ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―9前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/16)

人間は魔族に比べて圧倒的に脆弱である。
まあ、一口に魔族と言っても色々いるし、人間にだって例外的な存在ってのもいたりはする訳だが…
人は圧倒的に脆弱である。
だから、GSが悪魔と戦うときは、基本的に自分よりも強い奴を相手にしなければいけないものだ。
だからこそ人は考える事でそれを補う。
相手の弱点を探し、自分の切り札を隠し、一瞬の攻防に全力を出し、欺き、ありとあらゆる方法で戦うのだ。
そして人間のとる作戦の中で最も簡単で効率的なものが、多人数で戦うという手段である。
人間は確かに脆弱だが、それはあくまで単体で比較したときの話。

―― 数は人間の最大の武器である ――

とある高名な生物学者の言葉。
脆弱であればこそ人間は仲間と共に戦い、一人では勝てない敵に立ち向かう。
それはGS世界でもごく一般的なことであり、敵が強大であればあるほど、多くの仲間と共に共同作戦をとるのだ。
互いの長所を併せあい、互いの短所を補いあい、1足す1が10にも…もしくはそれ上にもなる。
だから、GSにとって仲間はとても重要な存在だ。
例えばそれが、1次的な共同作戦だったとしてもだ…

………………










「じゃあ、早速だが詳しい話をしようか。」
「あ、はい・」

俺たちは神父に促され、教会の中に入る。

「あ、私お茶入れてきますね。」
「ああ、ありがとうアン君。」

ヘルシング嬢がそう言って奥のほうへ消えていく。

「じゃあ、適当に座ってくれるかな?」
「うい。」

教会の中ってのは、基本的にどこも同じようなつくりだ。礼拝客の座る長椅子がズラリと並ぶ。
俺たちは思い思いにそれらに腰掛ける。
ヘルシング嬢が持ってきてくれたお茶を啜りつつ、打ち合わせが始まった。

「じゃあ、まずはこの写真を見て欲しい。」
「これ……」

そこには凄ぇキザったらしい面した魔族が写っていた。アシュタロスとメゾピアノを足して割ったような、一目で俺の敵と判断できる面だ。

「これがインキュバスだ。」
「へ〜さすが淫魔……いかにも女ったらしって面っすね。」

そいつが右斜め45度の角度でカメラ目線を披露している。左手の人差し指を立てて、チッチッチッてなポーズを決めてる、バリバリのプロマイド写真だった。

「しかし…よっくこんな写真が手に入ったっすね?魔族の写真なんて普通は手に入らんでしょう?」
「いや、それがだね…」

唐巣神父は懐からハンカチを取り出すと、なんとも言えない表情で汗を拭く。そして乾いた声で説明を続けた。

「実はこの写真はインキュバスがくれた物なんだよ…」
「へ?それってどういう事っすか?」
「あ〜…横島君は、そもそもインキュバスについてどの程度知っているかね?」

と、唐巣神父は不意に話題を変え、そう問いて来る。
俺は昨日ちょっと調べた事を思い出して答えた。

「インキュバス…一応は魔族のカテゴリーに分類されてるが、本来は妖精である。夢魔(ナイトメア)の1種で女性タイプのサキュバスとは対の存在だ。女の夢に現れては快楽に誘い、その身体をむさぼり子を孕ませる事を糧とする……くっそう!なんて羨ましい奴めっ!?俺も、俺も………ハッ?!いや、何でもない。でもって、非常に狡猾で高い魔力を有する厄介な存在である、と。」
「うん。まあ、そんな所だね。」

くそっ!許せんぞ女の敵めっ!!俺の中の正義の心が、奴を倒せと叫んでる!おねーちゃんたちを、奴の魔の手から守れと神が命じるーーーっ!!!

「ところがね、今回相手にするサキュバスはちょっと変り種でね……」
「ん?変り種…っすか?」
「ああ、その何て言うか……」

神父の表情が、更に乾いていく。反対に冷や汗はどんどん溢れてきた。それを拭く神父の手の動きもあわせて早まる。

―― !? ――

なんだ?!
と、そこで異変が起こった。それに最初に気づいたのは俺と神父。

「これって?!」
「え…あっ!!?」

一泊おいて、残りのメンバーも同じモノを感じる。
俺たちが感じたもの、それは魔力だ。それも魔族特有の気配。

「は〜い神父♪今日は僕のほうから来てやったよ〜ん♪」
「!?」

全員がそちらを振り向く。
そこには、さっき見た写真と変わらない姿の魔族が居た。

「インキュバス!?」
「や〜んっ!凄い魔力〜〜〜!?」
「くっ!?この教会の結界をモノともしないなんて!?」

ただ出現しただけで場の空気が一変する。
流石に噂だけある。こいつの相手をするのか!?

「こりゃあ、危険な相手に当たっちまったな……」

出来るなら戦いたくない相手だ。
俺は1つ呟いて、慎重に相手を観察る。

「ふふ〜ん♪そっちのが助っ人かい神父?」

―― ビシッ! ――

「なかなかキュートな子達じゃないか♪だがね、僕には勝てないよ?」

―― ビシッ! ――

「この史上最高のインキュバスであるこの僕にはねっ!」

―― ババーン! ――

「……なぜ、いちいちポーズつけて話す?」
「こいつがインキュバス……ですか?」
「…………馬鹿?」

写真と変わらないポーズをつけて、そして変わらない流し目。とりあえず、馬鹿だ。

「ふふ〜ん。僕の格好良さに嫉妬しているね?まあ、インキュバス一の美男子ともっぱらの噂のこの僕。嫉妬の視線は慣れっこサ♪」
「馬鹿でナルシスト……さいてーね…」
「え〜〜〜へんたいさん〜?」

なんてこったい…

「こりゃあ、危険な相手に当たっちまったな……」

出来るなら戦いたくない相手だ……
俺は1つ呟いて、眉間を押さる。

「インキュバス!今日こそ魔界に送り返してやるぞ!」

そんなか、一足早く行動を起こした者が居た。唐巣神父である。
俺たちがズッコケているのをお尻目に、神父は聖書を開き、朗々と真言を唱えだす。

「聖なる父、全能なる父、永遠の神よ!!ひとり子を与え、悩める…」
「おっと、そいつはストップだ。」

―― パチン! ――

「なっ?!」

だが、それは途中で止められる。インキュバスが指を鳴らすと、教会の床板を破り無数の触手が神父の真下から飛び出してきた。
それは神父の身体に巻きつき、その口も塞いでがんじ絡めにする。神父はそのまま床に引き倒された。

「ん〜ん〜んん〜〜〜!!」
「せんせいっ!?この、こいつっ!!」
「ゴリアテ来てっ!!」

それを見た、ピートが激昂してインキュバスに襲い掛かかる。

―― ドゴーンッ! ――

「吸血鬼は皆殺しだーっ!!!」
「げ!?あれってゴリアテ…」

と、ほぼ同時に俺にとっては嫌な思い出しかない物体が壁をブチ破って登場!
ヘルシング嬢の曽祖父、ヴァン=ヘルシング教授製作、対吸血鬼用最強マシン、イージス・スーツ「ゴリアテ号」だ。

「しかも、なんだあれ?」

ゴリアテ号は殆ど戦車みたいなメカだが、それでも一応イージススーツなので人が「着る」ものである。まあ、着るってよりは乗るのほうがしっくり来るけど。
でも、今ゴリアテ号を動かしているのは人間ではなかった。ユラユラと揺らめく姿は幽霊…しかもこの顔は

「初代ヘルシング教授?!」




<後半に続く>

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