ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その40(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/10/18)







AM3:05 M山本部







「な、なんやて!!?」

令子の説明でまだ騒然としている本部に鬼道の驚きの声が走る。
生徒達に渡した携帯連絡装置・銀の腕輪から送られる音声に本部が再びざわつきはじめた。

『だ、だから!私達の目の前で3人が消えたんです! 
 橋が崩れて川に落ちたと思った瞬間まるで神隠しであったようにパッって!!』

その生徒はパニくっているのか話の要領がなかなか掴めない、
落ち着かせもう少し詳しい情報を引き出そうとしたとき・・・

「鬼道先生!見てください!さっきの美神さんの話しと今の生徒達がいる場所の霊的歪みの数値を!」

同僚の教師から言われスクリーンとパソコンのディスプレイに映る情報を比べてみる。
間違いない・・・いや、もうこれしか考えられなかった。

「あかん・・・こりゃ空間の歪みに引き込まれたみたいや・・・」

本当は声をあらげて言いたかった。
しかしここで自分が冷静さを失っては仕方がないと心を落ち着かせる。

「で、転送先の割り出しは!?」

「待って下さい!霊的磁場が乱れてまだしばらく・・・」

「くっ・・・橘!その消えたメンバーの名前は!?」

鬼道は対処法を本部のスタッフに指示するのと同時に連絡してきた生徒・・・橘かすみに現場の状況を尋ねてみる。

『え、と!江藤幸恵、三世院京華、美神ひのめの3名です!』

スピーカーから名を聞いた鬼道がチラっとパソコンを操作する教員と目を合わせる。
その教員はコクンと頷きカタカタとキーボードを素早く打つと様々なデータがディスプレイに流れる。
そこには確かに名簿番号4番『江藤幸恵』、名簿番号10番『三世院 京華』、名簿番号23番『美神 ひのめ』の
反応がなく、ただ黒く名前が書かれているだけだった。


「・・・・・よし、分かった。あとは先生達が対処するからお前らはこっちに戻ってくるんや。
 こっちで見る限りその周囲の除霊はほぼノルマを達成しとる・・・よくやったな」

『そ、そんな!でも!』

「アホゥ!お前らがそこにいても出来ることあらへん!
 二次遭難にでもなったらどうすんや!!」

『・・・・・・・・・・』

「安心せい、先生達が必ず三世院ら見つけるで」

『・・・・・・はい』

「よし」

プツっ。

通信を一時そこで切ると今度はスタッフ全員に指示を出す。

「取り合えず空間の歪みに近い班は戻るように指示を出して下さい!
 それから、除霊がほぼ終了している区域の生徒も!
 主結界は朝まで作用しませんけど副結界の発動なら30分でいけるはずです!
 まだ除霊がまごついてる班には先生方みんなでフォローをお願いします!
 インストラクターの横島はん達は・・・・・・・・・・あれ?」


鬼道の指示の元動き出す本部の中に横島夫妻、エミとピートの姿は既になかった。


「え〜と〜〜〜〜、令子ちゃん達なら〜〜〜さっき凄い険相で〜〜外に出ていっちゃったけどぉ〜〜〜」

「ほうか・・・さすがに早いな。・・・・・・・・・・って冥・・・じゃない!校長は何そんなに悠長に!一大事なんやでぇ!?」

「ふえぇぇえぇ、マーくん怒っちゃやだぁ」

少し怒鳴っただけで泣きそうになる冥子にあうあうと慌てる鬼道。
娘の冥菜にアジラとクビラを継承させてなければこの場で暴走してたろう。
というのも、

『ウチはまだ全部を継承出来るほどの力もあらへんし、
 母ちゃんみたいな才能もない、十二神将は時間をかけて少しずつ使役していくわ』

と。
とても小学生とは思えぬまともな意見のため少しずつ娘に継承されているため、年々冥子の暴走率は下がっていた。
もちろん式神を少しずつ継承するというのにも問題はあるのだが今回は取りあえずそれは置いといて。

「じゃあワイは生徒のフォローに行くからここの指揮頼むで!?」

「え〜〜〜〜、指揮ってどうすれば〜〜〜〜〜」

「ここに座っとるだけでええ!んじゃ!」

「あ〜〜〜〜〜〜〜、マーく〜〜〜〜ん」

去っていく夫の背中を見つめつつキョロキョロと周りを見渡す。
普段からマイペースな冥子にとってこの状況はみんが高速に動いているようにしか見えない。
そして、自分に出来ることはなさそうだ・・・・だから・・・

「ふぅ〜〜〜、やっぱり〜〜〜〜〜〜〜〜お茶は静岡産よねぇ〜〜〜〜〜〜」

呑気にお茶をすするだけだった。
もちろん誰も文句は言わない・・・・・


だって、六道校長が動くとろくでもないから・・・・・・・・・・・と。








ブオオオオォォォォォォォ!!!!!!!
ブロロロロロロォォォォォッ!!!!!!

二台のエンジン音が深夜の山道道路に鳴り響く、
それはもちろん令子の愛車とエミのバイク、そしてそれぞれの助手席に乗る夫達は・・・・・・・・やはり死にかけていた。

「れ、令子ぉ・・・だ、だからもっと安全運転でぇぇ・・・!!」

ギャギャギャギャギャギャ!!!!

「しゃべるんじゃない!舌噛むわよ!!」

慣性ドリフトの揺れに気が遠くなるそうになる横島。

「え、エミさん!し、死に・・・」

ギャギイギギギギギ!!!

「ピート!反応が遅いわよ!!」

今にも手の力が緩み放り出されそうになるピート。
こんなことなら自分が運転してくるんだった・・・と、後悔するがもう遅いなぁ・・・とある種の覚悟を決める二人だった。

「れ、令子!お前こんな急カーブ、しかも暗い夜道をよくこんなスピードで・・・」

「ふふ・・・これでも『走り屋美神』でちょっとは有名だったのよ?23〜5歳の頃は♪」

「へ〜、23〜5歳のときねぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、お前それもう俺と結婚しとるときやないか!
 しかも蛍を身ごもってるときかよ!!」

「おほほほほ、だから蛍にはGSの血の他に走り屋の血も流れているのよ!」

「あーーーほーーーかああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!?」


横島のツッコミが風に流せれるこのときより5年後・・・
某峠で『閃光の蛍』という超高速の走り屋が生まれる・・・・・・・・・・・・・かもしれない。





ひ・・・め・・・

の・・・め!

ひのめ!!

闇・・・
少女の視界に映るのはそれしかなかった。
いや、まぶたを開いてないのだ・・・そう思い覚醒する意識と共にゆっくり上げてみる。
やっぱり闇・・・何も映るものはなし・・・いや。

「んん〜〜〜」

シパシパする目を二、三度パチクリさせ蘇る体の感覚のまま上体を起こす。
やがて暗順応を起こし月の光で周囲の光景が見えてきた。

「ここは・・・」

『ひのめ!無事!?』

「あ、心眼・・・おはよ・・・」

心眼の声で目覚めた少女・・・美神ひのめは少しボーっとする頭で今までのことを整頓してみる。
M山に除霊作業をしに来て、その最中に仲間割れが起こって、その原因を迎えに行って、親友が橋を崩しちゃって・・・

「そうだ!二人は!?」

一緒にいたはずの親友・江藤幸恵とライバルの三世院京華はどこだと周囲を見渡す。
まさかはぐれたか!・・・・と一瞬焦ったが、心眼が言う方向に視線を移すと仰向けのまま気を失っている二人を難なく発見できた。

「さっちゃん!さっちゃん!」

ペシペシペシペシ!!!

まずは親友を起こそうと頬を何回か叩きながら呼びかけるが・・・

「う〜ん・・・あと5分・・・」

と、寝ぼけた様子。

「相変わらず寝起き悪すぎ!・・・・むぅ、でりゃぁ!裸締め!」

「うっ!!く、くるし・・・タップタップ!!」

息苦しさから急速に眠気が覚めるものの今度は別の意味で意識が飛びそうな幸恵は、
自分の首に巻きついているひのめの腕を慌てて叩く。

「あ、起きた?♪」

「『起きた♪』じゃないよぉ!!友人を絞め殺す気ぃっ!?」

「甘い!私なんて少し寝坊しただけでママに『目覚めのブレーンバスター』喰らったことあるんだから!」

「ひーちゃんのママって・・・」

呆れる幸恵をよそに次は京華を起こそうとするひのめ・・・そこでポツリ・・・

「やっぱり優しく頬をはたきながら起こさなきゃね♪」

でも笑顔で作るのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜか握り拳でした。







                             その40(B)に続く



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