ザ・グレート・展開予測ショー

橋姫伝説 最終話


投稿者名:弥三郎
投稿日時:(03/10/ 9)

翌日、京都の南禅寺。
美智恵は主だったメンバーをかき集めて戦勝パーティーを開くのである。
パーティーといっても豆腐で和やかに食するという控えめなもの。いくらかは派手にならないようにと抑えていた。


が。


「おい雪之丞!!それは俺の豆腐だ!!」
「んな知った事か。早いもん勝ちだ!」
「冥子の豆腐がない〜」
「ピートぉ〜、あーん♪」
「い、いや、自分で食べられます……」
「おお、久しぶりの食事じゃ!!」
「カオス、いつの間に……」
「んん?巨大結界の製作でわしは現場におったぞ、のうマリア?」
「イエス・その通りです・ミス美神。」

などと完全に宴会状態。
このメンバーで穏やかに食事会は開けそうもないと美智恵はあきらめたのであった。

「にぎやかですね」
「ええ、せっかくの食事会なのに騒がしくてすみません、クリスさん。」
「いえいえ、こういうのもいいですよ。しかし、箸がうまく使えないもので……」

そういうのでクリスの受け皿を見ると豆腐がまったく原形をとどめていなかった。

「あらら、そうなのでしたらスプーンを遣してくれる様に女将さんに言うところでしたのに。」

2人で笑っているところに神父が入ってきた。

「彦根の件、終わったみたいだよ。」
「そうでしたか。どういう子供ですか?」
「特異な霊能力を持った子供だそうだ。孤児院でも盥回しされていたらしくてね。家庭ではいい父親みたいだったよ。」

美智恵は太秦が死ぬときの顔を思い出していた。美智恵の答えを聞いて安心しきった顔。紛れもなく父親の顔であった。

「そう。子供さんからは親の仇と言われそうね。それに、どうしてこんな事件を……」
「うーん、彼なりの愛国心じゃないかな。今の日本が心配だから。しかし、周りにいた人間が悪すぎたんだよ。」

そこに西条が加わる。

「神父の言葉はあながち嘘じゃありませんね。太秦の部下はほとんどが利益を優先したゴロツキどもでしたよ。
 横島君が捕まえた鳥居なんてその代表例ですよ。太秦を扇動したのは彼のようです。」
「主犯が彼だったのね。そこは捜査で詰めて法廷で起訴してちょうだい。死んだ太秦が浮かばれないわ。」
「了解しました。さて、一通り仕事は終わったところですし私もいただきま……って豆腐がない?!」

大きな笑い声が聞こえるのでそっちをむくと横島がいた。

「はっはっはっ、早い者勝ちさ。西条だったらいつでも食えるだろ、このぶるじょわじー♪」
「ああ、ここの豆腐はものすごくうまいんだぞ!しかもめったに食べられない……。このぉ、ジャスティスのさびになれ!」

「はぁ、頭が痛い……」

美智恵はこの戦いの疲れがどっと出たような気分であった。


どたばたした食事会が終わって、横島はルシオラが入院している病院に向かった。

「すいません、美神ルシオラが入院しているはずですが……」

ナースステーションで部屋を聞くと男の看護士が部屋まで案内してくれた。
部屋に入るとルシオラが退院の準備をしていた。

「よう、ルシオラ。」
「あ、ヨコシマ。」

ギブスのついた腕をかばいつつ振り向いたルシオラは少しやつれている様であった。

「ヨコシマ、怒ってる?」

ルシオラはおどおどしながら聞いた。
作戦開始前には絶対無理するなと言われていたのに大怪我を負ってしまったから。
自分にとって一番大切なヨコシマとの約束を破ってしまった。その罪悪感からだった。

「いいや、怒っていないさ。ただ、ルシオラが無事かどうか心配だった。」

そう言うと横島はルシオラをやさしく、しかし絶対離さないとでも言うかのように抱きしめた。

「俺は決めたんだ。お前のことは絶対一生守る。この手からは絶対離しはしない!!だから、俺のそばにいてくれ……」

最後は言葉にならなかった。嗚咽が漏れる横島の背中をさすってルシオラは答える。

「ごめんね、ヨコシマ。そばにいるから。ずーっとそばにいるから。もう心配しないでね?」

視線が自然と合う。お互いの唇が近づく……

ゴトン……

「ゴトン?」

音のするほうを見ると美神や美智恵、それに神父やメンバーもろもろがそろっていた。

「あは、そのまま続けてもいいのよ(汗)」
「はぁ、せっかくのいいシチュエーションがぁ〜」
「そんなのいいじゃない♪」

ルシオラはそう言うとヨコシマの唇に口付けをした。

「ちょ、ちょっと!」

あわてる横島にアカンベーをするルシオラ。
それを冷やかす仲間たち。

「ちょっと、ここは病院なのよー!!」

看護士さんに注意されるまでわいわいと騒いだそうだ。


夕方、平安神宮
後醍醐天皇と大友皇子はメンバーたちと別れの挨拶をしていた。

「結局、太秦は真犯人じゃなかったんだな。結局、信念と霊力を当てにされて担ぎ上げられたと?」
「そうですね、鳥居を取り調べたところ裏の話がたくさん出てきましたわ。N国には制裁も辞さないと
 いきり立っている議員の方もいるほどで」
「ふむ、いろいろ抑えるのが大変のようじゃのう。さて、朕らはここら辺でお暇させていただくぞ。」
「今度京都に来たときは平和に観光したいものですわ。」

美智恵は後醍醐天皇ににこりと笑いかける。

「そのときは楽しみですな。」

メンバーが見送る中、2人の影はすーっと消えていった。

「もうこれで終わりましたね。」
「あとは霊的施設の再建ね。被害は大きいのよね。」
「Gメンはまだまだ仕事がありますよ。何から手をつけていいのやら……」

西条はトホホとでも言うかのように落胆した感じで言う。

「あ、先生。逃げないでくださいよ?」
「な、何のことかしら?」
「どうしてこのあとの新幹線のチケットがあるんです?」

いつの間にか抜き取られていた新幹線のチケットを見て美智恵はうろたえる。

「お願い、西条君、見逃して!」
「ダメです。」
「明日の夕方には東京でベンジャミン・クロスウェルのコンサートが……」
「そんなことは理由になりません。先生は公務員なんですよ?だいいち……」

美知恵と西条が押し問答している中、ルシオラは夕日を見つめていた。

「やっぱりきれいね。京都だとさらにきれいだわ。」
「そうだな。」
「ヨコシマ、ずーっと一緒にいてくれるんでしょ?」
「そうさ、ずーっとさ。」
「ほんとにずーっと?」
「ずーっとのずーっとさ。」
「ありがと、ヨコシマ。」

2人が微笑むその裏では、初夏を思わせる青葉が青々と茂っているのであった。

END

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