ザ・グレート・展開予測ショー

時をかける重い3


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/10/ 9)

「もう終わったのよ、あなたは!!あなたは1993年の6月に、温泉旅館へ行ったときにあなたの恋人と一緒に心中しているのよ」
 派手な服を着た女性の手にしている札が、光るようにして燃え広がり、壁のようなものを作り出す。
「うそよ。彼がそんなことをするはずがないわ。手の込んだ悪趣味なうそはやめてよ」
 女性の霊は泣き叫んだ。
 うそだ、自分が死んだなど、彼と心中なんて・・・
「うそじゃないのよ・・・だって、わたしがあなたの恋人を・・・」
 その一言に、女の霊が反応する。



 わたしはこの女が急ににくくなった。
『わたしがあなたの恋人を・・・』
 恋人を何よ?たらしこんだの?彼はこんな女と浮気をしていたっての?
 ゆるさない、ぜったいに。

『許さないんだから』



「ここまで・・・か」
 派手な女性は、その瞳を悲しそうにつぶらせる。
 せめて説得で成仏させることができればよかったのに・・・
 現実はいつも残酷だ・・・
 だから・・・

 彼女はどこから取り出したのか、神通棍を取り出し、霊気をこめる。
 そして一言・・・

『極楽に――――』




『――――いこう』

 彼がわたしの目の前にいる。
 手を差し伸べてくれる。
 だからわたしはその手を握った。
 これからはずっと一緒よ?
 彼はうれしいような困ったような、それでいていたずらっぽい笑みを浮かべた。
 わたしも笑みを返す。
 これからはずっと一緒だ・・・




『あああああぁぁぁぁ』
 女性が神通棍を激しく霊へと叩きつける様が見えた。
 問答無用、ありとあらゆる言い分、権利、その他さまざまな事柄を激しく無視しつつ、それでいて己の意志を貫く構え。
「殿下、これが人の上に立つということです」
 それに対し、声が返ってくる。
「どこがどういうふうに『人の上に立つということ』なのじゃ?」
 どこか憐憫すら漂わせ、少女は笑みを浮かべる。
「人の上に立つということは、その命一つ一つがすでに自分の大切な部下たちの権利や自由というものを束縛してしまいます。いかに相手が霊でも、人の命を奪うということは、相手の生きることができる自由というものを奪うことを憶えておいてください」
 目の前の少女のその表情に、少年は何も言うことができなかった。




 女性は棍を叩きつけられて消えていった。
 だが、その表情は晴れやかなものであった。
 消えていくことによる自由への表情か。あるいはそれ以外の何かが・・・
 まさか叩かれることにより快感を覚えるあれなものではないだろう。
「イヤー、今回も結構すごい戦いでしたねー」
 頭をぽりぽりとかきながら、彼女の弟子が現れる。
「あんたわぁ、自分も『ハンズオブナンタラーン』とか使えるようになったんだから、ちったぁ手伝わんかい」
 どげしどげし・・・とまぁ、ここはいつものように焼きを入れておく。
 しかしその女性の表情は、どこかしら安堵のようなもので染まっていた。
「いだだだだぁ、そこわぁ堪忍やぁー。ああああぁ♡」
 ぽきっと。
 まぁそれはそれとして・・・
「ところで、『わたしはあなたの恋人を・・・』どうしたんですか?まさかよこどり・・・」
 と、よこから白い着物を着た少女が尋ねる。
「あぁ、それね・・・」
 と、何かに耽込むような表情で派手な女性は答える。
「前に温泉旅館で霊が出るって依頼があったのよ。妙に成仏しにくくてね。結局逃げちゃったわけ。だからどこか出会ったらとっちめてやるつもりだったのよ・・・それだけ・・・」
 と。
 この女性はどこか最後の一線では優しい。だから多分逃げられたわけではないんだろう。

 ・・・おそらくは・・・・




「うむ、人の上に立ちことは難しいことだとわかったが、それよりも大切なこともわかったぞ」
 と、少年は青年を指差し・・・
「部下はもっと優秀なものを選ぶべきだ」
「何で俺が」
 とかなんとか。
 とまぁ2人してなにやら騒いでいるのを尻目に、派手な美女は刑事の一人へと近づいていく。
「はい、では約束の報酬のほうを♡」
 彼は、泣きながら5千万と書かれた小切手を渡した。しかも真っ赤な涙を・・・
 
 階段を駆け上がる警官や、6階の窓を観察していた刑事たちがそれを見たわけで、今回はこの目の前にいる女に即興で依頼をしたわけだが。
 ・・・相手が悪かったな、この女に関われば尻の毛まで毟り取られるぞ・・・というやつだ。
 というわけで、この場に駆けつけた警察全員のポケットや、銀行などからお金を足して、かさばるから小切手にしてきたわけだが・・・
 こんな女を生かしていいのか?



「よし、話は終わったみたいだな。ではデジャヴーランドへ行くのじゃ」
「ああ、わたしは殿下を連れ戻さなければ」
「まぁまぁ。小竜姫さま。わたしたちがお守りしますので・・・」
「ほら横島君。行くわよ」
「ういーーす」
 とかなんとか、まぁ。4人とそれについて行く薄っすらとしたもうひとつの影は、夕日の中へと沈んでいくのであった。

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