ザ・グレート・展開予測ショー

♯GS美神 告白大作戦!『掌の中のtreasure』


投稿者名:ダテ・ザ・キラー
投稿日時:(03/10/24)

「ほほう。バレンタインかれこれ四回」
 おっ立てた金髪を揺らして、一文字が神妙に頷いた。
 隣の弓も思案顔。声を潜めて話し合う。
「私が思うところ、それはもう転換期に差しかかっていますわね」
「同感。……まー、あたしらってそーゆう経験がないから全部推測だけど」
「そうですか……」
 などというやりとりが、学校であったのである。

 そんな話を、当人のキヌから聞かされて、無表情に座っているタマモ。
 彼女達が実体験がないように、タマモにはそういった知識すらないのである。
 これでなにがしかのリアクションを期待するのは酷というものだ。
「それで、なに?」
 案の定、タマモはあっけらかんと尋ねた。
「うー、だから、こ、告白を……しょぅ...」
「え?」
「えっと、横島さんに告白がしたいなあ、と……」
「それをあたしに告白してるのはギャグ?」
 全く面白くなかったが、他に解釈のしようもなかったので、真顔で問い返す。
「結論を急がないでよお」
「だって、もたつき過ぎ」
 まるで日本語を忘れてしまったかのように、コミュニケーションが遅々と進まない。
「あの、二人が言うには、私はきっと自力じゃ告白できないだろうから……」
「……ああ。幻術ぶち込んで操ってくれっていうことなのね」
 手近なクッションに顔を埋めながら、首肯する仕種。
 タマモはしばし黙考する。キヌには日頃世話になって、感謝の気持ちがなくもない。
 本人が希望するならそのぐらい大した労力ではないし、肉体同様しばらく
使っていないと術もなまって精度が落ちてしまう。断る理由はないだろう。
 だがしかし、彼女の悪戯心というか、多少の好奇心が首をもたげてきていた。
 キヌがここまで取り乱すイベントに対し、ただの裏方ではつまらないというものだ。
「告白すると、なにが変わるの?」
 なんでもないことを、タマモは尋ねた。

 一方その頃、横島の方でも奇しくも似たような話題になっていた。
「俺の誘いに乗ってくれる可愛い娘はどこぞにおらんもんかなー……」
「お前はバカだ。バカ」
 疲れた声で応じたのは、横島の永遠のライバルその一であるところの伊達雪之丞。
「おキヌにコクれ。二つ返事でどこまでもついてくるぞ。お前にだったらな」
「ほんっとうにどこまででもって言い切れるか? お前カネ賭けるか?」
「言い切れるさ。ただし」
 このタイミングで雪之丞は横島を正面から睨み返す。
「お前に迷いがなければ、だけどよ」
「う゛……」
「あんな毒気無いお天道スマイル食らったら、たまらねーだろ。俺ァ苦手だね」
「そーだよなー……ある意味絶対安全だよな。夜道歩いてても襲えないって」
「お前、あんな女ムリヤリ押し倒してみろよ。テメーの方がトラウマになんぞ」
 平然と犯罪の香りがする会話を展開するロクデナシ二名。
「逆に言うと、お前みてェなケダモノを矯正するのにうってつけだと思う」
「やめろよ。俺は早く人生の春を経験しときたいんだ。勝ちたいんや! だ」
「だよな」
 あっさり認め、小柄な肩を竦めると軽薄な笑みを作った。
「まー、しかしおさんどんしてくれてるし現時点で結構距離無いし
正式に交際する事になったら、他にするべき事ってねーんじゃねェの?」
「そうか? そうかもな……フ……フフフフフ……」
 横島忠夫、スタンバイOKの図であった。

 場面は戻ってキヌとタマモ。
「へ? それは、お付き合いが始まったら、二人でおでかけしたりとか……」
「この前美神さんのお使いに二人で行ってなかった?」
「あ、そっか。じゃ……お弁当作ってあげたりとか」
「いっつも食わせてるじゃない」
「うーん……二人でお買い物に行ったり」
「スーパーの帰りに会ったら荷物持ってくれるんでしょ」
「他の女の人をナンパしたら、はっきり怒ります!」
「おキヌちゃんが? 本気で? 今までみたいにすねるだけじゃなく?」
「……」
 どうやら、もう思いつかないらしい。
「ひょっとして、なにも……変わらないのかな」
 そう言って胡乱な眼差しを送ってくるキヌを見て、タマモは
(おー。うろたえてるうろたえてる)
 呑気に観察していた。
「付き合っても今と変わらないってそんなにショックな事かな?」
 不思議そうな表情で、正体不明の焦りを抱くキヌを見返すタマモ。
「それってつまり、二人はもう付き合ってるってことと違うの?」
 ひどくあっさり、そう結論付けた。
「……あれ?」
 かなり間違ってるような気がしないでもないのだが、不思議にも反論の余地が無い。
 少なくとも、キヌ本人にはまったく悩む原因が見つからなかった。
「バカバカし。あたしもう寝よ」
 次の日の学校で、キヌは弓と一文字に散々バカ扱いされるのだが、二人は結局最後まで
彼女の前で「付き合うとなにが変わるのか」の問いに明確に答えることはなかった。

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