート・展開予測ショー

知ってるようで知らない世界―9―


投稿者名:誠
投稿日時:(03/11/11)



「くらえこの野郎!」

「お、おのれ〜!これでどうだ!横島ビーム!」

「くっ!やるな・・・。奥義、横島バズーカー!!!!」

―――バキッ―――

「ウキキキキッ!」

「くそ、勝てん!何度やっても勝てん・・・。」

わかる人にはわかると思うが・・・。

「もう一度だ老師!いや、猿!」

「ウッキィ!」

横島は猿神と戦っていた・・・ゲームで。

「横島さ〜ん、老師〜お食事ですよ〜。」

小竜姫はそう言って奥から二人を呼んだ。

「よし、じゃあ飯食いに行きましょうか!」

横島はさわやかな顔でゲームの電源を切った。

「キッ!ウキッウキキィーーー!!」

猿神がなにやら抗議しているように聞こえる・・・しかし、

「はぁ〜?聞こえん、聞こえんなぁ?ワタシ、サルゴワカリマセーン!」

「ウッキー!」

―――バリッ―――

「いってー!やったな!」

喧嘩をはじめる二人しかし、

「は、や、く来て下さい・・・。」

小竜姫の声にびびりけんかをやめる。前はこれで飯抜きになった。

「一時休戦だ!急ごう。」

「ウキッ!」

二人は食事の場へと向かった。どこでも食料を握るものは強い。





「それで横島さん、どうですか?」

小竜姫が猿神にご飯のおかわりをよそいながらたずねる。

「いや〜それがここに来て一週間たつのにまだ一勝も・・・。」

「だ・れ・がゲームの事を聞いているんですか!まったく、美神さんの言ってた通りですね。」

横島の言葉に小竜姫は大きくため息をつく。

「へ、美神さんが?なんて言ってたんですか?」

「いつも、わざとおちゃらけて困ると。人にわざと深入りさせないようにしている気がするといっていました。」

小竜姫は少し心配そうな顔で言った。

「そう・・・ですか・・・。」

「どうして・・・なんですか?」

「おれ、美神さんの所にある本読んで並行世界ってのがあることを知ったんです。
戸籍も無いおれはもしかしたらそっちから来たんじゃないかって思ったんです。
もしかしたら、おれには帰らないといけない所があるかもしれない。
帰ったらもうここの世界の人達のは会えないかもしれない・・・。
そう考えたらなんかみんなとあまり仲良くなりすぎると別れが辛くなるんじゃないかって思って・・・。」

横島が悲しそうな顔をする。

「横島さん・・・。」

小竜姫も横島の気持ちを知って少し悲しそうな顔をしたが横島を諭しはじめる。

「別れは確かに悲しいかもしれない、辛いかもしれないけど、楽しかった日々はきっとみんなの心にもあなた自身の心にも残るはずでしょう?
わたしもそうです。神として、人間の何倍もの時間を生きる私は今まで多くの人と出会い、別れてきました。
でも、出会った人との思い出を全てわたしは覚えています。
いつか別れるかもしれない・・・。でも、今は一緒にいるんです。
みんなと話し、笑い合いそして絆を作り、深める。
この後どうなるかわからないのなら今を考えて生きることが一番だと思います。あなたは今、この世界に存在するのだから・・・。」

そう言って小竜姫はニッコリと微笑んだ。
だまって小竜姫の言葉を聞いていた横島だったが、小竜姫の微笑を見て涙が出た。

「ありがとうございます。不安だったんです、自分の存在が。
でも、そんなんじゃ心配かけちゃいますよね。それに、わかりあえない方が後で後悔しますよね。」

そんな横島に小竜姫はやさしく言う。

「横島さんは自分より、みんなのことを考えているんですね。
そんなやさしい横島さんの事をみんながもっと知りたいと思っているはずです。
横島さんが心を開いてみんなと接すればみんな喜ぶと思いますよ?」

小竜姫はもう一度微笑んだ、それに横島も微笑み返す。
横島の微笑みは心の底からの微笑みだった。



「で、横島さん。修行の方はどうですか?」

小竜姫は少し照れている・・・ちょっと恥ずかしかったようだ赤い顔で角をかいている。
横島も少し赤くなっている。やっぱり泣いたのは恥ずかしかったらしい。

「多少武術と剣術の本を読んで思ったんですけど、やっぱりおれ昔になんかやってたと思うんです。
歩法もなんか覚えがあるし、剣術は・・・初めてのような気がしますけど。
体が覚えているっていうか、なんというかそんな感じなんで結構早く基礎は覚えれそうです。
後、剣術なんですけど、おれの霊波刀だったら突き技を強力にした方が実戦で使えると思うんですがどうですか?」
「ええ、そうですね。突きはもっとも早く相手まで攻撃が到達するし、突きが強力なら相手も簡単に懐に入れないのでいいと思います。」

「う〜ん、よし!じゃあ修行行ってきます。小竜姫様、本当にありがとうございました。」

「いえいえ、どういたしまして。激しいトレーニングをしすぎて心を乱してはだめですよ、空間が乱れますから。」

「はい、わかりました。」

横島が修行に行ったので、小竜姫は食事の片付けをはじめた。なぜかちょっと上機嫌だった。




「瞑想ってずっとやらされてるんっすけどなんか意味あるんですか?」

横島は目を閉じ、座禅を組んだ状態で小竜姫にたずねた。

「大丈夫です、これは周りの空気そして気の流れを体で感じて把握するためのトレーニングです。」

「む、むう・・・。奥が深いですね・・・。」

―――グニャ―――

この空間に入って20日、横島がいつも通り小竜姫の指導を受けて瞑想をしているといきなりこの空間が歪んだ。

「な、なに?まだこの空間が終わるわけが無いのに・・・。」

―――バシュッ―――

次の瞬間、横島がいる場所は約二ヶ月前に椅子に座ったあの部屋だった。

「な、なにが・・・。まだ一ヶ月も経ってないのに・・・。老師、どういうことでしょうか?」

「うむ、この小僧過去に同じような修行をしたことがあるようじゃ・・・。
じゃが、これほどの事をできる者ともなれば少ないじゃろう・・・。」

「ってことはこの修行は意味無かったんですか?」

横島が猿神にたずねる。

「そうは言っておらん、一度同じようなことをしていたようじゃから多少加速
時間が短くなっただけじゃ・・・。
お主にはすさまじい潜在能力が眠っておる。引き出し、使いこなすのじゃ。」

そこまで言うと猿神は真顔になって言う。

「小僧、おぬしの魂は一時的に出力が増しておる。わしとの戦いで自分の潜在能力を引き出すが良い。
だがその前に一つ聞いておかねばならぬ事がある。お主記憶がないそうだが、何者かが接触してきたことはなかったか?」

横島は少し考えて答える。

「意思の使者と名乗る者がおれの前に現れました・・・。
神であって魔でもあるものを倒せ。その時おまえはすべてを知る権利を手に入れる・・・。
そいつはそう言って消えました、真っ黒な影のような・・・たぶん、男でした。」

「意思の・・・使者・・・。そして、神であって魔でもあるもの・・・か。」

そう言って、猿神は眉間にしわを寄せてからついてこい、と横島に言い部屋から出て行った。

「横島さん、頑張って下さいね!」

口を挟めなかった小竜姫だがここで横島に声をかける。

「はい、ありがとうございます。じゃあ、行って来ます!」

そう言うと横島は猿神が待っているであろう修行場へ向かった。



「小僧・・・今はお主の潜在能力を最大限に引き出せる状態じゃ。
ここで潜在能力を引き出せなければお主は死ぬ。さあ、行くぞお主の力を見せてみよ!」

そう言うと猿神は巨大な真っ黒の巨猿へと変わり、手に持つ如意棒で殴りかかってきた。

「クッ!」

紙一重でかわすが、一撃をくらった地面がえぐれ石が飛び散る。

(なんて破壊力だよ・・・。こんなもんくらったら・・・。)

―――ヴォンッ―――

飛び散った石の弾幕の向こうから風切り音とともに強烈なスピードで棍が迫ってきた。
横島はそれを右手に出した栄光の手で止めようとしたが耐え切れず吹っ飛んだ。

「ガッ!く、くそ・・・なんて破壊力だ・・・・!文珠!」

横島は右手に文珠を作り、念をこめる刻まれた文字は『守』。
横島は文珠を発動させ、結界を作った・・・が。
―――バキッ―――
激しい衝撃とともに結界は砕け散った。同時に横島の胸に激しい激痛が走る。

(クッ、ダメか・・・。なんて破壊力だよ・・・このままおれは死ぬのか?
おれの・・・潜在能力を引き出す?おれの中にそんなもん本当にあるんか?)

横島の意識が暗い、しかし心地よい所へ落ちていく・・・その時、
脳裏を走馬灯のように何かが浮かぶ、
目覚めて記憶の無い自分にやさしくしてくれたみんな。
加速空間で横島の苦しみを知り、やさしく諭してくれた小竜姫。
そして、ナイトメアにとりつかれていた時、心の奥深くでなにかを語りかけていてくれた懐かしく、温かい声。

『わたしの夢・・・きっとかなえてね・・・・・。』



「そうだ!おれはこんな所で死ねない!やさしくしてくれたみんなのためにも。
忘れてしまった誰かのためにも、俺自身のためにも・・・。
まだおれは自分が何者かも分かっちゃいないんだ。おれは・・・死ぬわけにはいかない!」

そう叫ぶと横島は猿神の方を向き、左半身を前に向けて右手を引き、栄光の手にありったけの霊力を注ぎ込む。
そして右手を引いたまま、猿神の方へ走り始める。
それを見た猿神は棍を振った。
横島はその棍に向けて左手に持った文珠を発動した。文珠の文字は『流』。
棍は文珠の効果を受けて横島の頭上をそれていった。
棍を振るった猿神の右脇腹が空いている・・・好機!これが多分最初で最後の好機!

「うおーーーーーー!!」

横島は叫び声をあげて、猿神の空いている脇腹を栄光の手で突いた。
しかし、振り切った棍を素早く返した猿神は棍で突きを受け止める・・・だが

―――ドッゴーン!―――

爆音とともに棍が弾かれた。猿神は驚愕の表情で横島の栄光の手を見る。
そこには、漆黒の栄光の手があった・・・肘から先を機械的フォルムで覆い、手の先からは黒い霊波刀が伸びている。
そして、赤い玉がついていた部分にはまるで文珠のようなものがついている。
浮かび上がっていた文字は『爆』。だが役目を終えたのかその文字は消えていくところだった。

「小僧・・・もういいぞ。お主は自分の潜在能力を見事引き出した。よくやったのぉ。」
猿神はいつも通りの大きさに戻り、言った。


猿神の声を聞きながら横島は意識を手放した・・・。


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