AFTER THE BACK IN THE REBORNEDV−3
投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/10/ 1)
さらに公博は、ジュラルミンケースから一枚のノートを取り出した。ノートは長い間使われていたようで、ぼろぼろになっていた。
「さて、僕の調べた結果によると、彼女たち、『美神』とその友人たちってことになっているが、が一番最初に降臨させたのは、邪馬台国家を敷いたといわれている『卑弥呼』なる人物らしい。
で、彼女の力は神魔にも匹敵するほど強力で、まず間違いなくこの国で最強の人物だろうね」
・・・誉人は公博のいいたい意味がわからず、とりあえず強いんだろうな、程度のことを思った。
「どうやって彼女たちは卑弥呼を降臨させたと思う」
そんな時に不意に振られ、答えられない誉人。だが公博は、誉人の言葉を待たずに、話を続ける。
「これは載っていなかったんだけど、僕が思うに、彼女たちは卑弥呼の行動、あるいは能力を制限する何かを用いた上で、卑弥呼を調伏したんだと思う」
ありえはするが、なんとなく違うといった面持ちで、誉人は聞いていた。
実際のところ、そんなことをこの時代の人間が行えるはずもないのだが、文献が不足しているので調査も遅々として進まないので、しょうがないといえばしょうがない事であるが。
その隣で院長は、話に入れないとか何とかいいながら、足元に『の』の字を描いていた。
地上からはるか高くにある神山。その頂は、雲を見下ろすかたちで聳(そび)え立っており、その神聖さを一身に主張しているかのようである。
人がとある目的を持ち訪れ、神々や魔の物にとっても大いなる意味をかねる一種の聖地。
頂には大きな結界が張られており、邪なる物の隣接を阻み、結界を超えてゆけば巨大な門が、気の弱いものを試すかのごとく立ち構えている。その両端に取り付けられた鬼の顔が、見るものを緊張させる。
曰く、
『この門をくぐる者 汝 一切の望みを捨てよ』
だそうである。下に書かれた管理人の文字が、その緊張の線を無造作に引きちぎってしまうのは難だが。
門を超えると、古代中国風ではあるが、無作法に和風を取り入れたような、そんな曖昧さを漂わせる独特の建物が建っている。それはこの地に住まうものすべてに共通していて、服に始まり調度品に至るまで、独特の個性で描かれている。
ここに訪れたものは、これだけではまさかここに住むものが、大きな意味合いを持つものだとは思うまい。というか、おそらくほとんどのものが、変わった趣味を持つ変な集団としか、認知はさせてはくれまい。
人々は、この山を見上げてはこう呼んだ。
・・・妙神山、と
「ピートさんに連絡は入りましたか?」
頭から何かをはやした女性が声を上げる。おそらくはアクセサリーか何かではあるとは思うが、よく見るとそのようなものではないのかもしれない。というか、こんなアクセサリーは見たことすらない。ってか売ってさえもいない。
やや中国風ではあるが、宗教的な衣装にも似てなくはないような服を着、帯剣している彼女は、美しいながらも幼ささえ残る顔を、天へと持ち上げた。
「はい、連絡は取れました。向こうのほうでも動いてくれるようです」
若い男が返事を返す。
女性の視線の先には、色黒できりっとした顔立ちの青年が、舞い降りてきたところであった。ハーフアーマーをしていることから、軍属か何かなのであろうか。その動きにも隙はなく、無駄もない。
「ですが、地上のほうでもなにやら怪しい動きがある模様ですね。霊や妖怪たちの動きも盛んになってきているようですし」
男は、被っていたベレー帽を脱ぐと、髪の毛を掻きあげる。
「理由はわかりましたか」
女性の瞳にも、刃のような輝きがたどる。
「確証は得られませんでしたが、魔族の武闘派たちがまた何かかんでいるみたいですね。最近活動が活発になってきているみたいです」
「その報せは知っていましたけど、我々から先手を打つわけにはいけませんから、動くわけにはまいりません」
女性は、事務的な言葉をつぶやくと、男に目を配らせる。
他に何か?という合図らしい。
「ええと、後は最近有名な霊能力者たちが相次いで失踪しているようです」
その報せに女性は何かを感じたように、瞳を大きくした。
「それで、その後死体となって発見された、とか」
「ええ、そうですね。・・・どうしますか」
・・・・・・女性は、しばらくの間黙考し、あることを考えたようだ。
「ヤームとイームを呼んできてください。あまり顔を知られていない彼らなら動きやすいでしょうから」
女性がそういうと、男もうなずく。
「わかりました。すぐに呼んできます」
男は一礼してから、駆け出す。
「あれでなければいいのだけれど・・・」
女性は重い表情で呟いてから、体を抱きしめる。
「それにしても寒い・・・」
そういえばずっとバルコニーで会話を行っていたのだ、体が冷えてきたらしい。女性は身を抱えたまま室内へと戻っていった。
薄暗い室内、そこには三人の眷属が立ち並んでいた。
「さて、本日皆に集まってもらったのは、言うまでもない」
そう切り出したのは、小柄でフードのようなマントを頭からすっぽりと被った男だった。いや、小柄というよりはむしろ子供と形容さえできえるかもしれない。身長150センチほどしかなく、それ以外は言うべきことすらできない。男に見ることができるものは、マントのほかには光った相貌しかない。まるで少年漫画に出てくるいかにも悪魔ですと名乗っている者のように。
「どうすれば妙神山を落とせるかってことなんだけど」
男は集まった二人を一瞥する。この二人とはずいぶん古い仲になる。数派に分かれる武闘派のうちの一つ、自分たちは『解放派』と名乗っているのだが、この組織を起こしたときからずっと一緒にやっている。
とはいってもその構成人数は、他の組織に比べれば極端に少ないが、この男たちはそれを『少数精鋭』とのたまっていた。まぁ、物は言い様である。
「はい」
そのうちから、一人の男が手を上げた。長いコートを着こなし、ベルトやらバックルやらを妙に多く身に着けていて、とんがった髪の毛を整えもせずに、とんがったままにしている。しかも顔には妙に目立つことに、包帯がぐるぐると巻いてあった。
「はい、じゃぁパズス君」
と、学校の先生のように男は手を上げたもう一人の男、パズスをさした。
「はい、わたしはとりあえずはテーブルを囲んで話し合ったほうがいいと思います」
「ふむ、そしてやつらのお茶だとか食事の中に毒でも突っ込むという作戦かい。なかなかナイスだとは思うのだが・・・」
もう一人の男が脇から賛同する。この男はマニフェラという名で、漆黒のマントに身を包んだナルシストだ。妙に面白いから一緒に行動して入るのだが、正直なところこのまま戦線に連れて行ったらどこかでやられているのかもしれない。まぁ、そうなったら、毎年墓参りくらいはしてやろうか。
「いえいえ、別にそんなことはしませんよ。平和的に話し合って平和的にことを終える。そうすれば争いはないので、僕としては楽なんですが」
パズスはにこりと笑いながら(といっても包帯でまったく見えないが、そんな気がする)、首を振る。
「こらぁ、それでは妙神山は落とせないだろー。僕たちの最終目標を忘れたのかー」
小柄な男が激声を飛ばす。とはいっても、その身長や声の質などから、間違っても迫力などは伝わっては来ないが・・・
「僕たちの目標を言ってみろー」
それは、
「まぞくのかいほうー」
である。
この520年、苦心に苦心を重ねてやっと掴んだチャンス。それが、400年ほど昔に、アシュタロスという上級魔族に先を越されはしたが、ついに廻ってきた機会。これをものにしないでいつしろと?
「でも、サナトス。いくらあれの場所がわかったとはいえ、それだけで勝てるとは思えないが」
マニフェラが当然の疑問を口に出す。
「現にあれは400年前に、人間たちの手によって破壊されかけたって言うじゃないか」
「問題はない。『針』さえ間に合えば、どうにでもなる。問題なのは時間だけだ」
サナトスと呼ばれた小柄な男は、くくと含み笑いをした。
彼には試作とはいえ、手となり足となるべきものがあった。これが完成できれば、『針』の完成までには十分な時間が稼げる。
さらには、ここにはいないがもう一人の同士の存在。彼女の戦闘能力は自分たちの群を圧倒的に抜いている。
これらの材料があって、いかに失敗をしようか。自分たちはきっと成功するはず。400年前に戦争を起こしたものとは違うのだ。
そう・・・
スベテは、新しい未来のために。
そう各々の胸に刻み込み、彼らはそのまま常闇の彼方まで消えていった。
ちなみに、最初の問題であった妙神山の攻略法を、このときにはすでに忘れていたりもする。
今までの
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