乱破S.S.+零式といっしょ。
投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/10/10)
「 ふぁあ〜っ、退屈ねえ〜。 どこかに面白いこと転がってないかしら? 」
「 ・・・・・・ 」
てくてくと住宅街の中を歩いているこの2人―――
一見フツーの女子大生に見えるこの女の名は【氷雅(ひょうが)】。
その隣にいる、忍びの服を着た2頭身の無口(?)な銀髪少年は【妖岩(ようがん)】。
こう見えても2人は姉弟であり、とある家系に使える乱破(らっぱ)と呼ばれる一族の末裔・・・忍者である。
そんな氷雅たちに、1件の民家の中からなにやら言い争う声が聞こえてきた。
《 千鶴(ちづる)どのー! たまの休暇ぐらいゴハンの量を増やしてほしいであります―――!! 》
「 ダーメ! 陸曹長さんに厳しく止められているもの。 晩ごはんまでガマンしなさい! 」
《 千鶴どのー! 》
ぴしゃん!
高校生の少女【赤城千鶴】は家の中に入り、サッシ戸を閉める。
すると残された大きな犬【ゼロ】は、けたたましく吠えだした後、背中からドリルを出して地面を掘るという転位行動にでた!
《《《 ギャン キャン ワオ〜ン! ちくしょー ちくしょー ちくしょお―――っ!! 》》》
がらがらっ
「 うるさいっ! 静かにしないと晩ごはんもあげないからね! 」 ぴしゃっ!
《 うっ・・・!(泣) 》
千鶴に一喝されたゼロは、かなりおちこんだ様子でうなだれていた。
その一部始終を、レンガの塀の向こうからこっそり見ていた氷雅と妖岩は・・・
わくわく♪
「 機械を内蔵したしゃべる犬・・・面白い・・・面白い生物ですわ! 」
「 ・・・・・・! 」
目をキラキラ輝かせた氷雅を不安そうに見上げる妖岩。 そして家の中では―――
「 ・・・まったく、ホンットにわがままだけは直らないんだからー。 」
千鶴はブツブツ文句を言いながら、台所でゼロのゴハンの準備をしていた。
なんだかんだ言ってゼロには甘い少女である。
( ・・・それにしてもずいぶん静かになったわねー。 )
そう思い、彼女がゼロのゴハンを持って再び庭へと出ようとした時―――
「 ゼロー ゴハン―――!? 」
《 −−−−−−−−! 》
「 はっ! 見つかった! 」
なんと見知らぬ女が、ゼロを縄でぐるぐる巻きにしていたのである!
ゼロは氷雅の、“忍法・失言の術”により声を出せなくなっていた!
犬・・・しかもサイボーグ犬に効果があるかなんてこの際問題ではない!
「 ちょっとあなた何してるのよ! 」
「 逃げるわよ妖岩! 煙玉っ! 」
ボンッ!
赤城家の庭いっぱいに灰色の煙が充満し、辺りは何も見えなくなる。
そして煙が晴れてきた頃には、見知らぬ女とゼロの姿は消えていた。
「 ごほっ ごほっ・・・ゼ、ゼロ!? 」
たたたたっ!
千鶴は急いで玄関に向かい、靴をはいて家から飛びだした。
するとそこに、彼女の家に来ようとしていた千鶴の彼氏、【中島】がやってきた。
「 あ、ちょーどよかった赤城、いまお前んちに――― 」
すたたたっ!
「 ごめん中島くん! いま急いでいるの! 」
笑顔で挨拶する中島に目もくれずすれ違う千鶴。 残された中島は―――
ひゅう〜〜〜っ
「 ・・・・・・赤城ー、おれたちってつきあってるんだよなー。(暗) 」
背中に哀愁をただよわせる中島をよそに、走り続ける千鶴―――
はあっ はあっ はあっ・・・
( 軍用サイボーグ犬のゼロがあっさり捕まるなんて、あの女いったい・・・! )
―――人目につきにくい高速道路の下に氷雅と妖岩、そしてゼロがいた。
ゼロは首から下を、完全にロープでぐるぐる巻きにされ、1辺1メートル以上ある柱に巻かれていた―――
《 −−−−−−−−!
(貴様―――っ! 犬佐である自分にこのような仕打ち! 懲罰ものだぞ―――!!) 》
ちゃきん!
《 !? 》
「 うふっ うふふふっ★ さあーて、何から調べてみましょうか? 」
メスや注射器などあやしげな道具を取りだし、なぜかナース服にコスチュームチェンジしている氷雅。
そのミニスカートの裾を、妖岩がくいくいっとひっぱった。
「 なによ妖岩、いま面白いとこなのに。 」
「 ――――――! 」
妖岩は何かをうったえかけていた。
「 え? かわいそう? いいのよ機械犬なんだから。
うふ・・・さーて、まずは頭からかっさばいてみましょうか♪ 」 ちゃきん★
《 −−−−−−−−!
(ちくしょー なんて結び方しているのでありますか!?
武器の開口部分を全て開かないよう結ばれている! 貴様いったい何者でありますか―――っ!?) 》
「 ムダよ。 私、縛るのがとおーってもお得意なんですの♪ 」
氷雅は怪しく笑っていた。
ぞくぞくっ♪
「 実を申しますと私―――犬を切るのは初めてなんですの。 ああ・・・楽しみですわ・・・! 」
《 −−−−−−−−!(こ・・・こいつ本気でアブないであります!) 》
さすがのゼロも顔を青くしている。
「 おほほほほ★ だ〜いじょ〜ぶ。 痛くしないから♪ 」
《 −−−−−−−−!(痛くないわけないのであります―――! 千鶴どの―――っ!!(泣)) 》
「 ・・・・・・!(どきどきby妖岩) 」
そして氷雅がゼロの頭にメスを入れようとしたその時―――
「 やめなさい! 」
氷雅が振り返ると、そこにはゼロの飼い主 千鶴が息をきらして立っていた。
「 あなた何故ここが!? 」
《 −−−−−−−−!(千鶴どの―――っ!!(感涙)) 》
千鶴はゲー●ボーイのような機械を氷雅に見せつけた。
はあっ はあっ はあっ・・・
「 ゼロには発信機がついているのよ! それよりあなた! うちのゼロになにするつもりなのよ! 」
「 あら? この犬は私が拾ってさしあげたのよ。 何をしようと私の自由。 」
「 人のうちから勝手に連れだしてなにが拾ってあげたよ! ゼロは返してもらうわ! 」
つかつかとゼロと氷雅のほうに近づく千鶴。
「 あらあら、私の楽しいひとときを邪魔するおつもり?
それなら・・・<バッ!> おいでませ! 都市下水名物、白いハチュウ類!! 」
ボゴォオッ!
≪≪ ゴギャァアア―――ッ!!! ≫≫ 「 !? 」
氷雅と千鶴の間にあるマンホールのフタをふっとばして現れたのは、なんと体長3メートルを超える白いワニ!
「 前にその子、下水道に捨てられてましてね〜 よかったらその子と交換しましょ♪
いざという時のために飼いならしておきましたから。 」
「 交換できるか――― いざってなに―――!?(泣) 」
≪≪ ホァギャアア―――ッ!!! ≫≫
千鶴に向かい大きな口を開ける白ワニ! 千鶴の顔は青ざめ、恐怖で立ちすくんでいた。
一応念のために説明しておくが、彼女は普通の女子高生!
そして白ワニは普通の凶暴ワニである! そして白ワニが千鶴に近づこうとした時―――
ヒュ〜〜〜〜〜 ズド―――――――――ン!!!!!
突然横から飛んできたミサイルにより、白ワニは爆風で吹っ飛ばされた!
白ワニはひっくり返って気絶。
氷雅が振り返ると、柱に縛りつけていたはずのゼロが・・・いない!?
《 こっちであります! 》
ゼロは反対側にいた! そのそばにいたのは妖岩。
どうやらこの少年がゼロのロープをほどき、失言の術も解除していたようだ!
「 なんてことするの! せっかく捕まえましたのに! 」
「 ――――――! 」
「 え? やっぱりあの娘に返してあげよう? 」
「 ――――――! 」
「 なに? 動物をいじめるのはかわいそうだ? 」
「 ・・・よくあれで会話が通じてるわねー。(汗) 」
しゃべっているようで聞こえない妖岩の言葉は、千鶴やゼロにはわからなかった。
《 貴様―――っ!! 》
ゼロは氷雅に向かい突然叫んだ。
《 自分を拉致解剖しようとしただけでなく、千鶴どのにまで危険な目に・・・
赤城家の番犬として、貴様だけは絶対に許さないであります!! 》
ジャキンッ!
背中から2つのドリルを回転させる!
「 ・・・・・・ふう。 」
ぽいっ
氷雅はメスと注射器を放リ投げた。 そしてにこやかな笑顔で―――
「 やーねえ〜、冗談に決まってるじゃない♪ 」
くわっ!
《 絶対ウソであります―――!! 》
力の限り吠えるゼロ。
「 ま、今日の所はこれぐらいにしといてあげましょ。
それではごきげんよ〜〜〜。 おーっほほほほほほ・・・ 」
ヒュオオオ――――――−−ッ
氷雅の周囲に風が起こり、木の葉(黒バラでも可)が舞う。
千鶴が腕でガードし、目をつぶった間に、氷雅と妖岩の姿はいなくなっていた。
「 き、消えた・・・忍者!?(汗) 」
《 どこ行った敵性女子ナース! 》
辺りを見回すゼロと千鶴。
「 まずいわねー、ゼロの正体知られちゃったわよ。 どーするのよ。 」
《 どーすると言われましても・・・(汗) 》
ヒュン!
「 心配いらないわ。 このような楽しいもの、他人に話せるわけありませんわ♪ 」
「 !? 」
ヒュン!
千鶴の背後に瞬時に現れ、瞬時に消える氷雅。
驚いた千鶴が振り返った時には、氷雅の姿はすでになかった。
がるるるるるっ!
《 まったく、おかしな術を使う女であります! なんて非常識な奴でありますか! 》
「 ・・・あんたも充分非常識よ。(汗) 」
・・・そして家へと帰る千鶴とゼロ。 その姿を氷雅と妖岩は、高速道路の上から眺めていた―――
「 フフフッ お楽しみはこれからよ♪ 」
「 ・・・・・・。 」
ヒュン!
消える氷雅と妖岩。
乱破S.S.の氷雅、零式といっしょ。のゼロ。 1人と1匹の再対決の日は・・・・・・近い。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
祝☆椎名作品短編集 発売決定記念!
世にも珍しき、椎名作品短編同士のクロスオーバーものでした。
その前に乱破S.S.を知らない人多いかも・・・(汗) 氷雅ならゼロに興味を持ちそうですし、
最も連載化が難しいと思われるのが『零式』なので、せめてここで彼らを登場させたいと思ったわけなんですよ〜。
ちょこっと見て、ちょこっと笑ってくれたら幸いです。
今までの
コメント:
- 相変わらずヴェージニアさんの短編は面白いですね♪
この二つのクロスオーバーも全然違和感ありません(笑)
にしても・・・
興味を持ったらからって、他所様のペットさっらたらあかんやろぉぉ!氷雅さん!(笑)
そして、何気に今回も『恋人の定義』に揺れる中島君がいい味出してました(^^) (ユタ)
- ぉ、お楽しみはこれからなのですか!? 対決(投稿)の日は近いのですかっっ!?
ってゆーか、既に十二分にお楽しませていただきましたが!!?(謎文法)
いかにも氷雅さんらしい無茶な行動が笑えました。本来ボケ担当であるはずのゼロがつっこみ役に回っているあたりに氷雅さんの恐ろしさを感じます(爆)
「犬を切るのは初めてですわ」とか「都市下水名物」とか細部に渡る原作のパロディにヴァージニアさんの愛を感じます。
特に、旗色が悪くなった時の氷雅さんの逃げっぷりが凄く良かったです。
椎名先生の新しい短編集、楽しみですね〜。 (斑駒)
- 氷雅さんのアブナさがよく表れていてよかったと思います。
私は諸事情で「零式」の方を読めなかったのでそっちの方がわからないのです。
「乱破」は好きですよ。『百貨店』はワイド版で持ってます。 (U. Woodfield)
- 新旧椎名短編コラボ。
とっても原作ちっくな展開が読んでて嬉しい作品でした。
氷雅さんが他のキャラ食ってたっぽい。w
ゼロも良い味あったけど、やっぱ彼女には負けるかな?
とても面白かったです。 (KAZ23)
- ゼロがあ・・・ゼロがああ・・・・!一ゼロ好きとして堪らない一話でした♪
こんにちは〜 えび団子です〜
さてと、氷雅さんとゼロが空前絶後の死闘を演じてますねw
他人の家からさも普通のように拾ったと言い張る氷雅さん、最初は反対派だった妖岩もいざ『切る』?ってところでドキドキしてるのが笑いを誘いました(^^)
失言の術とかも原作に沿ってましたし、なーす服にコスチュームチェンジした氷雅さんを拝めたことに感無量ですm(__)m白いワニと対戦する時や言い争いしている時等普通にあたりまえのことを(漫画とかでギャグで済ませれる部分)詳しく追求して書いてあったところに大爆笑しました♪最後となりましたが、中島くんがなんとも言えぬ哀愁がGOODです/(><)投稿おつかれさまです〜 (えび団子)
- いい出来ですよねぇ…いい腕持ってますねー。 (MAGIふぁ)
- ゼロはやっぱり役立たずだし、中島はやっぱり相手にされないし、妖岩はやっぱり無口だし(笑)。
駄目駄目な男性陣に代わって奮闘するも、千鶴では氷雅の相手をするにはやや力不足かしら。色んな意味で。
ゼロと千鶴は得体の知れない相手とどう闘うのか。再対決の日が楽しみです。(←プレッシャー)
投稿お疲れ様でした。
追記:やはり彼女のキャラクターはアクが強いですね。『零式』の登場人物が霞んでしまう程に。(^^; (dry)
- コメント返しかなり遅くなってしまいました!(私としては異例の遅さですね・・・(汗))
◇ユタさんへ
違和感なくてよかったです〜。
今後こちらのほうでは短編形式でちょこちょこ書きたいと思いますので、今後もよろしくお願いしますね!
◇斑駒さんへ
お楽しみはこれからです!(こうして自分を追い込んでいくし・・・)
『愛』を感じていただけて嬉しいです。 今後も『愛』を注がせていただきます!
私も短編集すっごく楽しみなんですよー! (ヴァージニア)
- ◇U. Woodfieldさんへ
新しい短編集のほうでは、どうやら『零式といっしょ。』が加わりそうですので、是非ともオススメします!
8/2、8/6にも私は『零式』を投稿してますので、よろしければそちらのほうも見てやっていただけると嬉しいです。
ネタバレありますので(既にここでネタバレしてるか・・・(汗))そのあたりご注意くださいね!
◇KAZ23さんへ
はじめましてKAZ23さん、この展開嬉しく感じていただけてこちらも嬉しいです♪
やっぱり氷雅の存在感強いですよね〜どうしても他のキャラ食ってしまうのも仕方ないかも。
コメントありがとうございました。 (ヴァージニア)
- ◇えび団子さんへ
氷雅やゼロもいいですが、私の一押しは中島君だったり。 なのに私が書くとどうしても彼は不幸に・・・(汗)
白ワニのことなど知らない人多いと思いまして、色々くわしく書かせて頂きました。
楽しんでいただけたようでよかったです♪
◇MAGIふぁへ
私、うまくなりましたか? うまくなりましたよね?
私もようやく人並みの文章力を身につけたようです。
今後はこんなお話を書いていきたいと思いますので、次からもよろしくお願いしますね! (ヴァージニア)
- ◇dryさんへ
普通の女子高生千鶴に、氷雅の相手はやっぱり無謀です。(笑)
再対決の日は近いですが、バトルになるかどうかは不明です。
楽しいもの書きますから、プレッシャーはあまりかけないでくださいね! (ヴァージニア)
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