ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その38(A))


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/10/10)

ドンッ!ドンッ!ドンッ!

ドンドンっ!!

ドンッッ!!!

カチャ、カラーンカランカラァカン・・・・カチャッ!


ドドドドドン!ドンッ!!!!

普段は静寂に包まれる深夜のM山に轟く銃声。
白銀の銃口から放たれる霊弾は容赦なく悪霊、妖怪を撃ち抜きその魂を天に昇らせた。

正確なフォームによる、狙い澄ました一撃『シュアショット』から始まり・・・
素早く2つの目標を補足し、2体への射撃を可能とした『ダブル・ターゲット』、
腰に構えた銃の引き金を引きっぱなしにしたまま、もう一方の手で撃鉄を続けざまに叩き下ろすことで、
銃身が火を噴くような連射をする『ファニング』。

およそ西部劇の中でしか見たことのない高等銃技で除霊をしていく京華。
その光景にひのめ以下一同は口を開けたまま動くことが出来なかった・・・いや、ただ一人だけ・・

「どう?凄いでしょ?」

「あ、橘さん・・・」

ひのめは不意に聞こえるかすみの声に驚きながら振り向いた。

「あなた・・・京華を自分と同じ近距離戦闘タイプだと思ってたでしょ?」

「・・・・・・」

「確かに・・・あの子は何でもこなすわ、それこそ霊波徒手空拳から剣、薙刀、弓まで・・・・でもね」

かすみは温かい眼差しのまま京華を指差す。

「あの子は・・・京華が目指してるのは・・・・フラウさんと同じ霊銃使いなのよ」

そう言われてもう一度ひのめは京華に視線を移す。
右手に握られた白銀の神銃『ラファエル』・・・かつてひのめが心眼を通して見た京華の過去に出てきた銃。
京華の母フラウが・・・イギリスで人々を守るために、そして日本で娘を護るために使用した銃を今京華が使っている・・・
そして、もう一つの形見・・・朱のロザリオ・・・

「三世院さんは・・・・強いんだね・・・」

心から思った・・・、祖父から惨い仕打ちを受け母をあんな形でなくし・・・それでも母を目指している。
自分ならどうなのか・・・いろいろイザコザはあったがそう思うと『敗けれないな』と思うひのめ。
しかし、・・・かすみはその言葉に少しだけ寂しい目をして応えた。

「『強い』か・・・・・・・どうかしらね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、あの子は・・・・」

「え?」

「あの子は・・・・本当は・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや何でもないわ・・・・でも、いつか・・・・」

「いつか?」

「いつか・・・・あの子のしたことを・・・・許してあげて・・・」

かすみはそう言い残すと神通トンファーを右手と左手に携えて京華のフォローにまわる。
それにつられるように木下光と斉藤久美も神通弓、神通棍を手に除霊を始めた。
そして、少し出遅れたひのめのもとには・・・

「ひーちゃん・・・私達もそろそろ・・・」

「あ、ああ・・・そうね」

ひのめは幸恵の声に頷くとキュっと神通グローブを両手に装着する。
この日のために買った新品だがすぐに馴染むだろうと2、3回拳を握り締め空を二、三回殴ってみた。
違和感はなし、霊力の流れも順調・・・『さ、行こうかと』と幸恵のほうを振り向くと・・・

「さっきの・・・かすみちゃんとの話し・・・聞いてたんだけど・・・」

「あ、うん・・・・」

「私・・・かすみちゃんの気持ち何となく分かるな・・・」

「橘さんの気持ち?」

「もし・・・大事な人が・・・・誰かを傷つけたら・・・、
 それを止めることが出来なかったら・・・そして傷ついたら・・・・・・・・・・・やっぱり哀しいもんね」

「・・・・どういう意味?」

キョトンとした目で尋ねるひのめに幸恵は少しだけ笑って答えてみせた。

「・・・・ふふ、親友がハチャメチャだと苦労するってこと」

「ああ、なるほど〜〜〜・・・・ってそれはどういう意味だぁ!!」

「冗談冗談、ほら!ひーちゃん私達もしっかり見せ場作らないと成績に響いちゃうぞ!」

「わ、分かってるって・・・そんなに引っ張らなくても!」

腰に『介錯丸』を差した幸恵に手を引っ張られ前線へ駆けて行くひのめ。
その温もりに・・・しゃ〜ないなぁと笑みを浮かべるのだった。






ところ変わってM山中央広場特設本部。

「へぇ〜、ひよッ子にしちゃあなかなかやるワケ」


パイプ椅子に腰を下ろし足を組みながらエミが声をつぶやいた。
霊子レーダーに写る悪霊の数は結界を切った時点で例年よりか多いくらいだった、
しかし、その除霊スピードはさらに例年を上回るものであったからだ。

「今年はなかなか粒ぞろいの世代やからな、全体的にもレベルはここ数年で群を抜いとる」

「まだ入って2か月弱の子達とは思えないわね、これなら3年後GS試験・・・合格率期待出来るんじゃない?」

令子はコーヒーをすすりながらチラっと校長の冥子を見た。
毎年確実にGS免許合格者を出す六女の実績、それはすなわち受験生徒数の増加、学校側の利益を増やすことになる。
しかし、当の経営者は・・・

「え〜〜〜?冥子よくわからんな〜〜〜〜い」

と、答えるだけだった。
しかし霊力値では入学出来るか微妙なひのめの入学を押したのは実は冥子。
もし、ひのめの潜在能力を見抜いていたなら・・・

(・・・・んなわけないか)

鬼道やほかの教員からの現状報告を聞いてニコニコしてるだけの冥子に微笑を浮かべながら令子はコーヒーを飲み干した。
そのとき・・・

「ぐ、ぐはぁ〜・・・つ、疲れたぁ!!」
「え、ええ・・・しんどかったですね!」

本部のドアをギィっと重い音を立てて入ってきたのは横島とピート、
どちらも服がところどころ破れ、疲れを表情に出している。

「あ、おかえり〜遅かったわね」

「遅かったわねぇ・・・じゃねーだろう!!副結界の操作が本部から出来ないからって直に行かせやがって!
 おかげで帰りはたくさんの悪霊に絡まれたんだぞ!!」

「いいじゃないの〜それくらい、それともか弱い妻にこんな暗い夜道を歩かせる気なの?
 ひどいわ!およよよよ・・・」

「お ま え もGSだろうがぁぁ・・・しかも俺より長いやろうがぁぁっ!!!」

「ま、いいじゃない。今年は先生方も忙しいかったみたいだしこれくらいやったって」

ああ言えばこう言う・・・どう考えても令子に口で敵わない横島はぶす〜としながらも耐えるのだった。
そんな横島を見て『うんうん分かるでぇ〜、お互い妻には苦労するわなぁ』と涙ながらに鬼道が頷いていたのは秘密。

「ピートお疲れ〜、ケガはない?」

「ええ、なんとか」

妻であるエミの心配そうな表情に大丈夫だよと笑って見せるピート。

「おかしいわね〜、副結界の解除たって少し歩けばすぐに主結界の効果範囲に入るはずなのに」

「それが・・・横島さんが・・・
 『ピート、つり橋効果って知ってるか?今六女の生徒はこれに近い状態に陥っている!
  そんな彼女達の前にさっそうと現れるTOPGS!そうするとそうするとぉ!さ、行くぞ!ピート!』
 と、行って横道、獣道を走ったら迷いに迷ったあげく主結界も切れて悪霊達に・・・」

「ほほぉ・・・そういうわけだったのねぇ・・・」

ポキポキ・・・

本部に令子の指鳴り音が鳴り響く。
殺気が周囲を取り囲みゾクっと背筋が凍った。

「ま、待て令子!ここは冷静になって話し合いを!!
 俺たち人間はなぜ言葉を持つ!?拳で語る前に言葉でお互いの相互理解をぉぉ!!?」

「それが遺言でいいのね・・・」

ピキューンと光った令子の眼に腰が抜けヘタっと尻を床につく横島。
既にそのまわりは『被害をこうむるのはゴメンだ』と誰もいない。
あうあうと涙を流す横島の最後の言葉・・・

「ヒィっ!!俺はただちょっとだけ『若さ』を求めただけなんやあぁぁぁっ!!!」



────本部の床に血の湖が出来たのはその3秒後だった・・・
















「かすみ!右後方から来ますわよ!!」

「了解!京華も左3mに撃って!切り込むわよ!」


「てぇりゃぁぁぁっ!10匹目ぇ!久美、あんたのほうは大丈夫なの!?」

「う、うん・・・えと・・・えい!今ので4匹目だよ、光ちゃん」


三世院京華・橘かすみ組、木下光・斉藤久美組は各々のコンビネーションを活かし猛烈な勢いで除霊作業を行っていく。
完全に出遅れたひのめと幸恵が参加しようとするが・・・・・京華の銃弾が上空にいる悪霊を撃ち抜いたと思うと、
ひのめ達の周囲に除霊対象は既になかった。

「う〜ん、私達の出番〜〜」

『まあ、第一波が終わったとこだわ。すぐに集まってくるから気を抜くんじゃないわさ』

心眼の言うとおりこの除霊作業は一瞬でカタがつくわけではない。
意志統率の取れてない悪霊達は襲ってくる場所も、時間も編隊数も違う。
今4人が除霊したのもまだほんの一部であり、予定では今日、明日で全てを片付けることになっていた。

「京華、はいドリンク」

「どうも」

かすみからドリンクを受け取ると京華はバッグからタオルを取り出し額に流れる汗を拭った。
それと同様に小休憩を取る面々、ただひのめと幸恵はまったく働いてないので少しだけバツが悪い。

「あら、あなた達はただの見学ですの?全くこれだから・・・」

「これだから何よ?見てなさいよぉ・・・次の除霊では私の実力をいかんなくぅ!!」

「ほら、ひーちゃん私達も今のうちに水分補給しとこ?私バッグから取ってくるね」

ひのめをなだめながら幸恵は少し離れた木の枝にかけておいたバッグまで小走りで駆けて行った。
バッグからドリンクを取り出しにいくだけ・・・誰もが気に止めなかった、油断してた・・・だから・・・






「キャアアァァァァ!!」

「「「「「!!?」」」」」

その悲鳴に最初に気付いたのはひのめだった。
下ろしかけた腰を持ち上げ疾風のように駆けると・・・そこにいたのは不意を突かれ15体ほどの悪霊に囲まれた幸恵の姿。
両拳を握り固めすぐに霊力を込める、しかしわずかに悪霊の攻撃態勢のほうが早い!
間に合わず幸恵が悪霊の餌食になると思われた・・・・・・・・・・・・・・・・・瞬間っ!




────────幸恵の抜刀が煌いた。





                               その38(B)に続く







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