ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER THE BACK IN THE REBORNEDV−4


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/10/ 1)

 ピンポーン
 夜も更けてきたところで、誰かが事務所兼自宅の呼び鈴を鳴らした。
「えーと。誰かわかる?」
 広いリビングでテレビを見ていた人物、今は黒い制服を着替え、白いワイシャツを着ている誉人は、誰もいないはずの室内に向かって尋ねる。
 彼は、一人で過ごすには大変広いが、今日は両親が二人とも仕事で遅いため、早めの夕食をとり、その合間に公博から借りたノートの解読に勤しんでいた。しかし、傍らでテレビをつけた少女のせいで(おかげで?)、人外の言葉で描かれた公博のノートよりも、テレビのほうへと視線が言ってしまったのは、もはや言うまでもない。そんな最中のことである。
『はい、ピートさんがお見えになったようです』
 そうすると、虚空から何者かが、聞きなれない単語で返す。
「ぴーと?って誰」
 いぶかしむ誉人の脇で、少女が口を開いた。
「だんな様たちの古くからのお知り合いでございます。私もよくは知りませんが、とても長生きな方で数百年の時を生きているとか何とか」
 髪の毛を二つに分けたかわいらしい少女がそう語る。この娘は人狼の少女で、誉人が与えた精霊石の効果なしでは、昼間は自由に外すら歩くことができない。
「まぁいいや、会ってから確かめようか」
 といいつつ、彼は傍らの少女に目を配る。少女はテレビのスイッチを切ろうとしていた。
『地球は俺たちが守って見せる!!オカルトチェン・・・』 
 ・・・プチ・・・
 名残惜しそうにテレビを眺めていた彼女だが、こちらの視線に気づいてすぐに切る。
「じゃぁ俺はすぐに迎えに行くから、お茶をよろしく」
「はい、かしこまりました」
 少女が台所に消えて行くのを尻目に、誉人はリビングを後にした。

 青年は目の前にある建物を見上げた。ここを訪れるのは、果たして何年ぶりなのだろう。
 レンガが基本で作り上げられた、高そうな建物。それは三階からなり、屋根裏の部屋まで用意されていた。
もし自分も事務所を持つのならばこういった事務所が欲しいものだ。もっとも、維持費やらなにやらが
面倒くさそうだが。
 仕事柄、この建物の持ち主に会うことはある。しかし、そうはいっても、自分は公務員で、相手は民間。この隔たりが、いや、格式であろうか。相手と自分との間に明確な差を与えてしまう。
 そういえば、はるか昔に自分の上司だったものと、この建物の持ち主だったものは、その差を埋めるほどに一緒に仕事を行っていた。
 それは果たして時代から来る違いなのか、それとも自分の性格から来るものであるのか。
 齢1000歳をゆうに超えるが、その衰えない秀麗な顔を哀愁に歪ませ、青年は悟ったように笑う。
 そして、目の前のドアのすぐ横にある呼び鈴を軽く押す。
 ピンポーン
 知った仲とはいえ仕事の依頼をするのだ、というか、『自分たちの手伝いをさせる』が依頼として限度だろうが、それでもそれなりの格好を彼はしていた。ピシッとしたスーツに身を包み、髪の毛もなでるように整えてある。右に提げているバッグの中には、仕事の内容の書かれたファイルやら何やらがはいっていた。
『お久しぶりです、ピート様』
 不意に上から自分を呼ぶ声が聞こえて、ピートは顔を上げる。
「ええ、お久しぶり。人口幽霊一号」
『いえ、今は改良されましたので・・・』
「そういえばそうだったね。・・・久しぶり、人口幽霊4号」
 懐かしむような気持ちで、青年はそれを見上げた。
 そこには声の主などはなく、今も目の前に構える豪奢な建物があるばかりだ。この家こそが声の主であり、またこの建物の持ち主の事務所でもある。
 持ち主の霊気を吸収して始めてその進化を発揮する、一種の寄生体。それがこの声の主、人口幽霊4号の正体であった。
『もうすぐに誉人さんはきますので、そんな改まらずともよろしいのですよ』
「誉人さん?あぁ、忠誉さんたちの子供か・・・」
 聞きなれない単語に、ピートは眉をひそめたがすぐに思い出した。確か、その昔子供が生まれたことを自慢げに語っていた、若かりし日の忠誉がいたはずだ。まさか忠誉たちがGSの免許を剥奪されて引っ越していってしまったこの家に、誉人なる人物がこの場に移り住んだわけではなくてよかったといったところだ。
 ちなみに、忠誉とは誉人の実父に当る人物で、浄霊師という手間隙のかかる仕事を行っている。そのせいで今日も遅くなっているのだが、そのことをよく会うわけもないピートは知るはずもない。

 がちゃ・・・
 玄関のドアを開けると、そこには秀麗な青年が立っていた。
「こんばんわ。夜分遅くにすみません」
 その青年がはじめを、そう切り出した。
「あ・・・はい、こんばんわ」(何だよ、美形ぢゃないかよ)
 誉人は彼の顔を見るなり、美形が多くなる最近の話のインフレ傾向に、少々いやな気を覚える。これは後で友人に呪いのかけ方でも教えてもらおうか。
「はじめまして。誉人君、ですよね」
 青年は朗らかに笑いながら、こちらの名を呼んだ。
「ええ、僕が小さいときにあったんですか。『ピート』さん」
 青年は驚くようにこちらの顔を見つめた。名を呼ばれたことが意外だったらしい。しかし、その視線を誉人からはずし、苦笑のような表情で目線を上げてから、悟ったように破顔した。
「ええ、直接あったわけではありませんけど、何度か小さいころの君の事を、忠誉さんから聞いたことがありまして・・・」
 そして、こんなに大きくなって、みたいな事をつぶやいた。
 確かに、小さいころの話しか知らない彼にとっては、話から創造するよりも、実物のほうが大きいだろう。そして、その対象が誉人に対して用いられるものであるのだから、この言葉の意味は言葉どおり以上の意味合いを持つ。
 誉人は妙な気持ちで、体を震わせた。目の前の人物は、民間ではないゆえに、その名はあまり轟き難いかも知れないが、話によれば数百年はくだらない生を持つらしい。そんなものにこのような言葉を言われて、このような気持ちでいられないはずはない。
「まぁ、立ち話もあれなんで。なかに入りませんか」
 そろそろ冷え始めた玄関にいるのは辛いので、そういって、中に入るように誉人は促した。
「あぁ、すいません。では、しつれいします」
 ピートはそういって、建物の中へと入っていった。


「・・・・・・針か。これが発現してしまったら、今度こそ地上はなくなるかもしれないわね」
 とあるビルの最上階。そこには大きな部屋がしつらえてあった。
 そして、この部屋に三人の人影が。
 部屋の中央にはおきな半円のデスクが置いてあり、その中央にいかにも高そうな椅子に座った女性、彼女が先を制するように発した言葉がそれだった。
 いかにも事務的なスーツに身を包み、髪の毛も邪魔にならない程度にまとめている。その眼光は、障害を射すくめるかのように凛然と輝き、しかし深い思慮の元に計算されたような鋭ささえ放っていた。
 ここは今から4時間ほど前。
 一枚のファイルに目を配らせていた女性が、深刻そうな面持ちでつぶやいた。
「・・・で、これを食い止めるべき、具体的な方策はあるの」
 女性の目の先には、二人の男性が直立していた。
 一人は、朝黒い肌に、ハーフアーマーが印象的な魔族の青年。妙神山から来たといっていた。彼女が手にしているファイルも、その魔族の青年が届けてきたものである。
 もう一人は、彼女の部下であり、この日本、いや、世界レヴェルで最高峰ともいえるスウィーパー、彼は皴のない清潔そうなスーツを着こなしている青年である。齢千年を数える希少な存在、ヴァンパイアのハーフである。名をピートといった。
「一つだけある。具体的・・・というよりは単純なことなのだが、ただ発現する前に針を折るなり、術者を倒すなりして妨害するしかないな」
 魔族の青年は、こともなげに言った。が、これはそう簡単なことではない。
 なにしろ、
「相手も魔族なんでしょ。人間の手でそう簡単にできるものかしら」
人間の手では、魔族の相手をこなすことなど到底無理なことであった。
 まず、攻撃をかけるときの出力が違う。さらに身体能力や、身体機能も根本的に魔族は高い。さらには、術をかけたときの制御能力や、なかには特殊な能力を発揮するものもいる。地上にときどき現われる下級の魔族ならそれでよいのだが、これらと、中級、上級の魔族との力の次元は、根本的に異なる。
 さらには、近年(とはいっても100年ほど昔)発覚してきたことだが、個人個人における相対的な霊力の低下。これにより、ますます魔族との戦いに対し、不利な条件がそろってきている。
「大丈夫だ。この作戦にて、主に戦線に向かうのは我々妙神山をはじめとする神魔の混合戦隊と、人間社会になじんでいるうちの有力な種族だけだ。たとえば・・・」
 と、横に視線を移して、
「ここにいるピート君のような人をね」
と、語る。


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