不思議の国の横島 ―5前半―
投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/ 9)
ゴーストスイーパー……それは常に命の危険に晒される、死と隣り合わせの過酷な職業。
殺るか殺られるか。
ゾッとしない文句がそのままの意味で使用される世界。
そんな仕事を俺は選び、そんな世界に俺はいる。
きっかけは些細な事だったかもしれない。
だが、今では抱えてしまったものが大きすぎて、おいそれと辞める訳にはいかなくなっちまった。
それは、この不思議な世界でも変わる事は無く…
俺の隣には常に死が付きまとう。
俺の名前は横島忠夫…
ゴーストスイーパー横島忠夫だ。
………………
「往生せぇやーーーーーっ!!!」
「ぎゅるるぁあああああっっ?!!」
―― ドゴーン! ――
「…はぁ、はぁ………はぁ、こいつで最後か?」
俺はそこで、ようやく肩の力を抜いた。
「はぁ〜…」
そして1つ、大きく息を吐く。
「流石にしんどかった〜…」
今回の除霊は、それほど強くない悪霊が相手ではあったが、問題はその数だった。払っても払っても次から次へと集まってきやがる。
なんで1人では無理って言われたのかは、除霊が始まってから嫌って程分かった。
ココはいわゆる霊の吹き溜まり。地脈に沿って、四方八方から霊が集まってくるポイント。
「分かっちゃいたんだけどなぁ…」
今回の仕事は難易度もそれなりに高い。本来なら今の俺には回ってこないはずの仕事だ。それでも俺は今回の仕事に参加している。
そう。参加しているのだ。
つまり、単独じゃ無いって事。
そこそこ名のあるGSを中心にした、7人のGSが集まって行われた共同作戦だったのである。共同作戦なんて言っても、俺は頭数だけの「その他」だけどな。
とは言え、報酬の大きさがなかなかに魅力的で、この仕事に参加させてもらった訳だ。
作戦はこう。
5人の「その他」GSが霊団を引き付けている間に、今回の作戦のリーダーである導師とそのパートナー(チャイナのスリットがなかなか魅力的なお姉ちゃんじゃー!)が地脈の流れをちょこっと操作して、この場所に溜まっていた霊団を逃がしてやろうって作戦。
「…だっちゅうにあの、クソ導師がーーーっ!!」
霊団の中に、予想よりもちぃ〜っと強力な奴が一匹混ざっていた。でもって、そいつは前衛である俺達ではなく、登場するなり後ろに居た導師達を襲ったのである。
どうやら、その程度の知恵はある奴だったらしい。
ま、それは良いんだが…
そいつに、導師のパートナーがやられちまって…
「やられたって言っても、命に別状は無い程度だったろうに…」
霊団の体当たりを食らって吹っ飛び、腹から血を流してぐったりしてる……が、それでも息はしている。
それでもその姿に、パニック。一気に動転しちまって…
「ちっ!」
導師は逃げ出しちまった。
ちくしょー!!ムカつくぞ、コラッ!!
悲惨だったのは残された俺達って訳。霊団の中央に、何の援護も無く取り残されちまったい。
とにかく、後から後からわんさか集まって来ちまう。こっちの体力、霊力は当然無制限って訳にもいかねぇし…
「もう少しで、俺も洒落んならん状態になったかも知れん。」
なんとか隙を見て霊団突破して、文珠で地脈の流れを変えた。そうすれば流されるだけの霊団は別の場所に流されて行っちまうわけさ。残るのは少しでも留まろうとする意思のある悪霊だけ。
俺は導師のパートナーを襲った悪霊リーダー(仮称)をアッサリと片付け(実際、その程度の悪霊だ)なんとか残りの奴らも除霊する事に成功したのだった。
「あの程度の奴にビビッてんじゃねーっての!」
俺がこれだけ怒っているのには、導師が逃げた事の他にも訳が有ったりする。
俺はようやく霊団が居なくなって見渡せるようになった周囲を見回す…
目に入るのはぐったりと倒れこみ、ピクリとも動かない人間。
「………………ちっ!」
……2人死んだ。
俺も、人が死ぬ所を見るのは初めてじゃない。この商売をやっている以上、こんな結末は常に予想して然るべき物だ。
―― 俺だっていつか死ぬ ――
それでもっ!
目の前で人が死ぬってのはすげぇやり切れねぇよ……
「アノ導師…次に会う機会があったらぜってーぶん殴る!」
ま、そんな機会が有るかは分からんがな。
GSってのは個人の力をベースにした、完全な信用商売である。仕事に失敗するってのはそれだけでマイナス要因。特に今回は途中で投げ出しての逃亡だ。
「GSとしちゃあ、もう終わったなアイツ…」
同情の余地もねーけどさ。
「治」「癒」
―― パァァァッ ――
俺は、既に事切れている(一目でそれと分かる)2人を除く、他の重傷者3人に近づくと、まだ息があることを確認してから「治癒」の文珠を使う。俺以外で、最後まで意識を保っていられた奴は居ないみたいだ。
文珠を使う所、見られなくて済むな。
文珠は柔らかな光を放ち、3人の傷口を塞いでいく。
「あ〜…しんど。こりゃあ今日はもう何も出来んな…」
体中ビキビキで、霊力も殆どゼロ。
「あ、なんだか意識がヤバイ…」
集中力が切れたからだろうか?一気に疲労が俺を襲ってきて
「あ〜…ねみ〜……」
俺は、意識を手放した。
………………
「……あれ、ココどこ?」
目を覚ました俺が一番最初に見たものは、真っ白い天井だった。
「……病院?」
俺は………ああ、そうか!
俺、気絶しちまったのか。
ようやくぼんやりとしていた思考が纏まって来る。俺は除霊で力を使い果たして、気絶しちまったんだ。
「で、ココは病室みてーだし…」
俺はグルリと辺りを見回す。白い壁、白い天井、白いカーテンに白い布団と、白を基調とした色使いの部屋に、花瓶に刺さった花やら14インチくらいのテレビ…
まあ、状況から考えて病院の一室って所だろう。
「しかし…病院の世話になる程じゃあ無かったと思うんだが?」
基本的には体力と霊力を使い果たしたって程度で、特に大きな怪我も無かったはず…
ん〜?
ま、気ぃ失ってぶっ倒れてたんだし、一応ほっとく訳にもいかんかったって所かな?
「はぁ〜…しっかし、今回は散々や〜……」
これなら、もっと難易度の低い1人で出来る仕事を倍こなした方が実績も金も溜まっただろうに。
それもこれも、あのクソ導師がぁ〜!!
<後半に続く>
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- 後半に続きます。
前半は、横島が頑張っている話です。 (KAZ23)
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