ザ・グレート・展開予測ショー

不思議の国の横島 ―4前半―


投稿者名:KAZ23
投稿日時:(03/10/ 8)

そりゃあ俺が居たんだから、他にも俺の知り合いが居たって不思議じゃあねぇけど…
それにしたってこりゃあ突然すぎだ。何てーか、心構えをしとく時間くらいくれってーの!

「何黙ってんのさ、アンタ!?アタシの話聞いて…」

俺の目の前には、アノ懐かしのエミさんが居る。とにかくこっちに来て初めて逢えた知り合いだ。
さて、俺はどうするべきだ?
とにかく向こうは俺の事知らんのだし…

「…果たして、どういった対応を俺は取るべきであろう?」
「何がさ!?いい加減、こっちの話を…」

―― ん? ――

なんだか違和感があるな?なんだろ?
この人エミさんだよな、間違い無く?
確かにエミさんなんだけど、何処か違わねぇか?

―― 何処が違う? ――

何か見落としてるような気がするぞ。ん〜…どうにも、もどかしい…
喉のココまで出掛かってきているんだけど、最後の一押しが出てこない。それがなんとももどかしー!

「いい加減にしな、おっさんっ!!」
「だぁれがっ!おっさんじゃっ!?俺はまだ20歳だっちゅーの!!」
「ふん!やっと反応してくれたわね。」

―― ん? ――

「………………」

何か、違和感の原因にブチ当たったような……

「ああっ?!!」
「わっ!?なんなのよ、いったい?!」

謎は解けた。犯人はこの中に居る!
……じゃない!
俺はもう一度、目の前に居るエミさんをシゲシゲと観察する。
先ほどから感じていた違和感の正体とは…

「……わ、若い…」
「?……15よ。私から見ればアンタなんて十分オッサンなワケ。」
「15歳ですと?!」

そうだよ!
このエミさん…俺が知っているエミさんよりも全然若いんだ!
ああ!15歳にしては割と大人びてる方かも知れんけど、それでも確かに違う!
あの、美神さんに負けず劣らずな身体が!!
あの、妖しさ炸裂の色気がぁぁ!!

「そんな訳であと5年したら又会いましょう。じゃ、そゆことで。」
「待てコラ!?そんな訳ってどんな訳よ!?ってか勝手に行くな!!」

はぁ〜…せっかくエミさんに会えたのに、15歳じゃあなぁ…
そう言えば、いつ位からだったか?女子高生が守備範囲外になったのって?
俺はお姉ちゃん大好きじゃ!そりゃあもう何は無くても!
でも15歳は子供だよなぁ…
昔は……俺も高校生の頃は、女子高生だってバリバリ守備範囲だったよな?
いつから高校生が子供になっちまったんだっけ?やっぱり高校卒業してからだったか?

「ア〜…ドウヤラ怪我モ無イミタイデスネ。ヨカッタヨカッタ。ソレジャア私ハ用事ガ有ルノデコノ辺デ…」
「だから待ちなさいって言ってるでしょうが!?何、あからさまに視線逸らしてるワケ!?とにかくちょっと…」

―― グイッ! ――

「ういっ?」
「一緒に来るワケ!」

エミさん(15歳)は俺の腕を掴むと、そのまま走り出した。腕を掴まれてる俺も当然一緒になって走り出さなきゃいけない訳で…

「ぐあーーー!!止めてーーーッ!?人さらいーーーーッッ!!?」
「ちょっと黙るワケッッ!!!」

俺は、あっという間にその場から連れ去られてしまう。

………………










「で、少しは真面目に話してくれる気になった?」
「いや、俺は初めから真面目だが?」

―― ドゲシッ! ――

「真!面!目!に!話すワケ!!オッケー?!」
「お…オッケー、オッケー…」

イタタタ。そんなポンポンと叩かんで下さいよ!

―― しっかし ――

ナリはこうでもやっぱりエミさんはエミさんだねー…
俺は何処をどうやったのか、ホテルの1室へと連れて来られた。多分エミさん(15歳)の部屋なんだろう。
ホテルの1室にエミさん(15歳)と2人きり!

「………………」
「……何よ?」

はぁ。
これでエミさんがあっちのエミさんならとってもおいしいシチュエーションだと言うのに!
な〜んでこっちのエミさんは15歳なんだよ!

「口惜しい、口惜しい、口惜しい……」

―― ガツンッ! ――

「もう一発殴るわよ!?」
「お約束ですが、もう既に殴ってます…」

ポンポンポンポン頭はたかんで下さい…

「さ、本当に真面目に話をしましょう。アタシの名前は小笠原エミ。職業は……殺し屋よ。」
「こっ、殺しっ!?」

エミさんが殺し屋!?そんな馬鹿な!?

「殺し屋って言っても、アタシの依頼者は公安よ。法的に手を出しにくい悪党ってのがいるでしょう?そんな奴らを……ね。」
「あ、ああ……なるほど…」

そういえば、前にそんな事言ってたっけ。でも、殺しまでやってたんかい!しかも、まだ15歳なんだろ!?

「ちなみに専門は……呪殺よ。」
「ん…まあ、そうなんでしょうねぇ…」

エミさんは呪いの専門家だし。どうやらこっちのエミさん(15歳)も基本的なところは変わってないって事か。

「ふ〜ん…一目で私の専門まで判るなんて、やっぱりアンタ、只者じゃないわね?」
「えっ?…あ!」

そうだった!俺がエミさん(15歳)の事知ってちゃおかしいんだよ!しまった。
確かにパッと見で霊能者って事が判っても不思議じゃ無いけど、それでもその人の専門的な事なんて実際に見るまでは普通気づかないもんだ!

「そろそろ良いだろ?アンタ、とりあえず名前は何て言うの?」
「あ〜……俺は横島…横島忠夫…」

エミさん(15歳)はリラックスしてる風を装いながらも、なんだか緊張してるみたいだな?なんだろ?俺にビビッてる?

―― はは、まさか ――

まあ、そうだな。良く考えたら別に自己紹介したって何も問題無いじゃんか?
俺は一応、こっちの世界でもきちんと戸籍のある人間なんだし。
ん、良く考えたら知ってる人間がいるって言うのは心強いような気がするぞ。うん!

「…しがないGSさ。この間から、ってか今日から活動を始めてね。格好良く言えばフリーランスのGS……現実的には所属する事務所の無い根無しGS…う、なんだか情けないかも。」
「ふーん…横島ね……それで?」
「は?いや、それだけだけど?」

エミさん(15歳)は用心深くこちらを伺っている。
なんだ?本当にコレだけなんだけどな?何かおかしい所あったか?

「小娘だと思ってあまり舐めないで欲しいワケ。アタシだってこれでもオカルトのプロよ?アンタがその辺のGSなんかじゃ無いって事は判ってるワケ。」
「いや、そうは言っても現実に……」

確かに、ちと特殊な状況もあるが、基本的にはその辺に転がってるGSで間違いないんだけど?

「フン!まあいいわ。詮索されたく無いってワケね?それじゃあこっちから言いたい事だけ言わせてもらうわ。」

ああ!?なんだか勘違いしてるんじゃないでしょうか?

「さっきはよくもベリアルを殺ってくれたわね!?この落とし前は付けて貰うワケ!」
「なっ!?なんだよベリアルって…さっきの悪魔か?!アレ?アレってまずかったのか?もしかして俺、とんでもなく早まった事した?!」

なんだ!?エミさん(15歳)は何に怒っている!?もしかして、あの悪魔って退治したらまずかったのか?
あの時、俺にはエミさん(15歳)が襲われててやばそうって見えたけど、もしかしたら何か呪術の途中だったのかも?!

「あの〜……もしかして俺、とんでもなく余計な事してしまいましたか?」

恐る恐る尋ねる。

「ええ!余計も余計も大きな余計(?)よ!一体全体どうしてくれるワケ?!ベリアルは私の商売道具なのよ!?アンタが殺っちまったんで、契約切れちまったじゃないのさ!?あいつがいないと、下手したら奥村だって仕事回してくれなくなるじゃないのよ!まだあと3年もこき使える予定だったのにっ!!この馬鹿ッ!馬鹿っ!!」
「うわああああ!御免なさいっ!御免なさいっ!御免なさいっ!御免なさいーーーっ!!!知らんかったんやーーーっ!!てっきり襲われてるモン思たんやーーーっ!!助けるつもりだったんやーーーっ!!ほんまやっ!堪忍やーっっ!!!」
「それがっ!!!」

くっそー!!たまに格好付けるとこんなんばっかし!俺ってばいっつもこんなんばっかしーーー!!

「余計なお世話だって言うのよっ!!」
「えっ?」

と、そこでエミさん(15歳)が俺の胸倉を掴んで更に大声で怒鳴った。

「そうよ!襲われてたのよっ!あのままだったら間違い無く殺られてたワケ!!私じゃあ間違ってもベリアルには勝てないのよっ!!それをっ!!!」

―― ホロッ ――

「うへっ?!」
「それをっ!!うっ…なんであんなにアッサリと……」

そこで、俺の胸倉を掴むエミさん(15歳)の両腕の力はフッと抜けて、そしてその相貌から光るものが溢れて頬を伝う。

「悔しいじゃない!?悔しいじゃないのよっ!!こんなに圧倒的な力の差っっ!!!」

それは堰を切ったように既に留まることなく…

「うああああああああああっ!!!!」

あのエミさんが外聞も無く大声で泣きだした。襟に触れる腕からは身体の震えが敏感に伝わってくる。
俺はそれをどうする事も出来ずに、ただ立ち尽くすだけだった。

………………




<後半に続く>

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