ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その41)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/10/24)

パンパンパン!

ザシュッ!ドシュ・・・

「はぁはぁ・・・」

「こっち!早く!」

AM3:50

N山では少女達の声と銃声と斬撃の音がひっきりなしにこだましていた。
というのも・・・

「ったく!霊山だからって悪霊いすぎでしょぉ〜〜!!」

ひのめの叫びどおり三人は大量の悪霊、妖怪に囲まれており、
今はその血路を開いている最中だった。
しかし、量は多しM山の霊達よりかは強いが三人から見れば決して苦労するレベルではなかった。

「ふん・・・、無能な者ほど群れたがりますからね・・・」

そんな烏合の衆に嘲笑を浮かべると右手に神銃『ラファエル』を構えながら左手をジャージの上着右胸に手を入れる。
ひのめが一体何をしているんだろうという視線を京華に向けた直後・・・

パラララララッ!!

まるでドラムロールのような音が鳴り響くと周囲の悪霊が次々と霧散していく。
そう、京華の左手に握られているモノ・・・それはベレッタM92FSを改造した霊銃だった。

「ふぅ・・・わたくしの愛銃『ラビアンローズ』に撃ちぬけぬものなどありましょうか・・・」

「ネーミングはともかく凄い威力ねぇ」

二丁拳銃で除霊を完遂していく京華を見ながら『銃刀法とか大丈夫なんだろうか』と心で呟くひのめ。
そしてその親友はと言うと・・・


『グギャ・・・イタイ・・・カラダガイタイヨォ・・・』

『シンデナイ・・・マダシンデ・・・』

『タベナイデ・・・ワタシマダァ・・・』


宙をグルグルと漂いながら幸恵を取り囲んでいく悪霊達。
幸恵はそんな残思の魂達に少しだけ哀れみの眼差しを向けるのだった。

「そうだよね・・・死にたくないよね・・・
 誰だって生きていたいよね・・・生き返って好きな人に会いたいよね・・・」

少しだけ俯いたまま左手で左腰の鞘を押さえ右手を柄に添える。

「でもね・・・」

スラッ・・・

月夜に照らされた刀身は妖しい光を放つ。

「お前達をこのままにしておくとまた人を殺す・・・だから・・・
 ・・・・ここで苦しみを終わらせてやる・・・」

『ギアァァァっ!!』
『クルシィィ!!』
『オマエモシンデクレェェっ!!』

死者の魂達はその痛み苦しみを理解し、分かち合い、そこに生者を引きずり込もうと殺到する。
いよいよその闇の牙が幸恵に突き刺さると思われた瞬間・・・・



霊剣術・・・斬の秘剣────『百空』────




ズバズババババババババババババっ!!!!


目にも止まらぬ速さとはこのことを言うのだろう。
幸恵の手に握られた霊刀・介錯丸は主の技に応えるように残像を作り上げ瞬時に悪霊達を斬り裂いていく。

チンッ・・・。

「あなた達の来世が幸せでありますように・・・」

介錯丸を鞘に収め呟く幸恵。
そのまわりを天に昇っていく魂のカスが桜の花びらのように囲うのだった、
まるで感謝の印のように・・・。



「ねぇ・・・心眼・・・」

『ん?』

「私って主人公だよね!?ねぇ!?」

『・・・・・・・・・・・・・』

「ライバルは二丁拳銃で親友が凄い剣術使って・・・私も!ほら、ここらでいいとこ見せなきゃ!」

『ヨソはヨソ、ウチはウチだわさ』

「そんな!『子供が他人のおもちゃを見て欲しがったときのあしらいかた』しないでよ!
 私も発火能力でN山を丸焼きしちゃうくらいの活躍をぉ!」

『んなこと出来るか!?』

心眼はひのめのダダに「あ〜うるさいぁ」と思いつつも確かに少し憐れだと思い打開策を提示する。

『ふぅ、実はそんなこともあろうかとあんた用の必殺技を用意しといたわさ』

「本当に!?さすが心眼さん、サイコー!」

目をキラキラさせながら調子のこと言うマスターにやれやれと思いつつも、
一つ間をタメて心眼は言った。

『まずは・・・』

「うんうん!」




『ひのめパンチ、霊力を込めた拳を敵に打ち込む技。ひのめキック、霊力を込めた蹴りを敵に放つ技。
 ひのめチャップ、霊力を込めた(以下略)』

「もういい・・・」

『あれ?まだひのめヘッドバッドとかあるのに』

「もういいって言ってんでしょーー!」

愛用リストバンドに泣き叫ぶひのめ。
その後幸恵に手を引っ張られ戦場を離脱しながら

『ちくしょーちくしょー』

と呟いていたのは内緒。









ブオオオオオォォォォォ!!!


文字通り獣しか通れぬような獣道を疾走する一台のバイク。
もちろんそんな所を走れば無傷ですむわけがない、
低い枝が頬をあたれば頬を裂き、草が擦れれば一文字の傷が出来、弾かれた小石が顔に当たる。
それでも・・・それでも彼らは向かう、ひのめ達のもとへ。

「いたただぁ!」

「さっきからうるさいわよ!」

「だって、だって・・・お前はヘルメットしてるからいいが、俺は小枝があたりまくるんだぞ!」

「舐めときゃ治るわよ!」

(ひ、ひでぇ・・・)

シクシクと心の中で泣いてみるもののそんなことに同情してくれる妻じゃないよなぁと思う横島だった。
そして、令子は右ハンドルと左ハンドルの真ん中にあるディスプレイのいくつかの光点を緊張した面持ちで見つめる。
もし、自分の推測が正しいなら・・

「ねぇ・・・このN山で何が起こってると思う?・・・この結界を張っているのは?」

令子はまず自分の推理を頭の中でまとめながらバックシートに座っている夫に尋ねてみる。
そして、横島の意見は・・・

「やっぱ・・・あいつだと思うけどな・・・。この結界からわずかに感じる妖気・・・まぁ安直に考えるのはマズいかもしれんが」

「いいえ、私も同意見よ・・・・。でも、どうして・・・確かに12年前に死んだはずなのに」

「考えても分からんし、もしかしたら違うかもしれん。とにかく・・・急ごうぜ!」

「ええ!」

強い瞳でグリップを握る令子。
そうだ・・・迷っていても仕方がない、今は進もう・・・
こんなときその存在を頼もしく思えるパトーナーが近くにいてくれるというのは嬉しいものだ。
夫に気付かれないようクスクスと笑いをこらえる令子だった。

(このまま真っ直ぐ突っ切れば近道ね!)


グオンっ!!

令子の意志に応えるようにバイクのエンジンが唸る。

「よし!森林コース終わりね!」

目の前が開け、走りやすい道に出た・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、思った瞬間。

「へ?」

「あ・・・」

いきなり二人に訪れる浮遊感。
なぜなら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・崖を跳んでいたから。

「う、うああああああああぁぁっぁぁあああぁぁっ!!」

残念ながら向こう岸までは届きそうにもない。
その事実に悲鳴をあげる横島。

「あなた!つかまって!くっ!魔法の手(マジックハンド)!」

「どわぁ!!」

間一髪令子のマジックハンドが向こう岸の大木に絡まりバイクとの落下を間逃れた二人。
その3秒後にドカーンという音と共に眼下で赤い炎が上がる。
それを見て・・・

「ふぅ、危なかったわねぇ・・・」

「ひのめちゃん達を救助する前にこっちがお陀仏するとこだったわい!・・・でも、バイクが・・・」

「ああ、気にしない気にしない♪・・・・・・・・・・・あれ、エミのバイクだから♪」

「うぉい!!」


全てが終わったあとの令子とエミのやり取りを想像すると気が滅入る横島だった。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ドカーン。


横島達とはかなり離れた位置にいるひのめ達にもバイクの爆発音が聞こえ、炎上し夜空を焦がす赤い光が見えた。

「救助かなぁ?」

「には見えませんけどね・・・」

悪霊達を振り払った幸恵と京華がそれに注目してみるがあくまで推測で何者かは断定できない。
それでも救助であることを期待する二人。

「ひーちゃんはどう思う?」

ひのめの意見を聞こう、そう思い幸恵が話しかけるが・・・

「ある晴れた〜昼さがり〜・・・かわいい子牛 売られて行くよ〜・・・ドナ ドナ ド〜ナ ド〜ナ・・・」

『ひのめ!そんなに活躍出来ないからって『膝を抱えてドナドナ』を謳うんじゃない!』


すっかり出番を奪われ落ち込むひのめに『ハハっ』と苦笑いしか出来ない幸恵だった。
そして、幸恵と心眼がひのめを励ましてる間に京華は天を覆う結界に目を見張る。

(・・・この結界・・・、三世院式に近いものがありますわね。
 でも構成成分が妖力・・・ということは人間とは考えにくい・・・)

結界術師の名家としてこの結界の弱点、構成を暴こうとするもののそれには少しばかり時間と道具が足りないようだ。
それでも大体のことが分かってしまうのはさすが三世院家の長というところだろう。

「さ、そろそろ行きますわよ・・・」

「・・・そりゃ、さっちゃんは胸大きいし、剣使えるし・・・ブツブツ」

「美神さんいい加減にしないさい、あなたがわたくしの引き立てた役なんてことは生まれたときから決まってますのよ」

「何だと!コラァ!」

京華の一言に一気に怒りの沸点まで到達するひのめ。
普段は困る京華の一言も今回ばかりは役に立ったなぁと心で思う幸恵と心眼であった。
そして雲に隠れていた満月が彼女らを照らし明るい道を作ったと思った・・・・・・・・瞬間。




「大体あんたはいつも・・・・・。・・・・・!!!!?」


ズンッ!!!!




いきなりひのめ、幸恵、京華に強烈な霊的プレッシャーが圧し掛かる。
重力がいきなり数倍になったような感覚、息苦しさが襲いまるで吹雪の中に出されたような寒さを感じる。
誰が・・・誰がこんなプレッシャーをかけているんだ!
そう思い周囲を見渡す三人・・・・・・・すると・・・


メキ・・・メキメキメキ・・・ズズン。

5mほど離れた暗闇の中で木がへし折られて地に倒れる音が聞こえる。
やがてその音は2回、3回と回数を重ねるごとに近づいてくる。
もはや、間違いない・・・その音を奏でる者こそこのプレッシャーの持ち主だと。

(・・・・・この妖気・・・このプレッシャー・・・間違いない・・・)

ひのめは押し潰されそうな感覚・・・そして・・・
ズキズキと疼く背中の傷を感じながらギュっと両拳を握る。

(だって・・・・私は・・・12年前)








ズズン・・・。
メキメキメキメキ・・・ドガァァ!!


『グルルルルルルゥゥゥ────っ!』














────────────コイツに・・・ケルベロスに殺されかけたのだから・・・



暗黒の闇の中・・・現れたのは・・・・

首が一つしかない二足歩行している冥府の番犬だった────

                                       その42に続く

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa