ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―4後半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/ 8)

<前半からの続き>




「………………」
「…で、どうだ?落ち着いたか?」

あれから暫し、エミさん(15歳)は泣き続けた。俺は頃合を見計らってそう声を掛ける。

「…ふん。スッキリしたわ……悪かったわね、迷惑掛けて。」

プイっとそっぽを向いてぶっきらぼうに答えるエミさん(15歳)。どうやら落ち着いたみたいだ。

「あ〜…いや、別に迷惑って程でもね〜し。」
「ふ〜ん…ま、そう言うなら。」

見知らぬ男の前で大泣きしてしまったからだろう。エミさん(15歳)はうっすらと頬を赤くして、照れくさそうにしている。

「アタシはね、10歳の時に両親が死んで、13歳の時に家を出てからずっと1人で生きてきたのよ。自分だけの力でね。」
「え?」
「今までに、自分より霊能力の強い奴にだって何人か会ってきたけど…」

エミさん(15歳)は、突然にトツトツと自分の過去を語りだす。

「それでも、そいつらに絶対勝てないって思った事なんか無いわ。だから、人間ではアンタが初めてよ。」
「は?」
「…絶対勝てないって思った相手はね。世の中って広いわ、こんな奴が居るなんて。」

いや、そんなこと無いだろう?エミさんなんだから、俺に勝てないなんて事無いって。そりゃあ今はまだ…

「アンタ、まだ15歳だろ?俺とは5歳も違うんだぜ?その歳でそれだけの力持ってるなら、直ぐに俺くらい追い越すだろうに?」
「俺くらいって……それ、本気で言ってるワケ?」

ん〜…どうもエミさん(15歳)の俺に対する評価が過大になってるような気がする。

「ほんと…変な奴。他人の力は測れても、自分の力は分かってないってワケ?」

そういうと、俺の事を呆れたって風に眺める。なんだかなぁ…
そりゃあ、昔に比べたらちょっと位は強くなれたけど、俺より強い奴なんてザラに居るだろうに……

「ま、今日は悪かったわね。こんな所まで引っ張ってきちまって。」
「ん…別に大丈夫さ。」

と、どうやらこれで話も終わりか。あ、そう言えば…

「そう言えば、さっきちらっと仕事がどうとか言ってたけど……」
「え?ああ。まあ大丈夫よ。ベリアルはアタシの切り札でね。アイツを失ったから、今後回って来る仕事のランクがちょっと落ちるでしょうけど、何てことは無いわ。これでも呪いの知識に関しては相当なモノなんだから。」

ん、それは知ってるけどさ。ん〜…やっぱり微妙に悪い事しちまったのかなぁ?

「…そうね。せっかく悪魔との契約が切れたんだから、GS免許取るってのも悪くないかも知れないわ。元々あと3年したらそうするつもりだったし、予定よりちょっと早いけどね。」

ん?もしかして、気を使ってくれてるのかな?

「あ、でもそうすると正式な戸籍が必要になるワケよね?まいったなあ…奥村に頼めば何とかしてくれるかしらね?」
「え?正式な戸籍って?」
「ん?ああ、さっき家を出たって言ったでしょう?両親が死んで引き取られた先ってのが叔母の家。でもってその叔母とソリが合わなくてね、つまり家出したのよ。その後の確認なんかしてないけど、当然もう縁は切れてるんだろうし。だからアタシには戸籍が無いの。」

10歳で両親失って、13歳で家出して、15歳で殺し屋ですかい!?
うう…なんてヘビーな人生を歩んでいるんじゃあ!!

「ううぅ…お、俺に出来る事があれば言ってくれ。」
「よしとくれよ。同情されるってのが一番嫌いなんだ。ん、でもそうだね……」

と、そこで何かを思いついたようにあごに手を当てるエミさん(15歳)。

「アンタ…フリーのGSって言ってたわね?」
「え?ああ。まあそうだけど。」

なんだかエミさん(15歳)の目がちょっと妖しい。こ、これは!何か企んでいる時の目?!

「アタシがGS免許取ったら、アンタがアタシを雇ってよ?」
「は?いや、雇うも何も、だから俺はフリーなんだってば?」

と、エミさん(15歳)は…そう答えた俺にフフンと鼻を鳴らして笑う。

「だからさ、あと2ヶ月。GS試験までに事務所立ち上げて欲しいワケ。」
「は?」

―― は? ――

「なんですとぉぉぉっ!?」

事務所を立ち上げるってあーたっ!

「そげなこと2ヶ月で出来るモンでも無いでしょうが!?いや、立ち上げるだけなら出来るかもしれんけど!俺みたいな実績無い奴が事務所立ち上げても、1件も仕事なんて来ねぇっつうのっ!!おまけに準備資金も開業資金も運転資金もねえ素寒貧だぞっ、俺はっ!?あんまり無茶な事言うんじゃねーーーっ!!!」
「さっき、何か出来る事があったら言ってくれって言ったじゃない?」
「そら言ったがなーーーっ!?出来る事と出来ん事っちゅうんがあるやろーーーっ!!」

冗談じゃねえ!俺はもっとこっそり、ひっそりと堅実に…

「ふう…やっぱり大人は嘘つきね。まぁ、判ってたけどさ……」

だーーーーっ!!!
そんな顔すんなーーーっ!!!分かってるぞ!それは嘘泣きだろっ!?常套手段だもんな。
だからってクソーーーー!!分かってるから何だっちゅうんじゃいっ!!
こんな顔されたら…こんな顔されたら……

「……善処する!それ以上は約束出来ん!!それで良いならお…オッケー……だ。」
「ん♪それで良いわ、それじゃあ宜しくね。」

はーーーーんっ!!!
判ってたのに!判ってたのに!判ってたのにーーーーっ!!!

「じゃあ、そういう事でちゃんと頑張ってね♪2ヵ月後に又会いましょ。ね、え〜と……横島さん♪」
「よ、横島さんっ?!」

あ、そうか!俺のほうが年上なんだもんな。

「私の事はエミって呼んでくれて良いわ。」
「ん…じゃあエミさん?」

ま、前と変わらんし大丈夫。

「エ・ミ!もう一回!」
「え?え〜と……エミ?」
「おっけー♪」

よ、呼び捨てですか!?
いや、まあ確かに…しかし、いや、あのエミさんを呼び捨て……

「なんだか違和感が有るかも…」
「?」
「いや、こっちの事…」

………………










そんな訳で、俺の人生設計プラン「ほどほどの仕事をコツコツと」はいきなり却下になってしまった。
そんな事じゃあ事務所の立ち上げなんてとても出来ないからな。

―― それにしても ――

まさかエミさんに会えるなんて思っても見なかった。しかも15歳。
でも、だ。
それなら他の奴らにもそのうち会えるのかも知れない。
それはちょっと楽しみかも…

―― ま ――

今はそれ所じゃねえ!エミさ……じゃなくて、エミに吹っかけられた無理難題を何とかしねえと!
とにかく欲しいのは実績と金だ。
くっそー!どっちも一朝一夕で手に入るモンじゃねーぞ!?

「とにかく、何か良い方法を考えんと…」

その日、俺は無い知恵を絞って朝までを過ごしたのだった。




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