#GS美神 告白大作戦「かたちのないもの」
投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 9/29)
心の奥に、あるのは笑顔。
他の誰でもない、彼だけの、笑顔。
だから一度だけ、いってもいいですか?
もういいませんから、たった一度だけこの思いを言葉に乗せていいですか?
雨が、降る。
しとしとと地面を濡らし、木々を潤しそして空気を洗い流してゆく。
「え?」
横島には、そんな言葉しか出なかった。
さらりと黒い髪を流すおきぬがじっとこちらをみている。
目の前のひとがさりげなく言われた言葉に、反応ができなかったというほうが正しいだろう。
けれど、考えていて欲しい。
いつものとおりに話して、まるで天気の話をするかのように彼女はこう、言うのだ。
「ずうっとすきでしたよ?」
と。
いままで仲間だとおもっていたひとに。
混乱するなというほうが無理である。
「えっとすきといわれると、俺の事かなあ?」
間抜けと言うべきだろうが、それでも律儀に横島。
顔中まっかにして聞くさまはどこか可愛らしい。
そんな横島の姿に、微笑ましいものを感じながらもやはり、こころの奥に残るのは一抹の、そうゆう対象にみていなかったのだろうという寂しさである。
雨粒が、窓ガラスをつたい、ゆっくりとおちてゆく。
「はい、横島さんのことです」
にっこりと、笑みすら浮かべおきぬはいう。
横島とはえらい違いだ。
けれど、その手のひらは細かく震えており、心臓も通常の倍以上の早さでうっている。
「ど、どして急に?」
まっかになりながら横島は言う。
確かに、こんなことを言うなんて横島は夢にもおもってなかったであろう。
けれどおきぬはずうっと前から決めていたのだ。
いうのならば今日に、しようと。
この日に
一日だけ、この思いを開放しよおと。
彼がまだ彼女を忘れきれないのは知っている。
自分だって、忘れてないひとがいるから。
だけど、かわいそうだと思ったのだ。
言われないままなくなっていく、自分の感情が。
これはきっと、初めての『こころ』
いきかえって(正確には違う)初めてすきになったひと。
だから、この思いを一日だけいわせて下さい。
もう、困らせませんから。
伏せていた目を上げ、ゆったりと、おきぬは、穏やかに言葉を紡ぐ
「今日は、私が生き返って、一年たちますから」
なんとなくそう言いたくなったんです。
すこしだけおどけたように、言う。
「人身御供になるまえに、きめてたんです。もし生まれ変わって、すきなひとができたらちゃんといおうって誰もすきなひとができなかったから、だから、今度、いつかすきなひとができたら言おうって」
一年だつから、丁度いいふんぎり、かなっと思ったんです。
「おきぬちゃん………」
震えるような、なにか搾り出すような声で横島はおきぬの名を呼ぶ。
「すいません、わかってはいるんです。だって忘れてないでしょう」
誰をとは、いわない。
言うまでもないことだから。
「………うん」
それでも、いいたかったんです。
再び目を伏せ、そして言う。
切なくなるほどの、こころをこめて。
ぐっと心臓の位置を服のうえからにぎり横島。
「……ごめん」
搾り出されるような声はひどく、切ない。
おきぬは横島の言葉に、すこしだけ目を眇めた。
そして、笑い損ねた歪んだ顔で、
「謝らないでください」
そんなふうに、言う。
「けど…………」
その先に続く言葉をしっていた、おきぬは首を振りいう。
「だって、わたしは、しあわせですから。」
穏やかにけれど毅然とした態度で。
顔は泣きそうに歪んでいるのにその言葉には嘘はない。
強がっているようなのに、無理がない。
瞬間その美しさに
どくんっと横島の心臓が鳴った。
そしてこの瞬間が、新しいなにかの始まり。
ひとつの告白から始まってゆくなにか。
いまだ形をもたないものがどう変化していくかは、まだ誰にもわからない。
おわり
今までの
コメント:
- Σ(゚ロ゚)訂正一こし忘れてる
つーことでさんかしてみました(笑)なんだかいつにも増しておかしいですけど許してください(涙 (hazuki)
- 先を越された・・・っ!!?おキヌ者のプライドがあああっ!!!!
何て冗談です、素直に『告白』ですね♪ああ、良いなあ。 (えび団子)
- 正統派ですね。ええ、そのまま「告白」でした。
まさかここまでストレートな投稿がこの企画に登場するとは予期しておりませんでした。
気持ちのいい後味の残った王道の作品だったと思います(^^ (マリクラ)
- 見ることも触れることも出来ないけれど、確かに存在し、それを意識するからこそ自分の想いを伝えるのでしょう。
その答えがたとえ切ないものだとしても、悲しむことはないのかもしれません。
それで全てが終わったわけではなく、二人の新たな始まりなのでしょうから。
投稿、お疲れ様でした。 (矢塚)
- 震える手、笑い損ねて歪んだ表情……。
おキヌちゃんの様子が、心が、ダイレクトに感じられて切なかったです。
でも、しあわせも、想いをカタチにすることが出来たしあわせも感じることが出来たので後味はすがすがしいものでした。
hazukiさんらしい心情描写が光る正統派の告白、堪能させていただきました。
企画への投稿ありがとうございます。投稿期日までチャットでのお約束どおりにしていただいてスイマセン。 (斑駒)
- 『サバイバルの館!!』ではうやむやになってしまったおキヌの告白。
再度の告白を横島は受け止めてくれたが、受け入れてはくれない。
或いは、それが分かっていたからこそ、彼女は想いを告げ彼はそれに真摯に答えられたのでしょうか。
それでも、この行為は決して無駄ではないのでしょうね。
投稿お疲れ様でした。 (dry)
- 言ってしまった「すき」の言葉。
それがどーいう意味なのかはわかっているんです。
一言で今の関係が崩れるかもしれない。
あなたに受け止めてもらえる自信なんてない。
正直―怖い。
けど、私の『こころ』だから。
どーしても言いたい『ことば』だから。
私はあなたに言いました。
「ずうっとすきでしたよ?」
と。 (マサ)
- 寄生してごめんなさいっっっ!(平伏)
とゆーことで(爆)。おキヌちゃんの言葉と表情の変化が無敵に素敵でした♪(病気的発言) それを驚いた様子で見る横島の姿に微笑ましいと言いますか、この二人らしい初々しい味があって私は本当に好きなんですよね(笑)。健気に頑張るおキヌちゃんに返した横島の言葉が彼女に与えたものは辛いのかもしれませんが、その後に続く横島の台詞に期待を感じずにはられないですね。ちょっと気になったのはおキヌちゃんが生きていた時代(300年前)で女性が男に(悪い言い方をすれば)言い寄るという行為はあまりよくは見られない気がします(間違いだったら謝らせていただきます)。で、−1として差し引き+99と言う結果に(末期症状)。 (マサ)
- 横島とおキヌが、二人寄り添った姿って何か良いんですよねぇ。
爽やかな読後感に浸っています。ちょっと切ないけれど、でも二人の心象風景がちゃんと見えました。
「告白」のコンセプトに、実に相応しい作品だったと思います。
素敵な作品に感謝しつつ、賛成の一票を投じさせていただきます。 (ロックハウンド)
- 個人的に、おキヌの告白に幽霊として積み重ねてきた300年が感じられました。
大人びた、と言うより、横島よりずっと大人だなぁ・・・と。
数々のおキヌの台詞にじんときました(^^)
投稿、お疲れ様でした(^^) (NGK)
- 相変わらず神のごとき文章力ですた
これからもがんばってね〜 (トシ)
- 実に素直な告白ですね。
忘れられない横島と、それを理解しているおキヌの微妙な関係が切ないです。
企画の主旨を考えると、こういう作品を書かなくてはいけないんですよね。(苦笑) (赤蛇)
- 何時かは誰もが「決着」をつけなくちゃならない。
それは、なあなあで誤魔化して自分の中から消え失せる事はできても、
例え自分に分が悪くても、その人が大切で、想いが重ければ重いほど
逃れられない「誓い」。
身を切るような淋しさも、埋めきれない喪失感も、
誇り高い自分と相手に対しての対価。
目の前の路が闇だとしても、そこに一歩踏み出す勇気がある者、
その人だけが、ある気高い感情を持ちえる権利がある。
その「言葉」は、その人の内にある。
(すんませ〜ん、うまいコメントが浮ばないので、こーゆ言葉を贈らせていただきます(爆)) (みみかき)
- やや遅いコメントですが、許してください。ヒロです。
え〜僕ごときの発言があなたの作品を損なうかもしれないと躊躇してしまうほど、素晴らしいできです。おキヌの視点により告白というものをダイレクトに読者へと伝えようとした手腕はさすがです。
重ねて言いますが、僕ごときの発言により、この作品を損なってしまいましたらお詫びいたします。
では、今後とも頑張ってくださいませ。 (ヒロ)
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