ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―5後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/ 9)

<前半からの続き>




「……ま、しゃあねぇ。」

これくらいのアクシデントはあると思ってたよ、ははは…
俺には自分の個人事務所を立ち上げるって目標が出来た。しかも2ヶ月……正確にはあと1ヶ月半で立ち上げないといけない。
そうなってくると、最初に考えてたみたいに悠長な事なんて言ってられないから、俺は手当たり次第に仕事をした。
自分に回して貰える仕事の中でも一番難易度の高い仕事を選び、結構無茶なペースでこなす。
そんなのを続けてれば、何処かで不測の事態が起こるんじゃねえかな?って思って当然だ。

「その不測の事態が……ま、この程度で…」

この程度?

「………………」

………………

「助けられんかったなぁ……」

クソッ!!
これぐらいの事でこんなに揺れるなよ。俺!!
皆、命掛けて仕事してんだぞ!!結果、命落とす奴だっているだろうがっ!!
自惚れんな俺っ!!
俺の目に入る命を、俺が全部助けられるわけねーだろがっ?!
クソッ!!

「………分かってんだよ、そんな事くれー…」

俺はあの除霊で命を落とした奴ら……上半身と下半身が生き別れになった奴と、顔がポッカリと無くなっちまった奴の事を思い出す。
2人とも今回初めて会った奴らだ。2人とも自信家で、どっちかって言うとあんまり好きなタイプじゃ無かった。
それでも俺達は、あの時は仲間だった。

「良くある事さ、こんな事は……」

そう。こんな事は良くある事だ。生きてる奴はいつか死ぬ。そうさ、そんな事……

「………アノ時から肝に銘じてる…」

………………

―― パンッ! ――

「はい!ココまでだっ!考えんのもうお終いっ!!それよりこれからどうすっかだろ?」

俺は無理やり自分に言い聞かせ、沈みそうな気持ちを切り替える。叩いた頬がちと痛い。
これからまず、俺が1番にすること、しなければいけない事。
それはそう。1つしか無い!

「看護婦さん呼ぼうっ♪うんうん♪白衣の天使は最高じゃ〜♪」

―― ピーッ ――

俺はベッドの横に備え付けてあるボタンをプッシュ!

「どんな娘かな〜♪可愛い娘やとええな〜♪」

―― ワクワク、ワクワク ――

ふふ〜ん♪ふふふ〜ん♪

―― ガチャッ! ――

「きたーっ!!看護っ婦すわぁ〜〜〜んっ♪」
「気が付かれたみたいですね、横島さん?」
「こんなこったろーと思ったよドチクショーーーっ!!!」

扉を開けて入ってきた看護婦さんは、うちのオカンよりちょっと年上くらいのでっぷりとした肝っ玉母さん風味な人でした。

「婦長の笹倉と言います。宜しくお願いしますね。それでどうですか、身体の調子は?」
「はいはい、いたってりょーこーでーす。それより今はこのポッカリと開いた心の傷のほうが重症でーす。」

看護婦さん!美人看護婦さんっ!!俺の白衣の天使―っ!!!

「どうやら、その様子だと身体のほうは大丈夫みたいですね?精密検査の結果も、特に問題も無かったそうですし……早ければ明日にでも退院できると思いますよ。」
「え?ああ、そりゃあどうも。ええと、それで俺…どう言った経緯でココにいるんです?」

ま、美人看護婦にアレコレ世話して貰う野望も終わった事だ。とにかく少しでも状況確認しとくか。

「そうですね。横島さんは除霊作業が終わった後で気を失って倒れていたそうですよ。その場にいた他のGSの方々と一緒にこちらに運ばれてきたんです。目立った外傷も無かったので、単純な疲労だろうという事で……一応、精密検査をしても問題が出なかったですし、気が付かれるまでこちらで休んでもらっていたんです。」
「ああ、それはそれは…お手数をお掛けしました。」

ふむ。予想通り。

「それでですね、横島さんが起きたら会いたいと仰られている方が居まして…」
「え?どういう事です?誰ですか?」

俺に会いたい奴なんて殆どいない。いったい誰だ?

「なんでもGS協会のほうから話が回ってきたみたいで……私も詳しい事はちょっと、申し訳ありません。」
「あ、いえ!お構いなく!そんな、謝られたりすると恐縮ですんで!」

ふむ。協会からって事は……
今回の除霊についてだろうな。他に考えられる理由もねーし。

「あ、それで俺がどうすれば良いのかってのは聞いてます?」
「あ、はい。20:00位にこちらに見えられるそうです。その時に横島さんがまだ回復していないようだったら次の機会って事だったんですけど。」

今はえ〜と……あった。19:40か。じゃあ結構いいタイミングだったんだな。
ふむ。なんだろね、いったい?

「しかしそれにしても……」
「あら?どうかされました?」

そう。やはりこれだけは……

「せっかく入院しとるっちゅうに、なんで…婦長さんが来てくれんでも…あ、いや、婦長さんが悪いと言っとる訳じゃあなくてですね?男のロマンっちゅーか…やっぱり若い看護婦さんに手取り足取り世話して欲しかったな〜…なんて思ったりなんかしちゃったりして、ハハハ。」
「あら?そんな事考えちゃいけませんよ横島さん。」
「ちょっとくらいえーやないですかーっ?!これは男のサガなんじゃーっ!!」

女には分からん世界なんやーーーっ!!!

「クスッ!そうじゃ無いですよ、横島さん。」
「え?」

そんな俺の様子を見て、婦長さんがおかしなモノを見るように微笑んで説明をはじめた。

「横島さんってGSでしょう?しかもこんなにお若くて見た目もそれなりですもの。看護婦達の間でも結構話題になっているんですよ?」
「は、なにそれ?」
「横島さんと良い仲になったら玉の輿かも…って、誰が世話するのかで随分揉めたんです。結局仕事にならないから私が来ましたけどね。」

ははははは、なんだソレ?

「婦長さんもお世辞が上手いんだから〜…もう、俺本気にしちゃう所だったよ〜……」
「だから、辺に気のあるそぶりなんか見せたら大変な事になっちゃうんですから、十分注意してくださいね?」

おお、なるほど。こうやって入院患者が看護婦に手を出すのを防いでいる訳か。
やるね。さすが婦長!伊達に長年看護婦やってないね!

「はははは!分かりましたよ。大人しくしてますって。」
「はい、お願いしますね……と、じゃあ私はこれで失礼します。トイレは部屋を出て右に行けば有りますから、20:00にはきちんと部屋に居て下さいね?」
「はいは〜い。了解で〜す。」

―― バタン ――

そう言い残して、婦長さんは部屋を出て行った。後に残ったのは俺だけ。
あと10分ちょっとか……
ま、このまま待ってますかね。

………………










―― コンコン ――

20:00ジャスト、部屋のドアがノックされる音が響く。

「あ、どうぞ!」

俺はドアの外の人物に向かって声を掛けた。

―― ガチャッ ――

「失礼します〜」

なんだか間延びした声だ。あれ?なんだかこの声……何処かで聞いた事無かったっけ?

「こんにちは〜、はじめまして〜」
「!?」

扉を開けて入ってきたのはなんとも予想外の人物。この場合、予想外って事はつまり俺の知っている人物だったと言う事である。

「貴方が横島忠夫さんですね〜?」

さて、誰かって?

「わたくし〜」

誰だと思う?

「六道家当主、六道 冥香(ろくどう めいか)と申します〜」

日本GS界に大きな影響力を持つ六道家の当主にして、六道冥子ちゃんの母親…
六道理事長その人でした。

「なんてこったい!?」
「?」

ある意味、エミさん以上のインパクト!
この人もいたんか!?いや!この人にも出会ってしまうなんてっ?!!いやいやいやいや!!!この人が俺に用事!!!?
うあああああああああああああっ!!!!
俺は、俺は、俺は……

「俺はいったいどうなるっ!!?」

そんな俺の怯えや震え、悩み、葛藤を全て飲み込むような…

―― ニコニコ ――

六道理事長のやけに眩しい笑顔が印象的だった。
俺の、明日はどっちだろう?



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