ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER THE BACK IN THE REBORNEDV−2


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/ 9/29)

「またあなたですか」
 誉人は、溜息をつきつつ接した。
 今彼らが居るのは院長室と書かれたプレートの部屋だった。豪妍さのない事務的な部屋。この部屋で一番お金のかかっているものといったら、今座っている大きなソファーくらいであろうか。ひょっとしたら、青年の後ろにおいてある、大きなジュラルミンケースが2番目に高いのかもしれない。まぁ、これはどうせその青年のだろうが。
 ずらりと並んだ歴代の院長に顔を嘗めまわされ、視線を泳がす誉人の瞳と、こちらをじっと見つめる青年の瞳が交差した。
 誉人は、この青年が得意ではなかった。話していても、何を考えているのか掴み取れない、何度か自分の名を欲しいがために来たGSと、ひょっとしたら一緒かもしれない。もっとも、そういった連中は、彼の母に砂を舐めさせてもらうサービスをプレゼントされていたが。
「そう、邪険にしなくてもいいんじゃぁないかな。少なくとも、僕は君の敵じゃない。確かに、僕は君の名を利用することになるかもしれない。でも君だってこのままじゃいけないって思っているんじゃぁないかい」
 なるべく接しやすくしようとの考えなのであろう、軽い口調で彼は笑う。
 しかし、誉人はこの一言で、目の前の男が父か母(この場合は父であろう)に、事の顛末を聞いたであろうことに気がついた。だからこそ、誉人はこの男にいっそうの警戒心を抱いた。
「ええ、確かにこのままではよくは無い、ってことは分かっています。でも、だからといって何も分からないような人に体を預けるわけには行きません」
 男は呆然としながら、こちらを眺める。
「・・・いや、そうだな。君の言うことはもっともだな」
 薄く男は笑って、付け足した。
「でも体を預けるって意味は違うと思うがね」
 まぁ、確かにそうだが。正確には身を預けておくこと、である。
 そこに第三の声が聞こえる。
「そこの青年の名は、美神、美神公博だ。一応は君の分家に当る。・・・いや、分家に当るのは君のほうか」
 青年の隣に座っている人物、六道勝政がそういった。ピシッと和服を着こなした初老の人物は、しかしそれだけではない威厳をその身に秘めていた。この六道学院をすべるもの、院長という位に座することのできる実力を持ったものの持つ、大きな力。彼は、この学院だけではなく、世界的にも有数な力の持ち主だった。
 いや、彼だけではない。この学院に居るのならば、全員が大小の程度の差こそあれ、必ず持たねばならないスキル。
 一般にそれは「霊能力」と、呼称されていた。
 当然、誉人にもそれなりにあった。彼の家系は代々それに関する職業についていた。したがって、彼にもそういった才能があるらしく、この学院に入ってきたわけではあるが、何しろ彼の先祖が先祖であるわけであるのだから、当然彼はその見たこともない「彼のご先祖様」と比較されていってしまう。
 誉人が思うに、目の前の美神公博も、その一人に違いないだろう、と、いやな気持ちで対峙していた。
 美神公博、名前だけならば、こんな世界にいれば嫌でも耳に入る。美神ひのめという「念力発火能力(パイロキネシス)」という、特異な能力を持つものの子孫で、非常に高い霊力を持っているという。これは噂の域を出てはいないが、彼の霊力は400年前の人々並に高いという話だ。
「まぁ、そう構えないでくれたまえ。確かにこの間は君の名は宣伝になるだなんて言ったが、それだけ君の名前の持つ力ってやつは、大きいんだと自覚しておいてくれ」
 目の前の男が、何の気もなしに首を振る。
「なら、あなただって自分の名前があるじゃないですか。あの「美神」ですよ。僕のよりははるかに一般的で、分かりやすいと思いますけど」
 誉人は悲しくなってきた。この名前ばかりが強調され、では自分は果たしていったいどこで「自分を自分として評価してくれるのだろうか」とばかり、思ってしまう。
 いや、確かに彼の友人たちは、彼を正当に評価して接してくれるだろう、しかし、世間ではその理屈は通じまい。特により多くの人との接点を持てば持つほどに、こんな気持ちになっていくのであろうか。事実、誉人が始めて自分の名を紹介したとき、クラスメートたちは、『あの横島と同じクラス』と驚き喜んだものだ。
 誉人は、悲しくてこぶしを握る。
 男は、こちらの一挙一動を眺め見てから、返す。
「ああ、確かに君の言うとおり僕の名だってそれなりに有名さ。でもね、「美神」という看板と「横島」という看板が一つになったとき、人は何を思うと君は思うかい」
 『美神』と『横島』という名がひとつになったのは、歴史上一つしかない。
「過去の『美神所霊事務所』ですか・・・?」
「そのとおり、まぁもっとも、その後『美神&横島除霊事務所』になって、その後改装され君の家になったわけだが」 
 ちょっと悲しそうに、彼の声の調子は落ちるが、視点を泳がせた後には、再び元に戻っていた。
「さて、この間は僕は君に降臨術をしないかって話を持ちかけたわけだけど、これを行えば君だって、その名に負けないくらい有名になるわけだし、その間霊力が上がれば、小竜姫様のところに出しても恥をかかなくてすむわけだろう?
僕だって一応これでも商売をやっているわけだから、これが宣伝効果になって客が入れば万々歳だ。
双方にとっていいこと尽くめだと思うけど」
 公博は、誉人の瞳をじっと見つめ、笑いかける。
「わかりました。やるかどうかは別として、話を聞くだけ聞いてみましょう」
 悔しいが、公博の言い分も当っているので、誉人はそう答えた。
「はなしのわかる子で助かったよ」
 公博は、うれしそうに言いながら、何かの図面を取り出した。

 そこには、大掛かりな魔方陣のようなものや、意味のくみとれない呪符、さまざまな装置を描いた見事な絵が書いてあった。さらに、それらのすぐ横に、雑な字で何事か補足説明のようなものも書いてあった。
おそらくは『日本語』だと、誉人は思ったが、日本語っぽいだけで、何が書いてあるのかは読み取れない。
 大掛かりな装置は、校内に堂々と建っているホールに設置する予定で、各国のさまざまな霊能力者を呼ぶ予定である。このホールは、普段はまったく使わないが、こういった大きい出来事ほど、その存在を頑なに主張するものであった。
「どう、すごいでしょう。これは予定だけど、現ザンス国王も呼ぶ予定なんだ」
 得意げに公博は笑う。ザンス国といえば、オカルトグッズや、精霊の使役など、こと霊能関係では世界最高の力を持っており、精霊石世界最大輸出国である。最近の霊能力者は、『ザンス国は聖地だ』と公言するものもおり、圧倒的な集心力を誇る。
 そんな国の王を呼ぶのだ、絶対に失敗は許されない。目の前の男は、この術に文字通り、すべてをかけるつもりらしい。
 そして、さらに外部に目を走らせると、ホールの入り口にどうにか読める一文字が・・・
 ・・・学生10000円・・・・・・貴賓の方100000円・・・
「あなたはー、何もない学生では飽き足らずに、せっかく来てくれた方にも金を請求する気ですか」
「こっちだって商売でやってるんだ。慈善活動ばっかりじゃぁ、暮らしていけないんだよ」
 開き直ったように反論する公博。
「それにしたって、これはボッタですよ。学生200人来るとして、その他の客は500人は余裕で来るでしょ。10000×200+100000×500=52000000!!」
 あまりにも大きな金が裏で動くことを知って、誉人は吹きだした。
「おいおいおいおい、スウィーパーってのは基本的に報酬がでかいんだぞ。これで吹いてたら億単位の仕事になったら、君髪の毛全部抜けるんじゃないか」
 公博は、誉人の反応に逆に驚き、逆に冷めた目で笑いかける。
「な・・・、そりゃたしかにそれなりに儲かるほうですよ。仕事が仕事ですから。でも、いくらなんでもここまでお金は取りませんよ」
「へぇ、それは初耳だ。君の母親はあこぎな商法で、多くのお金を依頼主からむしりとっているって聞いたことがあるけど」
 公博が本当に驚いたように言う。言われてみれば、母は趣味で高い服やら、宝石やらで身を包んでいたような気もする。
これは後で母に詰め寄らなければなるまい。誉人がそんなことを考えていると、公博が話を続ける。
「さて、で問題の呼び出す霊だが・・・」
 倦怠感さえ漂う中、公博はさらに話を続けようとしていた。
 その内容は・・・


 あとがきのようなもの

 9月26日
 午前二時ごろのことであった。ごろというのも、先程まで彼は不具合のため睡眠を取っていたので、正確な時間を推し量るすべがなかったからである。
 不意に彼の足が動かないことを自覚する。いくら自分の部屋が汚いからといっても、足を動かせないほどではないはずだ。
 圧迫感に似た、何か。ちょうど動かない足から伝わる感覚は、そんな感じであった。
 まるで、誰かににぎられているような、しかし、物理的な何かではなく、感覚としてただ漠然とあるだけである。
 しかし、その感覚は次第に両の足から這い上がってきて、もも、胴へと侵食していく。
 拘束感さえ生み出されるその感覚に、彼はそれが金縛りであることを知る。
 何事かを確認するために、瞳を開こうとするが、恐怖が勝りそれを許してはくれない。
 だが、奇妙な感覚は己の胸にまで達する。
 彼は覚悟を決め、そしてその眼で何かを見ようとする。
 しかし、目を開けたときには、そこには何もいなかった・・・・・・

 これは実話ですよ、実話。ちなみに、このかれというのが・・・・・・
 
 話のほうは、中盤を超えたかな?ってところで、旧きゃらもぼちぼち出るみたいで。
というわけで、(どういうわけだ)再見。

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