ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER THE BACK IN THE REBORNEDV


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/ 9/29)


ミ−ンミンミン・・・・・・けだるいほど暑い午後、それとは正反対の温度を保った室内・・・『それ』は安置されていた。いや、保置というべきか。
なるべく痛まないように、自体を変えないようにするために。これから来るであろう人たちを迎えるためにも。

 狭い個室に彼らは集まった。いや正しくは集められたというべきか・・・
 こんなことならば、『ここ』に来ないほうがよかったかもしれない。だが、いずれこの事実は知ってしまうであろう。
 部屋には、見えるか見えないかといったギリギリの線のボディコンに身を包んだ美女と、何か業務的さを感じさせる服を着、彼女によく似ている顔立ちをした往年の女性、彼女の腕には、小さな子が抱えられている。さらに、彼女らを囲むようにして神々や、魔族、戦友たちが並んでいる。そして、部屋の中央に、『それ』はあった。
 誰がが、ベッドの上で寝ていた。白いシーツをかけられ、ちょうど顔に当る部分には、白いハンカチのようなものがかぶせられていた。
 美女が狂ったように泣き叫ぶ。
『いやよ、何でこうなってしまったの。全部、全部これからじゃないのよ』
 彼女は、ベッドにしばらく顔をうずめていたが、何かが堰を切ったかのように叫び、泣きじゃくり、ベッドに眠るものを呼び覚ますかのように両の拳で激しく叩いた。いや、実際呼び覚まそうとしていた。
 しかし、そんなことをしても、『そのもの』は、一向に目覚めるはずがない。
 残念ながら、しかし確実に、彼は死んでいるのだから。
 そんな事実に気がついたのか、美女の腕が不意に止まる。そして、あろうことか、シーツの中に腕を突っ込んで、ごそごそと探り始める。次に腕が現れたときには、手に丸い球を持っていた。
『・・・・・・分かったわ、これで過去を変えればいいのね』
 凶事の色を持って、彼女はそれを見つめる。
その名は『文殊』といった。指向性のある霊力の有り様を、一文字に宿して発揮する道具である。ベッドに寝ている人物は、生前、この道具の精製が得意であったという。
 それを見た周りは、ざわめき始める。現在、神魔族の提携により、彼女の考えていることは、著しく規制されている。つまりは、時間という概念を、できうるだけ無視し、過去をさかのぼること。
 それをやってしまったら、彼女もいずれはこのベッドに寝ることになる。
『みんな、令子を止めるのよ』
 小さな子を抱えた女性が、皆に呼びかける。事情が事情なだけに、みなの動きも散漫としているが、それでも皆美女のほうへ向かう。
 美女は、玉に祈りを込めて『雷』の文字を、浮かび上がらせた。精製した本人がすでにこの世にいないため、玉の霊力がうまくまとまらない。ここまで残っていたのが、むしろおかしいくらいだ。
 彼女はそれを天の意と受け止めた。普段は、神も魔も、利益のためなら利用してやろうと思うくらいの彼女だが、このときばかりは、本当に祈った。
 美女が玉を掲げる。今まさに、玉は光の絶頂に達しようとしていた。
 その手が、何者かに押さえられる。
 美女の腕を押さえていたのは、同じ様に『彼』を愛した一人であった。薄い夏服に身を包み、黒く長い髪を腰までおろしている少女。彼女は、玉を美女が手にした時点で、こうなることを予想していた。
『何でよ、どうしてこんなことをするのよ。おキヌちゃんだって、彼が生きることを望んでいるんじゃないの』
 美女が叫ぶ。
 少女も返す。
『確かにそうですけど。でも、そのために美神さんを失うわけにはいかないんです。何かのために、誰かが居なくなるだなんて、おかしいじゃないですか!』
 涙を流して、少女は訴える。
『横島さんも、美神さんも、みんな居なくなるなんて・・・』
 少女は泣き崩れる。
 そのときだった。光の玉は、その力を尊大にも示し、圧迫感すらあるものへと変貌していく。
『文殊が、壊れていく』
 逆風が吹いた。ありのままの状態であるものを、変質させまいと迫る、悲しみの風。
『彼が死んでから、時間がたちすぎたのよ。もう完全に霊気はほとんど残っていないわ』
 美女によく似た顔の、往年の女性がつぶやいた。
(ここまでしかできないだなんて、わたしは、彼に何の力にもなってやれなくて)
 美女は、泣きながら時間を越えるための式を書き換えた。有から無へ、起こりうる現象をなかったままに戻す。
 だが、一向に光はやまなかった。精神状態が異常であった美女では、いくら式を変換させても平静のようには行かなかった。
『おキヌちゃん!手を放して!』
 美女は泣き叫ぶ。
『放しません!放せばきっと美神さんは居なくなっちゃう!』
 少女は意固地になっていた。放せば、入ってしまうから。不完全な式では、人の体を丸ごと一つ、飛ばせるほどの出力などはないのだが、そんなことは、彼女の前では通用しないようだった。
 美女は焦る。焦れば焦るほど、意味もなく霊力が消費されていく・・・
そして、光が臨界に達したとき、それは起こった。

 少女が目を開けたとき、そこは狭い個室の中ではなかった。体と霊体に差異のある彼女だからこそ、起こってしまった現象だった。

GS横島 BY THE ANOTHERDAY ANOTHERIMPRESSION

『こうして、ノスフェラトゥは、明智光秀に倒されましたとさ・・・』
 前方で、教師が何事かを読んでいく。はっきり言って、頭に入ってこなかった。というのも、彼には両親の意外な発言や、意外なところでの修行、さらになんとなく予想していた人物から、それを進められたことで一杯だったからだ。
 机の上で、うつ伏せをしている彼の名は、横島誉人といった。ここ、六道学院では特に珍しくない、黒い制服に身を包み、中肉中背、これといって特に良いでもなく悪いでもない顔を、今は難しそうに歪めている。
 あぁ、時間が惜しい・・・
 きくところによると、小竜姫の修行たるや、生き死に関わるほどの難業、彼にはこなせる自信がまったくなかった。
 だからといって、このままでよいというわけにもいかなかった。ついこの間、母親の仕事に言ったときに、彼女の足手まといになったことは、鮮烈に覚えている。

 悔しかったと思う・・・

 だからといって、このまま一生を棒に振るのも、許せなかった。
 つまりは、いやな悪循環をひたすらに繰り返しているだけであった。

 キーンコーン・・・・・・

 チャイムがなったので、教師がドアから出ていこうとしたときに、誉人は反応した。彼が開けたドアの向こうに見える、柱の影に見知った顔があったからだ。
 誉人は、すっくと立ち上がって、行動に移る。彼に近づいていこうと。

 青年は、2−Cと書かれたプレートを仰ぎ見る。このクラスに少年はいるはずだ。
 長いコートの下に、高そうなスーツを着込んだ美形、派手だが、よく似合ったサングラスが、彼の存在をいっそう引き出していた。しかし、こんな場所ではいろいろと目だってはいたが。
 青年は、目的の少年のクラスの授業が終わるのを待っていた。
彼が欲しい。まともに言われても困るが、本当にまともにそう思っていた。
 彼の名前、力、彼の彼であるファクターを入手することに、情熱を燃やしていた。
 というのも、彼の名前自体、彼の待つ少年同様、大きい意味を持っていたからであった。
 
 キーンコーン・・・

 ベルが鳴った。どうやら授業が終わったらしい。柱に体重をかけていた彼は、そこから中の様子を伺う。
 と、ちょうど教師がドアを開け、出て行ったようだ。彼の背の向こうに、こちらに気づいた少年が見えた。
 青年は、彼に接近すべく、歩みを始める。

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