ザ・グレート・展開予測ショー

ひのめ奮闘記(その37)


投稿者名:ユタ
投稿日時:(03/10/ 6)


AM1:40 M山山中広場

そろそろ草木が眠る丑三つ時が迫る中、
都会では見れない星空の下六道女学院霊能科の生徒達が体操座りで集まっている。
しかし、慣れない時間帯なこともあり眠気でウツラウツラとしている者、
ペチャクチャとお喋りに興じる者・・・と落ち着きがないのは普通の女子高生と一緒だった。
そこへ・・・

「みんな〜、じゃあ〜今から〜〜最終ミ〜ティングを〜、始めます〜〜〜静かに〜して下さ〜〜い〜」

スピーカーを通して聞こえる締りのない声・六道冥子校長の挨拶にさらにやる気をそがれる生徒達。
やはりこういうときは夫の鬼道が司会をするのだが、今はバスまで今回使用する道具を取りに行っていた。

「やっぱり冥子ちゃんじゃ場が締まらないな・・・」

「ったく、いくつになっても変わらないんだから」

一向に注目してくれない生徒達にオロオロとする冥子をため息混じりで見つめると令子と横島。
しかし冥子は一大決心を固めてマイクを口元にあてると・・・

「みんな〜〜〜〜静かにしないと〜〜〜〜」

冥子が何かを言っているが生徒達のおしゃべりは止まらない・・・

「先生暴走しますよ〜〜〜〜〜〜♪」



ワイワイガヤガヤ・・・・ピタッ。


まるで時が止まったかのような錯覚に陥る一同。
そうではないとニコニコと微笑む冥子と虫の声が教えるのだが生徒達の背中には寒いものが走るのだった。

「昔よりかは成長してるな・・・」

「・・・・・・・」

夫の呟きに苦笑いでしか返せない令子だった。
一方静かにはなったが、今度は場の緊張感が伝わり何を言ったらいいか分からない冥子、
そんなとき旦那である鬼道の言葉をふと思い出す。

(そういえば〜〜まーくんが〜〜〜こういうときは〜〜一発ギャグで〜〜場を和ませるって〜〜〜)

まるで何かを閃いた子供のように笑顔を浮かべる冥子は、
『昨日見た一昔前のシネマ映画のモノマネで行こう』とマイクをギュっと握った。


「はい、それじゃ〜〜〜今から〜〜〜〜」

緊張に包まれた静寂の中で校長の言葉に耳を澄ます生徒一同。




そして・・・




























「みんなに〜〜〜ちょっ〜〜と殺し合いをしてもらいま〜〜〜〜〜〜〜す♪」

「「「「「えええええええぇぇぇぇ────────────────────ッ!!!!!!!!?」」」」」

一斉に叫びを上げる生徒達とズッコける教員、インストラクター一同。
そのとき・・・


「いやぁ〜、遅うなってすまんすまん。今これ取りに行ってたんで」

腕にダンボール箱を抱え広場に登場する鬼道、そのダンボールの中にあったのは・・・

・・・・銀色の首輪(?)

それを見た瞬間・・・


「人殺しぃぃ────っ!」
「助けてお母さーん!!」
「PTAに言いつけてやるぅぅ!!」
「まだ死にたくなーい!」
「私のお腹には先生の子が──っ!(ぇ」
「ふふふ、面白いじゃない・・・(←殺る気満々」

と、様々な叫びが夜空に響く。

冥子が言ったのは「場を和ませる冗談」で鬼道が持ってきたのは「生徒の体調、霊力、位置を本部で把握するための腕輪」であると、
誤解が解けるのは刃物6枚、銃弾4発、矢5発、火球1玉が生徒から鬼道に向けられた後だった・・・。










AM1:59



「よーし!私達の配置はここね」

幸恵にライトで照らしてもらいながら地図とコンパスで現在地を照らし合わせるひのめ。
あれから各自現場の近くまでバスで送ってもらい各々の班の配置につくと指導者からの指示を待っているのだった。

『よーし!あと5分で主結界を切るでぇ、各班霊感を研ぎ澄ませよ。
 もし何かあればすぐに連絡すること!ええなぁ!?』

左手の腕輪から聞こえる鬼道の声に頷く一同。
そして気を引き締めて周囲を見回す・・・


ヒュウウゥゥゥゥ・・・

満月に照らされて明るい夜空・・・
しかし時折吹く風が木々の枝を揺らし不気味な音を奏でる。
昼間は気持ちのいい清流のせせらぎですらひのめ達の緊張感を増すものでしかない。

「うぅ・・・ひーちゃん何か不気味だね・・」

幸恵はギュっとひのめのジャージの背をオズオズと摘んだ。
そんな親友に「は〜もっとしかっりしなさいよ」と普段なら言っているところだが、
ひのめにとっても本格的な除霊作業は初めてであり、
それは同班の木下光(きのした ひかり)、斎藤久美(さいとう くみ)も同様だった。
ただ残りの二人は・・・

「京華、出だしはどうする?一応簡易結界張っておく?」

「必要ありませんわ、スラ●ムレベル相手の除霊にス●ルトなんてもったいない」

と、軽口を叩く余裕があるのは京華とかすみ。
幼少から厳しい訓練を受けてきた二人にはこの程度の除霊など苦でもない、
いや、六道女学院レベルの生徒なら今回の作業は本当にレベル10でスライ●、強く見積ってもド●キーを相手にするものだった。

「ま・・・この程度の作業で緊張する人達もいるみたいですけど・・・」

「誰のことよ」

京華の嘲笑にムカっときたひのめが掴みかかりそうになるが・・・

「ひーちゃん!」

それを幸恵が羽交い絞めにしてボソっと呟いた。

(ひーちゃん!私と心眼さんと約束したでしょ?同じ班なんだから三世院さんとケンカしないって!)
(『いいかげん、少しは大人になって安っぽい挑発に乗るのはやめるわさ』)
(わ、分かってるわよ!)

どこか納得いかない表情のまま開放されたひのめはジっと京華を睨むが京華も負けてはいない。

「ふん、まあ・・・あなた達はそこで除霊の見本でも見ていなさい」
「ホホォ、ソレハソレハ光栄デスネェ・・・(こないだあんなたをぶっ飛ばしたのは誰か言ってみろぉっ!?)」
「足でも引っ張られたらたまりませんからね」
「張ったおすわよ(ハイ、キヲツケマスネ)」

「ひーちゃん・・・怒りのあまり本音と建前が逆になってる・・・」

この二人は永久にこのままなだろうか?これが男の子なら『ケンカの後は夕陽に照らされて熱い握手』なのに・・・
と、少し間違った悩みを抱える幸恵。そのとき・・・

「気にすることないわよ」

「あ、かすみちゃん」

チョンチョンと肩をつつかれ振り返るとそこにいたのはあのとき以来少しずつ友人として付き合いだした橘かすみだった。
かすみは幸恵に申し訳ないわねと言った表情で話しかける。

「あれでも京華は変わったほうなのよ・・・何て言うか、前みたいにギスギスしてないでしょ?」

「あははは、その分今度はひーちゃんがギスギスしてるけどね」

お互いの親友の有様に声を上げて笑う幸恵とかすみ。
その話題に乱入するのは・・・

「やっぱあの二人が対決したってのはホントなんだ!?ね、どっち!どっちが勝ったの!?」
「光ちゃ〜ん、そういうの聞くの失礼だよぉ」
「いいじゃない久美!あんただって興味あんでしょ!?」
「そ、そうだけどぉ・・・」

勝気な光に押し黙る久美。
そんな二人を見てからひのめと京華にチラっと目を移す幸恵とかすみ。
相変わらず喧々囂々と口ケンカをしているかと思いきやちゃっかりこっちの話題に耳を澄ましていた。

「「もちろん私の勝ち(ですわ!)(よ!)」」

犬猿の仲のわりにはしっかりハモってる二人に4人はドっと笑いを上げるのだった。
そんな四人を他所にさらに険悪な雰囲気を醸し出すひのめと京華・・・そのとき!


「「「「「「!!?」」」」」」

六人がピクンと何かの気配に反応する・・・わずかな、極僅かな霊気が周囲に蔓延していく。
と、同時に・・・

『今、M山の副結界を切ったからな、30秒後主結界を切るで。各班除霊具の準備をおこたるんやないで』

銀の腕輪・・・簡易探知機のスピーカーから聞こえる鬼道の声にサっと戦闘態勢を整えるひのめ達、
いや、今このM山では240名の生徒が今から始まる除霊に緊張と不安を抱えているだろう・・・そして・・


ビュ・・・
ボウ・・・
ギュ・・・ビュブ・・・


暗闇に浮かび上がる人魂、髑髏、草木を掻き分けて現れる妖怪達・・・
このときを待っていたとばかりに溢れかえる彼らの前に立ちはだかったのは・・

「ふん、まずはわたくしが見本を見せてあげますわ」

首から朱色のロザリオを下げ、右手に白い翼のロゴマークが貼られた神銃ラファエルを携える三世院京華だった。

「こらぁっ!私が主や・・・もが、むーー!!」
「はいはーい、ひーちゃん。経験者に手本見せてもらってからしようね〜」
『あんたは一度他人の除霊ってもんを見せてもらうわさ』

背後から幸恵に口を塞がれ、心眼に力を抜かれて(心眼はひのめの霊力と筋力を制御できる:その21参照)退場するひのめ。
『はいはい、分かりましたよ〜』とぶす〜っとした表情のままザコ悪霊に囲まれながらも余裕の表情の京華を見る。
そして・・・遠目に薄っすらと闇夜に浮かぶ隣山のN山へ視線を移した・・・。


(・・・N山か・・・)

12年前、霊力封印のきっかけとなった場所。
コンプレックスとその後の人生の苦しみ、悩みが発生した場所・・・そして・・・殺されかけた場所。




(どうしたんだろう・・・・あの山を見てると・・・・────背中の傷が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・痛いや・・・・)








ひのめは幸恵に気付かれないように両手で自分の両肩をギュッっと抱きしめた・・・
手の届かない背中をさするように・・・背中に残る傷跡をなぞるように・・・







                                    その38に続く


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あとがき

前々回・・・
>『六道女学院霊能科林間学校御一行様』と掲げられた観光バス『2』台が整備された山道を登っていく

と書いたんですが・・・改めて原作を読み直すとバス2台じゃ足りません (ノД`)
26巻からみる1クラスの生徒数を30人と考えて、
それが8クラス(原作ではG組まで出てきましたがクラス対抗トーナメントを公平な対戦数にするには8クラス、
つまりHクラスまであると推測しました。さすがに16クラスはないだろうと^^;)
と、なると・・・霊能科の生徒数は約240名

バス『2』台じゃ足りないよぉ_| ̄|○ 
と、自分でダメ出ししてみました♪
ええ、決して「自分でダメ出しすれば読者にツッコまれたときにそれ程ダメージはないぞ☆」トカ考エテイマセンヨ(・_・)

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