ザ・グレート・展開予測ショー

虹色の笛    〜〜〜〜(第七声)〜〜〜〜


投稿者名:えび団子
投稿日時:(03/10/13)



「ここ・・・が、そうなの?」




一同を乗せた車が手紙に記された目的地である、その場所に着いたのは昼もとっくに過ぎた夕刻時であった。照りつける夕日は角度の低いものになっており陰を長く後方に描いていた。静かに風が吹きつけ回りの雑草が表し難い雑音とも言うべき擦りあう音が耳に入った。見た感じ、緑とは程遠い。草木の枯れ果てた灰色を帯びていて気味の悪い、いかにも霊が出そうなうってつけの所だった。形容が神社と言うこともあり余計に引き立つし皮肉なものだった。





「霊を本来は祓う場所なのに、こんなに荒れ果てて」


所々に傷があり亀裂の入った石段を登りながらそっと呟くタマモ。
周囲をじっと観察しているシロには全く聞こえていない。


「嫌な気がするでござるよ・・・」


目を一層、注意深く凝らして何かを感じ取ったのかそう言い、一人、皆の前を先導して行く。


「気をつけるのよ、いつ何処から敵が出てくるか分からないんだから!」


美神が先頭を行くシロに注意を促す。乱れ落ちた枯れ葉が足を降ろす度にガサガサと、乾燥した面が潰れる音がした。素っ気の無い、か細い茶色の木々が階段の左右から長い枝の部分だけが突き出して来ていて時折少し屈み気味になって進んだ。

何が待っていると言うのか・・・?


「・・・・」


一人、不安か恐怖か。懐かしい、思い出すような面持ちでゆっくりと歩いているおキヌの姿があった。




「ここね、例の場所は。」


石段を全て登り切った所で美神が独り言の様に言った。眼前に聳え立つそれは、
今にも崩れかかって来そうなくらい脆い造りだった。以前はそれなりに大きな神社だったのかもしれないが現在に至っては面影すら全くと言っていいほど残ってはなく、古びた建物の柱がひっそりと懸命に屋根を支えているばかりであった。正しく廃棄された場所であった。


「薄気味悪い。早く終わらせて帰ろう」


タマモが二の腕に両手を掴んで身震いしながら言った。


「そうでござるな、それにしても霊の気配が全然しないでござるよ?」


拍子抜けしたようにシロは声を上げる。


「それもそうね、何でかしら?あっ・・・気配がないと言えば・・・。」


「横島さんがいませんよっ・・・!!」


気付かなかったが背後を振り向くとそこには確かに四人の影しかなかった。


「先生、先生っーーーー!何処でござるかーーーーーーー!!?」


遠吠えを山々に木霊さすシロ。


「さっきまでいたわよね?トランクから出てきた時は半死に状態だったけど」


全員が首を縦に頷いてタマモの意見に肯定する。

だが、所詮はたったの一コマ・・・いや、一行で蘇る彼のことだ。きっと生きてる、ゴキブリ並の生命力を持ってる奴なんだから、と美神は自分を制した。少なからず、唯の丁稚奉公にそこまで心配してられない。昔と今では違う、彼もあれで自分と同じ実力を持つ霊能力者だし、そう簡単に逝く訳はないだろうと確実では無いにしても大体は確信していた。


「まあ、いいわ。その内ひょっこりと顔出すでしょ?酸素不足の長旅だったんで疲れたでしょうから今日は休憩さしてあげましょう。霊の気配も無いし。」


『優しいところもあるんだなあ〜』


この時三人は、そう思った。


「まあ、給料から差っ引くけどね♪」


『やっぱりな〜』


この時三人は、そう思った。










それから、ある程度周囲を回った後、元の場所に集まって再度確認をした。


「正面庭、神社内とその周辺、東室、西室、南室、北室、裏庭、別館全てに霊の反応見られず。痕跡も見当たらない、よってこれで除霊終了〜」


美神の声と共に今日の仕事が終わったかに思われたが・・・。


「「待ってっ!!!!」」


シロとタマモが声を揃えて叫んだ。彼女達の感覚に引っ掛かったものがあったのか地面に顔を擦り付けるギリギリまで近づけて靄を晴らすように入念に元を探る二人。


「何か分かったの?!」


美神が神通鞭を静かにしならせて問う。


「・・・・」


表情が徐々に険しくなるおキヌは又、無言で俯いていた。

そして、暫く経った後。


「分かったでござるっ!」「わかったわっ!」


同時のタイミングで、はもる二人だが。


「拙者の方が速かったでござるっ!!」「私の方が速かったわっ!」


「やめんかあぁぁああああぁぁぁぁっっ!!」


解説する間も無く美神が仲裁に入る。


「で、何処なの!?案内しなさいっ!!!!」


「「は・・・はい!」」


今は争っている暇は幾分もない。美神の迫力は母親譲りのものだった。




二人に案内されて辿り着いたのがさっき調査して何も感じられなかった別館。
そこだけは未だ造りが新しく破損も殆ど進んでないところだった。木々の良い香りも漂ってはいるし、触った感触も新鮮な生き生きとした感じで随分この場とは相応しくなかった。外見は一回り小さいサイズの神社で窓には格子が付いていた。屋根は三角型で瓦を張っており鮮やかな赤の札が戸の端々に張り巡らされている。更に印象的なのがはめ込み式の10桁の石版と数字の0から9までが彫られてある水晶玉。




「ここから微妙だけど霊気の跡を感じるわ」


「それもかなり新しいでござる!」


今はこの二人の超感覚を信じるしか道がない訳で、美神は扉に手を掛けた・・・が。




       ――――――――バチッ!!!!――――――――




手を中心に中くらいの霊波が身体中に走る。美神は伸ばした手を素早く引っ込めて驚いた風に口を開く。


「結界ね、面倒なものを仕掛けてくれるわ。」


口の端を持ち上げて、苦笑か挑戦的な笑みを浮かべる美神。


「任してくだされ、美神殿!!」


シロが下がった美神の前に立ち、鍛えぬ抜かれた霊波刀を斜め45度に吊り上げ
深呼吸する。吸って吐き、それを数回繰り返し自らのモチベーションを徐々に高めていき後ろ足を地面を摩擦しながらゆっくりと半歩引く。そして、前傾姿勢を取ると。


「うおおおおおぉぉおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!」


目にも止まらぬ速さで結界に右腕、霊波刀を一気に躊躇無く、鋭利な刃物を突き出すかの如く一直線に飛びつく。周りの大気が暫し歪んだ。




     ――――――――バチバチバチバチッ!!――――――――




結界に大きな音が響いたと思ったらシロが吹っ飛んできた。




「うわあああっ・・・美神殿〜〜〜〜っ!!」


ドスンッ!


「大丈夫?!やっぱり駄目ね・・・」


思いっきり尻餅を付き半泣きのシロを他所にタマモが、


「この手の奴は大抵、制約が絡んでるのが多いんだけど・・・」


その言葉に全員が気付いたように、はっとする。




      ――――――――さっきの石版・・・――――――――




扉の目の前に立て掛けられている石版と水晶玉に視線を移す。


「これ・・・ね」


「けど、さっぱり分かんないわね。」


タマモが最初に気付き美神が予想通りの返答をする。


「拙者の勘で・・・」


一つ数字をはめ込もうとするシロを・・・。


「「バカッ、もしもトラップが仕掛けられてあったらどうするのよっ!?」」


後頭部をしばかれて、たんこぶを作るシロ。


「じゃあ、どうするんでござるかっ!?」


「もう、どうしようもないわねえ・・・。」


美神から諦めの声が漏れる。

と、その時。


「239・・・。」


おキヌが静かに、悟った口調で呟いた。




        〜〜〜〜〜〜〜〜その頃〜〜〜〜〜〜〜〜




「はあ、はあ、はあ・・・やっと登り切った・・・・!」


石段の長い階段を上がり切った横島がへばっていた。


「ったく・・・こんなに荷物持たせて・・・しかもあんな状態の時に!!」


誰も居ない正面庭で一人佇む横島の姿があるだけだった。












                  続く

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