ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―19―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/11/10)

GS試験の一次試験を通り抜けた128名は、いよいよ本番である二次試験へと進む。
二次試験はいわゆる実技試験だ。
この試験ではGSとしてもっとも重要な能力を試される。
それは戦闘能力。
極一部の特殊なGSを除けば、この能力が低いGSなど話にならない。ならばこその実技試験だ。
早い話が『受験生同士の試合』を行うのである。

「GS資格取得試験、二次試験会場……ここね…」

午前中の一次試験を通り抜けてきた128名が、午後の第一試合で半分の64名になる。
本日はそこまでで、続きは明日だ。
なお、二次試験には観戦客が多数訪れて来る。入場は無料だし、霊能に無関係な一般人の観戦も自由だ。

「で、どうするでちゅか?」

とはいえ、訪れるのはやはりこの業界の関係者がほとんど。
優秀な人材の発掘とか、将来ライバルになるだろう受験生の観察とか…

「そうそう。ここでいったい何しようってのさ?」

だが、中にはそれ以外の目的でこの試験会場を訪れる者もいる。

「もう〜…ちゃんと昨日話したでしょう?」

例えば、今この会場に到着した3人組は、決して上で述べた理由でここを訪れた訳ではない。
それは3人の女性だった。
それぞれが思い思いにラフな私服を着ている。
ただ…3人とも何故か、帽子を被りサングラスをしているのがちょっと滑稽かもしれない。もしくは怪しいとも言う。

「ここには、色々と希少で貴重なオカルトアイテムが集まるの。今日はそれを観に来たのよ。」
「ふ〜ん……で、そいつをいただこうってのかい?」

一番背の高い女性が、黒髪の女性に問いかけた。

「いいえ、今回は見物だけよ。」
「なんででちゅか?」

今度は、一番背の低い女性……いや、この娘だけは女の子と言った方が正解だろうか?他の2人よりも随分と幼いと思われる少女が問う。

「だって、予告状出してないじゃない?」
「も〜…相変わらず真面目でちゅね〜………そんなの気にしないで、サクっと貰っちゃえばいいじゃないでちゅか?」

少女は両手の手の平を上に向け、肩を竦めてみせる。

「あのねぇ…ちゃんと覚えてるの?怪盗をしようって言い出したのはあなたなのよ?」
「それくらい覚えてるでちゅよ。昔から、美人三姉妹の職業は怪盗って決まってるでちゅ!」

右手の人差し指をピンと立てて、エッヘンと力説する少女に、背の高い女性と黒髪の女性は額を押さえて眉間にしわを寄せた。

「あ〜………突っ込みたい所は色々とあるんだけど、とりあえず…美人三姉妹だなんて自分で言うのはどうかと思うわよ…」

そのままジットリとした汗を額に浮かべ、言葉を搾り出す。
背の高い赤茶色の髪の女性も、黒髪の女性と同じような表情を浮かべながらウンウンと頷いていた。

「ん〜?ああ、確かにそうでちゅね…それに………………」

―― ジィーーーッ ――

小さな女の子…金色の髪の少女が黒髪の女性をジーッと観察する。

「な、なによ?」

黒髪の女性は、その視線に嫌なものを感じて身を引く。ジッと見られる事は勿論嫌なものなのだが、特に今回は、その視線がある箇所に集中している気がしたからだ。
なんとなく、両腕で自分の身体を抱きしめ隠すような格好を取る。

「長女役するには…いくらなんでも足りな過ぎでちゅよね〜〜…」
「ぷっ!」

金髪の少女は憐れみを込めた視線で呟いた。赤髪の女性がそれを聞いて思わず吹き出す。
金髪少女の視線は、黒髪の少女の腕で隠された部分にあった。
つまり何が足りないのかは………ねぇ?
少女は眼を閉じて軽く頭を振る。口からはハァとため息が漏れていた。
背の高い赤茶色の髪の女性も、金髪の少女と同じような表情を浮かべながらウンウンと頷く。

―― ゴンッ!ゴンッ! ――

「ダッ!?」
「イヅッ?!」

電光石火。

「殴るわよ…?」
「殴ってから………な、なんでも無いでちゅ!」
「なんでアタシまで……あ、べ、別に!」

ニッコリと笑って小首を傾げる黒髪の少女に、赤髪の女性と金髪の少女が頭を押さえつつ文句を述べようとして………途中でそれを止める。

―― ニコニコ♪ ――

何故止めたのかは各自で察して欲しい。

「さ、バカな事言ってないではやく会場に入るわよ?」
「うん…」
「はいでちゅ…」

3人は揃って歩き出し、会場である東都大学内の武道会館へと向かった。

…………………………










「まもなく本年度ゴーストスイーパー資格取得試験第一試合が行われようとしております。実況は私、ゴーストスイーパー協会記録部広報課の枚方 亮(ひらかた りょう)。解説は厄…」
「創業40年!!親切ていねい、魔法のアイテムならなんでもそろう厄珍堂!!信頼のブランド厄珍堂店主、厄珍(やくちん)がお送りするあるよっ!!」

実況席で、小柄な男が吼える!

「いや、あのテレビじゃないんです。単なる記録用のビデオ…」
「厄珍厄珍やくちーんどおおー。魔法のことなら厄珍堂―。」

実況の方の言う事などお構いなしに吼える吼える!!

「おっさん!」
「あいててよかった厄ー珍ー。」

―― ビーーーーーーッ! ――

「時間です!選手達が入場してきました。」

会場に鳴り響く、試験開始を伝えるブザー。
ブザーが止んだ時…小柄な男こと厄珍堂店主、厄珍の吼える声は何故か聞こえなくなっていた。

…………………………










『どうやら組み合わせが決まったようです。各選手がそれぞれの結界に向かいます』

組み合わせも決まり、選手達が一斉に移動を始めた。

「………8番コートか……」

黒い袈裟を身にまとい、手に数珠を持った坊主がコートの脇を歩いていく。
赤い長髪とサングラスが、なかなかに異様な坊主だった。

「………ふっ…」

なにやらデーンと落ち着き払い、静かに呟く男。とてもGS試験を受けに来た候補生とは思えないほどの貫禄を感じる。
8番コートに着くと、サングラスをクイッと指で持ち上げて反対側のコーナーに眼を向けた。

「まさかとは思うが………それがしの相手は…」

頭の中に、とある老人の姿が思い浮かぶ。性格も行動も、ついでに年齢も常識はずれにぶっ飛んだ老人の姿だった。
変な因縁でも働いて、あれと当たったら疲れるな……坊主はそんな風に考えて対戦相手のほうに眼を向ける。
果たしてそこにいた者とは……

『ではまず注目の一戦。ドクター=カオスの試合を見てみましょう!』

…………………………










「娘、おぬしか!」
「ド、ドクター=カオスっ!!!」

3番コートでは、老人と少女がそれぞれのコーナーから自分の対戦相手である相手を見つめていた。

『ありゃ!?あの娘……ヘルシングちゃんじゃないあるか?』
『ヘルシングちゃんと言いますと…あのバンパイアハンター、ヘルシング教授の!?』

実況席から驚きの声があがる。

『孫ある!』
『いきなり燃える展開です。運命の女神は何を思ってこの対戦を仕組んだのでしょう!!』

その解説につられて、会場の視線の大部分が3番コートに集まってきた。
とはいえ、選手には観客の視線など関係ない。
試合を前にしてカオスとアンは言葉を交わす。

「まさか…いきなり貴方と当たるとは思っても見ませんでした。」
「ラプラスのダイスで決められた組み合わせじゃからな……これも運命じゃろうの。」

かたや緊張気味に話すアンと、微塵の動揺も見せないカオス。
流石にこのあたりは経験の差がモノを言って来るのだろうか…

『ただいま、手元に資料が届きました。ドクター=カオスと言えば、この業界にいる方々なら1度は耳にした事がおありでは無いでしょうか?ご存知ヨーロッパの魔王!不死身の錬金術師!驚愕すべきはその年齢!なんと1061歳は、ダントツの最年長受験者です。』

実況席の説明に、会場がどよめいた。

『一方の対戦相手、アン=ヘルシング選手はこちらも驚き!若干14歳の可愛らしいお嬢さんであります今大会の最年少受験者!奇しくも第一回戦から、今大会の最年長、最年少がぶつかり合う展開となりました。2人の歳の差、なんと1047歳!』

―― オオオオォォッ ――

会場のどよめきが更に大きなものとなる。

『しかもこのヘルシング選手、ただの娘さんではありません。かの吸血鬼ハンター、ヴァン=ヘルシング卿を祖父に持つという正統派のバンパイアハンターであります。これは、いきなりの好試合が予想されます!』
『正統派ね………ま、面白い試合になるのは間違いないある。』

この実況放送が決め手となり、今や会場の視線の殆どがこの3番コートに集まっていた。

「貴方が相手なら、遠慮はしません…全力で行きます!」
「面白い……そう来なくてはな。ワシも…本気で相手をさせてもらおう。」

試合は、開始前から熱く燃え上がる。

「審判!」
「あー審判!」
「はい。」

が、その前に…アンとカオスは同時に審判に近寄った。

「道具は何でもいーんじゃな?」
「確か、道具は何を使っても良いのでしたね?」
「2つまでです。2つまでなら何でもアリです。」

年々増えていく除霊道具の数と種類にあわせて、複数の道具を使用する除霊スタイルも珍しくはなくなってきた。
それらの道具を積極的に使用するモノ達も増え始め、GS試験では一昨年から使用できる道具を、それまでの1つまでから2つに変更している。

「何でもといったら…」
「…なんでもアリじゃな!?」
「な、何を使うんですか!?」

2人の表情に背筋が寒くなる審判。かなり、嫌な予感がしていた。

「私は、まずこの対吸血鬼用ジェットスピア『ラミフ』と…」

アンが持ち出した武器は、14歳の少女が持つにはかなりゴッツイ…彼女の身長よりも長いだろう突撃槍。

「いくぞ、マリア!!」
「イエス・ドクター=カオス!!」

対するカオスが『道具』として選んだものは、彼の製作した人造人間マリアだった。
会場中から、そんなんアリか?!という声が聞こえてくる。

「そして…来いっ!」
「さらに…来いっ!」

だが、会場の人間の突っ込みは、まだ早かった!

「ゴリアテッ!!」
「テレサッ!!」

―― ドゴーーン!ドゴーーン! ――

何故か壁をブチ破って登場するイージススーツゴリアテ。
何故か天井をブチ抜いて登場する、もう1体のカオス製人造人間テレサ。

「吸血鬼は皆殺しだーーーーぁっっ!!!」
「待ちくたびれたわ、カオス。」

この試合の行方は、混迷の一途を辿る。



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