ザ・グレート・展開予測ショー

『ある。』 〜〜〜〜(星屑の水晶瓶)〜〜〜〜       


投稿者名:えび団子
投稿日時:(03/ 9/27)


珍しいモノが好きな子供でした。皆がはまっているゲームも、
流行ってたおもちゃも。何も関係がなくって・・・。
ひたすらに、己の信念のみを信じ。執着する。
危険すらも省みない行動には誰もを圧倒し心配させた。





「なあ、なあっ!知ってるか、このカードさあ・・・」


小学生低学年だろうクラスの一角に男子が幾人か集う。
見つかると先生に没収されかねないスリル感を味わいながら
自分の所有している自慢?の物を誇りあう。端から見てると
自慢大会以外のなんでもないのだが・・・。


「これは超レアなんだぜっ!?俺何か何袋買ったことか。」


机の上に座り物を高々と掲げる少年。周囲の男子は歓喜交じった
歓声を上げ、触らしてなど交換してなど様々に言い合っている。
その雰囲気に昼休みを先生の机で居眠りしていた彼が気付いた。
むっくりと起き上がり眠たげな瞳を擦りながら叫んだ。


「ふんっ!そんな物が凄いもんか!!」


木造製の教室に鈍く響く大声は静寂を巻き起こし。


「僕のコレクションに比べたらちっぽけなもんさっっ・・・!」


偉く得意げに言い張る彼。『どうだっ』と張った胸は細々として
背の順で並べば一番前に当たるだろう。ひょろりと伸びた足を
よちよちと自分なりに早足で集団に近づいて行き・・・


「なんだい?この子供騙しなカードは?!はははっ、笑っちゃうね本当。」


当然のことながら周りの男子に酷く扱われたのは言うまでもなく。
放課後になる頃には服がボロボロになるほど引っぱられた形跡があった。
まあ、一向に彼ら男子一団の意見を無視し否定した末路でもあった。

いつものことさ。


「ちぇっ、あいつら何も分かっちゃいない!物の価値ってやつを・・・」


愚痴を溢しながら帰りを一人歩く。道端の石ころを蹴っ飛ばすその姿は
哀愁が漂っていた。彼にとってお菓子の付録にあるカードなどどうでも
いいのだ。そんなものより世界に二つ、いや希少価値が高く何処にでも
なさそうなものなら何でも良かった。少ない珍しい物はとにかく貴重だ。
それが彼の固定概念だった。


「ま、いいさ。」


両手を首の後ろで絡ませ足を高く振り上げ歩く、その時。


「厄珍くん〜〜〜〜っ!」


後方から赤いランドセルを背負い駆け寄ってくる少女。
名は覚えてなかった。人の名前を覚えるのはこの頃は苦手な口だった。
すっと立ち止まり待つ。数秒で追いつき・・・


「ねえ、どうしたの?さっき教室で・・・」


この子の外見はクラスに一人はいるだろう飛び抜けの美人で、
皆の憧れであった。(男子のみ)白い肌と細い身体。
低年齢特有の顔の大きさと引けをとらない大きな瞳。

蒼を宿す、ひ・と・み。

ミステリアスな印象を受ける彼女は無口で大人しい子だった。
髪の色は金色でウエーブがほんのちょっとかかった長い腰まで伸びる
長髪は綺麗に波を描き揺らいでいた。良い香りが鼻を刺激し。


「別になんでもない、物の価値観が違うだけさ。」


妙に大人ぶった口調に態度は小学生を思わせなかった。
外見はどう見ても子供であどけなさが一杯だ。


「ふ〜ん・・・私には分かんないな難しいことは。」


思いっきり前屈みになって答える彼女に不覚にもときめいていた
自分が情けなかった。女の子のことなど一度もこんな風に考えたことが
なかったから・・・

不思議・・・だな。


それから家路を辿り、その間に何口か話しただけだった。
心臓が忙しく動き邪魔であんまり喋れなかったからだ。


「じゃあね、私の家ここだから。」


数メートル先に迫る自分の家に、別れを告げ走り去ろうとする彼女に
突発的に言葉が飛び出した。

待って・・・!

彼女は『ピクッ』と反応し

待っていたかのように・・・


「何・・・?」


振り向きながら、髪が曲線を作る。金色が夕日を反射しキラキラと
眩しい程には至らずも輝いていた。赤いランドセルの中の教科書が
ゴトっと動いた。


「え・・・っとあの・・・・////」


思考ができない。


自分が言いたいこと・・・


自分らしいこと。


何か・・・教えてくれ。


すがる目つきで一度天を仰いだら・・・


「これ・・・あげる。」


ぶっきらぼうに出した水晶の瓶を渡す。中身は少量の砂が入っており
さらさらと音がしていた。不規則なリズムで光を放つそれは星屑でも
あるのかのように煌びやかだった。


「えっ・・・何なのこれ?////」


気持ち頬が赤く染まっていた少女。


「うん。ずっと先に分かるよ。世界にたったひとつだけだぞ、それ。」


早口でまくし立てその場をすぐさま離れる。
乾いた土を力一杯に踏み雑草も踏んだ。
背から聞こえる彼女の声がどんどん小さくなっていく。
振り向きはしない、絶対に・・・


「厄珍くん〜〜〜〜!皆の人気者なんだからっ・・・競争率高いんだからね

っ!?男の子達だって言わないだけで本当は厄珍くんの珍しい物を楽しみに

してるんだからーーっ!!珍しい物って面白いよねーーーーっっ!!!!又

見せてねーーーーっっ!!!!」







彼がこれを聞くことはなく。成長する過程で危険度は増していき若き
頃は大きなリュックを背負い一人で宝物を探す一匹狼だった。
時には死と隣合わせだった、無謀なまでの挑戦はいつしか中国拳法まで
極めさせた。今に名残は殆どないが。『アル。』も同時期と推測される。
しかし、いつまでもは続かなかった。年と共に体力も落ち足腰も弱くなって
しまった。但し、裏のルートに顔が効くようになり珍しいものは以前にも増

して手に入れられた。昔のわくわくした感触を忘れていた。




――――――――ずっと、先にあるもの・・・――――――――




「んっ・・・居眠りしてたあるか?」


目を開け黒い眼鏡を取りキュッキュッとハンカチで拭く。










数時間後、厄珍堂は長期の休暇を取り彼は何処かに消えた。
血が騒いだのだろう、誰に言うこともなく去っていった。
いつかは戻ってくるだろうがそれは先の話・・・
今は過去との対面だけが―――――最優先―――――


「久しぶりあるね・・・墓参りするのは。」







亡き少女に捧げる一輪の花が、石壇に飾られていた。







同じく大切に持っていた、あの時の水晶瓶も一緒に・・・








緑に囲まれ昔の面影を残した場所から。








男は去って行った。









『厄珍 ・・・・』と記された墓標は後の名ははっきりとは読めなかった。
分かっているのは彼の名前ではないと言うことだけ・・・。



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