ザ・グレート・展開予測ショー

横島、決意する!第2話〜殴られて当然っすか?!〜


投稿者名:ヨコシマン
投稿日時:(03/10/16)


「で、でけぇ!!」
横島が思わず叫んだのも無理は無かった。その大蛇は頭だけでも1m以上、胴体を含めると30m近い。
大蛇はすぐに攻撃を仕掛けようとはせず、ゆっくりと鎌首を持ち上げて警戒体勢をとる。品定めでもしているのか、目を細めながらこちらを見ていた。
「・・・!美神さん、こいつ普通の化け物と違うんじゃ・・・!?」
助手といえども、美神と共に死線をかいくぐってきた横島の感覚は、並みのGSのそれとは比べ物にはならない。その培ってきた感覚が今は目いっぱい危険のサイレンをかき鳴らしている。
「だいぶ判るようになってきたじゃない。これ、ちょっと手強いわね。」
余裕があるような話し方をしてはいるものの、美神も内心は横島と同じように危険を感じていた。その証拠に横島に話し掛けている間も、決して蛇から目をそらす事は無い。
「横島クン!お札と神通棍!」
息の合った連携は大蛇に一分の隙も与えない。棍を右手に、札を左手に、再び白き蛇と対峙する。睨み合うこと三十秒、先に動いたのは美神だ。
(まずは小手調べっと!)
左手から放たれた護符は三枚。同時ではなく、ワンテンポずつ遅れて大蛇へとむかう。戦闘における基本、間合いを詰める為の布石。
三枚目のお札が炸裂したとき、すでに美神は大蛇の頭部側面に滑り込んでいた。
「いただき!!」
裂帛の気合と共に踏み込み、飛び上がると同時に白蛇の頭目掛けて神通棍を振り下ろす。
棍を握る彼女の両手に伝わった衝撃は、想像していたものとはまったく異なる ―例えるならゴムに包まれた鉄の塊のような― ものだった。
「あ・・・、あれ?」
大蛇はお札の威力に怯み、続く神通棍の一撃でのたうち回る、そしてトドメ!・・・のはずなんだけど・・・?
頭の中のシミュレートと現実が食い違う、そんなことは良くある事だ。だが今回は、その想像していた現実との誤差を遥かにこえていた、いや、誤差と言うよりは見当違いといって間違いないだろう。

蛇は少しも動いていなかった。動く必要も無かったのだろう。放たれた護符は勿論、神通棍による一撃も意に介さない素振を見せていた。
「「グッグッグッ」」
蛇はのどの奥から搾り出すように笑いながら、自らの体をゆっくりと揺すった。
(あ・・・!鱗!)
神通棍から放出される美神の霊波動、実際はそれこそが敵に対して最も有効なダメージ源である筈なのに、その肝心の霊波が大蛇の鱗の上を滑るように駆け抜けて空中へ散っていく。
そしてその鱗の持ち主は再び鎌首をもたげた。
いけない!間合いを・・・取ろうと体勢を整える、その一瞬の隙に蛇が動いた。美神の頭を噛み潰さんとする一撃が、体勢の崩れた彼女に向けて、まるで巨大なハンマーの如くに振り下ろされた。
「ヤ、ヤバ!!」
タイミングは最悪。間違いなく回避不能な状態ではあったが、回避行動をとるほかは無い。美神は渾身の力で後方に飛びのいた。
間一髪、大蛇の牙は彼女の鼻先を掠めて空を切る。
「こいつ・・・、スピードは大した事無いってこと?」
これほどの巨体だ、パワーはあってもスピードは出せない。
安全な間合いまで後方に下がり冷静に分析をはじめた美神は、そのポイントをどう利用しようかと考えあぐねていた。
(効果的なダメージを与えるにはあの鱗が邪魔なのよねー。かといってあの鱗を突き破るほどの装備は持ってきてないし・・・。準備不足だわ。それに、それに・・・)
考え込む美神を見て、今まで後方で万が一に備えていた横島が近づく。
「み、美神さん!やっぱり・・・」
「大体!情報が足り無さ過ぎるのよ!!!」



((ドゴン))



「おおおおおおおお!!!なにすんですかー!!!鼻が!!鼻が〜!!」
のたうち回る横島の悲鳴で我に帰る。どうやら横島を殴ってしまったようだ。
「あ、ゴメンゴメン。殴りやすそうな顔があったから・・・つい」
ゴメンネ〜、と笑ってごまかしながら美神は横島をなだめすかす。
「今回、最初の一言と今しか出番が無いのに!それなのにこの仕打ち!しかも無意識で人を殴るんじゃネぇー!!」
「なによ!人がこんなに謝ってるじゃないの!大体、横島クンなんだから殴られて当然じゃない!」

電撃に打ち抜かれたようにがっくりと膝を地に付けて、横島は襲いくる眩暈と戦っていた。
「な、殴られて・・・当然?!」
そうなのか?そうなのか??オレ?!涙目で呟く横島を尻目に美神は大蛇へと向き直り、再び大蛇を睨み付けた。
「横島クンのポジションも決まった事だし、次回でキッチリ決めるわよ!」
決意を新たに神通棍を強く握る。
(マジでこの女、見捨てて逃げよう。神様だって許してくれるさ!)
殴られて当然の男も決意を新たに拳を握っていた。


                     <続く>

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