ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―8前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/14)

起業するってのはそりゃあ大変なものだ。
例外的なモノを除けば、とにかく一番最初に凄い金がかかる。
大多数の経営者は、その金を何処から借りてきて賄っているのが普通だ。
だから、起業した矢先ってのはだいたい借金持ちで当たり前。
なもんで、それを返済しないうちに経営でコケちまったら、目も当てられない事態になる。
1回そこそこに成功してから、大勝負してコケた人はもっと悲惨だけどね。
だからこそ、みんな必死に頑張って業績を上げようとしているのだ。
勿論、経営の難しさってのが金の問題だけって事も無くて…
その目も当てられない事態になった経営者の何て多い事か。
ちなみにゴーストスイーパーなんて仕事をしていると、そのどうしようもない状態から逃げるために、最終手段を取った元経営者を見ることもそれなりにある。
結構いたたまれないんだぜ?
今後はもっとかもな……
なにしろ今、俺は起業して、今の俺は経営者だ。
当然だが、俺はそんな目も当てられない状態になんてなりたくないぞ。
だから頑張る。必死に頑張る。
せめて借金を返済できるまではコケたくないぞ!
俺はこの仕事で、ささやかな幸せを掴むんだ。
そのために今は……
目の前の仕事を1つ1つきっちりと片してこう。
安定した業績への道は、細く厳しい茨の道なのだから………

………………










「で、これが今回の仕事っすか?」
「そうよ〜。相手はインキュバス、男淫魔の一族で…」
「ちょっと待った!」

俺は今、六道さんの家にいる。
豪邸らしくだだっ広い応接室のソファーに腰掛け、テーブルの上に置かれている何枚かの書類に目を通して今度の仕事について六道理事長と打ち合わせをしていた。

「あら?な〜に〜?」
「俺、言ったじゃないっすか?とりあえずソコソコのレベルの仕事回して欲しいって?!」
「うん〜。だからソコソコの仕事じゃない〜?」

―― ブチッ ――

「インキュバスったらかなり強いって悪魔じゃないっすか?!確か国連の掛けてる懸賞金もそれなりの額だったっすよねー!?」
「そうそう〜♪きちんと勉強してのね〜。偉いわ〜横島クン〜♪」

俺は紅茶を啜る理事長を睨みつけて言った。

「ソコソコってのはそうじゃ無いでしょーっ!?もっとローカルな幽霊とか妖怪とか、六道家ならそんな依頼だって山ほどあるんでしょう?!国連が懸賞金掛けてる魔族なんてそれだけで超大物じゃ無いっすかーーーっ?!!」
「ご免ね〜〜〜テヘッ♪知り合いから急に手助けが欲しいって連絡が入ってきちゃって〜〜〜。でもでも、横島クンなら大丈夫でしょ〜?お願いね〜♪」

理事長は臆面も無くシレッと切り返してくる。

―― この人は〜〜〜っ! ――

俺がこの人と知り合ってから20日がたった。
あのときの約束どおり、俺が事務所を立ち上げるのに色々と手を貸してもらっている。もう手続きのほうは全部終わっていて、あと1ヶ月程で正式に『横島除霊事務所』が誕生する運びとなった。
だから今は、俺はまだフリーのGSだったりする。
そして、最近は俺はGS協会ではなくて六道理事長から仕事を回してもらっていた。

「なんか、意図的に俺に難しい仕事回してません!?こないだの『妖刀田吾作(ようとうたごさく)』だってすっげえ厄介な相手だったじゃないっすか!?」
「やぁね〜たまたまよ、たまたま〜…それに、そんな相手でも横島クンはきっちりと解決したじゃない〜♪」

結果だけ見れば確かに成功だったけど、『妖刀田吾作』には本当に手こずったのである。あの能力はやっかいだった…

「問題はそこじゃねーっすよ!?最初に決めた約束を、一方的に反故にされてるんが納得いかんっちゅーとるんですっ!!」
「世の中って、往々にして上手くいかないものなのよ〜?だからもっと柔軟に〜臨機応変にいかなくちゃ〜♪」

こ…こいつは本当に…
既に俺は、この人にはかなわないという事を理解させられている。
もう、何を言っても最後には俺が言いくるめられてしまうのは目に見えてるんだ!
分かっちゃいるけど文句ぐらいは言わないとやってらんないぞ!

『ふふふ…その状態では手も足も出まい?今日こそ貴様の最後だなAPマン!!』
『くそっ!BKマンめっ!!』
「きゃ〜!APマン〜っ?!」

大体、今度の相手はインキュバスだって!?

「ほんと…俺なんかにそんな仕事回したら後悔しますよ?失敗しても知らないっすよ?」
「でも〜失敗したら困るのは横島クンよね〜?」

理事長はほんと、嫌になるぐらい優雅に紅茶を啜って答えてくる。

『そこまでにしときな!』
『何奴っ?!!ああっ!?貴様はSPマン!!それにCPマンかっ?!』
『ドクターJからの預かりモンだ!受け取れAPマンっ!!』
「きゃ〜♪SPマンさま〜〜〜♪」

ああそうだよ!失敗して困るのは俺さ!
理事長にとっては、困るっていってもそんなにたいした事じゃねーよ!!
1回仕事に失敗すると、その信用を取り戻すのはとても大変なのである。特にまだ新参者の俺にとって、失敗は事務所の存亡にかかわる程の事となろう。

『チェーンジ!ニューフェイスッ!ファイヤーAーPーマーーーーーンッ!!』
『これで形勢逆転だな、BKマン?』
『お、おのれぇ…』
「きゃ〜♪きゃ〜♪」

ま、それはひとまず置いておいて……

『くらえっ!ファイナルAPブラスタ…』

―― ピッ ――

「ああっ?!!」

俺はテーブルの隅っこに会ったリモコンを手に取ると電源ボタンを押してテレビを消した。

「とりあえず、冥子ちゃんも仕事の話に参加してね?」
「横島さんひ〜ど〜い〜っ!!今〜い〜ところだったのに〜〜っ!」
「冥子…貴女って娘は〜……」

一応俺の弟子って事になってしまった冥子ちゃんは、学校が無いときには俺と一緒に除霊に行く事になっている。
今までに2回一緒に仕事を行っているが……
とりあえず、目標達成は未だ見ぬ頂の彼方って感じ…………はぁ。

「明日は休日なんで、冥子ちゃんも行くんだからね?」
「あ〜〜ん、A〜P〜マン〜〜〜!」

小学生かっ!?

「おたくの娘さん、本当にGSにしちゃっても良いんですか?」
「ううっ!わたしだってこの娘が六道(ウチ)の娘じゃ無かったら〜〜〜」
「えいっ!」

―― ピッ ――

『助かったぜSKマン。』
『ふん、勘違いするな。お前を倒すのは俺だということだ、APマン』
『ふっ!そういう事にしておくさ…』
『ハハハハハハハ!』
タラッ♪タラララッタラ〜ン♪ズンチャッチャチャチャチャ…

「あ〜ん〜終わっちゃった〜〜〜っ」

頭いてぇ……

「もういいよ、ハァ……で、理事長。俺たちはどうすれば良いんです?」

俺は冥子ちゃんの事は気にしないで、理事長との話を続ける事にした。

「あ、そうそう〜…助っ人を頼んできたって言うのがね〜……唐巣クンって言うんだけど〜……」
「!?」




<後半に続く>

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