ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―9後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/16)


<前半からの続き>




「あら?貴方ひいおじいちゃんの事知ってるんですか?あれは、ひいおじいちゃんの吸血鬼を倒すっていう執念がメカに染み付いて出来た残留思念なんです。」

と、俺の驚きの声が聞こえたのか、ヘルシング嬢が説明してくれた。

「ちょっと前まで私も取り付かれてたんですけどね、今はこうしてゴリアテに憑依させて除霊を手伝って貰っているんです。」
「で、でもなんか…吸血鬼殺すとか言ってるけど?」
「あ、大丈夫です。もう何が吸血鬼かなんて分かってないですから。敵は皆、全殺しです♪」

良いのかっ!?大丈夫なのかソレ!?

「ダンピールフラッシュ!」
「殺すーーーっ!!」

ピートとゴリアテが同時に襲い掛かる。

「ひょいっと♪」

だが、インキュバスはあっさりとそれをかわした。
駄目だな。こりゃあピートとゴリアテじゃあ相手にならん。
俺が見た所、インキュバスの動きは完全にピート達の動きを上回っている。
逆にピートの力は、今の動きから推測してだいたいGS試験前くらいか?あの当時のピートじゃあこいつには勝てん。ゴリアテも同様。

「ぐあっ!?」
「あれ?君ってヴァンパイヤ……ヴァンパイヤハーフって所かい?ふふふ、イキが良いね♪」
「くそっ!離せっ!?このっ!!」

案の定、ピートはあっさりとインキュバスに捕まった。

「このっ!ピートおにーさまを離せっ!!ゴリアテ、ミサイル!!」
「吸血鬼は死ねー!!」
「ちょ、待て!ピート巻き込…」

―― ガチャッ、ドンッ ――

「わっ!?ア、アンッ!?」

ゴリアテの胴部が開き、そこからミサイルが発射される。一直線に向かってくるミサイルに、ピートは目を丸くして慌てた。

―― ドゴーーーンッ!! ――

「げっ!?」

そして寸分の狂いも無くインキュバス(とピート)に命中。爆音を立て、モウモウと煙が巻き上がる。

「ペッペッ!ちょっと〜!折角のセットが崩れちゃったじゃないの〜?まったく非常識なおこちゃまね!」

だが、爆炎の中から出てきたインキュバスは全くの無傷だった。
爆風で崩れた髪を撫でながら、余裕のコメントを発する。
一方…

「ア、アン…もっと後先考えて……ぐはっ!」

ピートはかなりやばそうだった。

「ちっ!冥子ちゃん、式神出してっ!」
「は、はい〜っ!アンチラ、アジラ、サンチラ〜っ!」

俺は冥子ちゃんに指示を出すと、同時に自分も戦闘体制に入る。

「ん〜〜〜?やっぱりちょっと鬱陶しいわね〜?じゃあまあ…ちょんっとね♪」

―― パチン ――

「えっ!?」
「ひゃうっ!?」

インキュバスがまた1つ指を鳴らす。すると、ヘルシング嬢と冥子ちゃんが突然胸を押さえて屈み込んでしまった。
なんだ?!

「おい!大丈夫か2人とも!?」
「な、何これ?…あっ!」
「胸が〜…苦しいの〜……んんっ!?」

な、なんだ?なんだか微妙に色っぽい喘ぎ方を……

「僕がインキュバスだって事、忘れたわけじゃないだろ?女の子じゃあ、絶対僕には勝てないよ。もっとも、男の子にだって負けないけどね♪」
「な……何をした?」
「ん?ああ、ちょっとばっかし性感をね♪なに、動けない程度の軽いものさ。じきにおさまるから、そんなに怖い顔しなくたって大丈夫だよ♪」

こいつ、本当に強ぇ……
馬鹿でナルシーでも強ぇ!

「さってと、邪魔者がいなくなった所で……はじめようか?」
「なに?」

と、インキュバスがさっきまでとは違う真面目な顔を見せる。その2つの目が鋭く俺を捕らえていた。

「1目見て判ったわ。今日の本命は貴方だって…」

俺が本命?それってつまり

「俺が1番強そうだってか?」

ふん。光栄だね!
それじゃあ、その期待にこたえてやらなきゃな!

―― ブンッ ――

俺は右手に力を集中させて、霊波刀を作り出す。ジリジリと間合いを計り、相手の隙を伺った。

「神父はちょっと年を取りすぎた。さっきのヴァンパイアハーフの子もまあまあって所だけど…」

インキュバスは獲物を見つけた獣のように舌なめずりをする。
そして人差し指をスッと突き上げ、

「貴方が1番、僕の好み♪」
「は?」

この悪魔は今なんて言いました?

「たっぷり可愛がってあげる♪ふふふ…直ぐに僕の虜さ。そうしたら、君はもう僕無しでは居られなくなるよ♪」

いやーいかんな。最近耳が遠くなって……変な幻聴が聞こえるよ。

「女って、結局インキュバスにとっては餌だろ?ちょっと力使えば言いなりになってしまうしね。そんなのつまらないと思わないかい?だからさ、僕は断然男の子の方が好みだね♪」
「おとこは嫌じゃーーーーーーぁぁぁっっ!!!!」

………………










「ふう、ようやく日本ね〜…」

成田空港のロビーで、1人の少女がサングラスをずらして呟いた。

「でも、本当に日本の空気って味噌臭いわね…」

綺麗な赤茶色の髪は、光の加減で金髪にも見える。
一際目立つ抜群の容姿をもつこの少女は、周囲の男達からの視線に気づきつつも平然と立っていた。

「しかし、おにいちゃんもだらしなくなったわね。たかが泥棒に手こずってママを呼ぶなんて…」
「お待たせ、令子。」

ブツブツと呟く少女に、もう1人の女性が声を掛ける。

「あ、ママ。」
「ひとまず六道家に向かう事になったわ。良い機会だから、貴女も会っておきなさい。」

こちらもまた、すこぶる付きの良い女。2人には端々に似た点があり、どうやら血縁だろうというのは誰の目にも明らかだった。

「ああ、ママの先生だった人でしょう?」
「ええ、その後で唐巣神父の所に行くわ。」

並んで歩き出す母娘。すれ違う男の大半が振り向いてく。

「その神父ってママの師匠よね?」
「そう。これからは貴女の師匠になる予定だから。」

母と娘はそんな会話を交わしつつ、人込みの多いロビーを後にした。

………………



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