時をかける思い2
投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/10/ 9)
「それはあなたがもう死んでいるからよ」
深い憐憫を含んだ声で言ったのは、目の前の女性であった。
彼女は破魔札を構え、しかしそれが様になっているのは、それを生業とし、長年付き合ったなかであるからだろう。
美しい、派手な服に身を包み、同じ女性ですら嫉妬を感じる。
だが、そんなことはいまやどうでもいい。
目の前の女性から発せられた一言は、そんなことなど意味を持たせないほどに動揺を誘う。
霊体である彼女に。
「そ・・・んなことあるわけないでしょ。わたしは、わたしは生きているわ」
と、自分の胸を手で触る。
この感触、あったかい。わたしは・・・
『生きている』
彼女は確信するのであった。
「だあああぁぁぁ、びがびざんん、速すぎっスー」
電気の通っていないため、階段をひたすら上るしかないのだが、隣の青年が泣き言を言う。
『が、がんばってくださいね。横島さん』
脇から哀愁を漂わせた声が聞こえる。
「ううう、ありがとう。おキヌちゃんだけだよ、そんなことを言ってくれるのは・・・そもそもあの女王様ときたらぶつぶつ・・・・・・」
と、白い着物を着た幽霊の少女と青年がなにやら言い合っているのを尻目に、二つの角のようなものを身につけた少女と少年もまた、何かを言う。
「殿下。これから起こりうることを決して忘れないで、目に焼き付けてください。人の上に立つということが、どういうことなのかを・・・」
少女の台詞に、少年が返す。
「どういう意味じゃ、小竜姫?」
だが、少女は悲しそうに首をフルフルと振ると、黙り込んでしまった。
ようは、観ればわかるということだ。
後ろで何かを言い合っていた2人も、場の雰囲気に飲まれてか、すっかりと黙り込む。
4人はただ黙々と階段を上っていった。
そして、問題の階である6階への扉を開けたとき、彼らは目にしてしまった。
「あなたが死んでいる証拠を見せてあげましょうか?」
目の前の女が、ゆっくりと言い聞かせるように語り掛ける。
「いいわよ。見せてもらおうじゃないのよ」
わたしも、挑むように返した。
わたしが死んでいる?ばかばかしい。そんなわけあるはずないじゃない。
「じゃぁきくけど、いま西暦何年だと思う?」
と、あの女が尋ねる。
はっ、ばかばかしい、そんなこと簡単じゃない。
「1996年に決まってるでしょ」
とわたしが言うと、あの女はさらに悲しみを深めて返してきた。
「違うのよ・・・今は1999年。あなたのときは3年間止まっていたのよ・・・いえ、正確には3年前に止まったというべきね・・・」
と、意味のわからないことを言った。
はぁ、何よこの女。意味のわからないことを言って。ちょっと気がおかしいんじゃぁ・・・・・・
『1999 3月 神奈川県で乾燥イカによる・・・・・・』
女が携帯できるラジオを持ち上げる。
そして続ける。
「これは大分前の事件なんだけど・・・今はまぁ事故処理とか何とかでラジオでやってるんだけど・・・何なら事件の概要とか教えてあげましょうか?」
わたしは・・・私の時は音を立てて崩れ落ちた。
「私はぁぁぁ、認めないぃぃぃ」
女の霊は、顔を凄まじくゆがめた。
今まで何人もの霊能力者が彼女を説得してきた。
だが、彼女はその怨念ともいえるもののためであろうか、非常に強い力を持っていた。
先程ガラスを突き破ってふってきたあれも、説得しに来た霊能力者の一人であった。
説得しに来るごとに人を殺し、また一人自分の世界へ戻る。
まるでそれでは、それでは・・・
「あたしと同じじゃぁないのよ!!」
彼女は大声を上げて叫んだ。
「あたしも、ついて行ってもいいかな?」
これが彼女の精一杯の告白だった。
たった10歳の小娘に何ができる?何を望む?
初恋ともいうべき人への、ほんの小さな告白・・・
でも彼は、後ろを振り向いてしまった。ついていくことができなかった。
だから彼女は・・・・・・グレた。
人と接することをためらい、ただ望むべき人ののぞむべき言葉、姿だけを待つだけの存在。
この霊と彼女は同じだ。
だからこそ・・・・・・
彼女は悲しみさえその表情には写って異た。
「まるで僕と同じじゃぁないですかー」
ふってはまた違う女の子に声をかけ、またふられてはまた違う声をかけ、その必死とでもいえる何かの感情の元に、ひたすら同じ行為を繰り返す・・・
まるで目の前で自分の師匠と対峙している女性の霊は、自分と同じだった・・・
その周りで事の真相を推し量ろうとしていた彼の仲間たちは、絶対零度クラスの瞳で彼を見つめていた・・・
今までの
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