ザ・グレート・展開予測ショー

防。(中編)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 9/25)


「なぁに、勝手に挨拶してんのよ?」

あんたタダ弟子でバイトでしょーがっ
と、倒れこんだ少年を、ぎろっと睨み美神。


「けど、まだ一回しか逢ってないやろーが俺の美神さんの手を握るなんてっ」

少年は、床にうずくまり、よよっと夫に平手打ちされ倒れこんでしまったよーな妻のような格好で、両手で頬を抑えうるるるっと目を潤ませ言う。

「誰が、誰のですってえ?」

地を這うような声で美神。
きっと、この場に士道がいなければ、美神は、この少年を足蹴にしていたであろう。

(………いや、いいんだけどな)

きっとすっかりこの二人のやりとりに呆然と、みとれていた(?)士道である。


と、そんな二人の漫才に終止符を打つべく、ほわわんっと穏やかな声が降って来た。
「まーまーそんなに、美神さんも怒らなくても」

歳のころは少年を同じくらいであろうか?

今時珍しい、漆黒とすらいえるほどの艶やかな黒髪は腰まで伸びており、キメの細かいで
あろう、滑らかな白い肌との対比が美しい。
際立った─とびぬけた美少女と言うわけではないが、顔の造形は整っており美しいというよりも、可愛らしいといったほうがしっくりくる。
際立っているとしたらやはり、その空気だろうか?
身に纏う空気は穏やかで、そしてどことなく清涼感がある。

先ほどの美神が、華やかというならば、この少女は清楚というにふさわしい。

手には盆を持っておりそこには、ほかほかと湯気のたったお茶と、手作りであろう素朴な和菓子が載せられていた。

とん、とテーブルの上にお茶と茶菓子を置きふうわりと、笑う。

「立っているのもなんですから、おすわりくださいね」
にっこりと、どこか安心させられる笑顔を見せ、少女はむうっと口を尖らせて二人に向きあう。

「二人とも、お客さまがびっくりなさるじゃないですか」


少年がどつかれたことに関してよりも、客の前でしていることについてが文句をいう対象になるらしい。

「あ、それもそーね」
ぽいっと横島から視線を逸らし、士道の座っているソファーに向かい合わせに座る。


「今回の仕事については、聞いてますよね?」


きりっと、ソファーに座った途端この表情である。
完璧なまでの、プロの表情だ。

士道は内心、その変わり様に感嘆しながらも、士道もそんなことは表情に出さずに頷くことで、同意に変えた。


人差し指で顎を抑え、美神は言う。

「悪霊を集めて、ある─言葉を濁していてもしかたないでしょうか?黒魔術の実験につかおうとしてるボケがいますので、それを─」

「─阻止するわけですね」
引き継ぐように、士道がその言葉を繋いだ。


「ま、上の判断じゃ、私たちと符術師として、名高い貴方─士道さんがいればなんとなるそうですよ」
肩をすくめ美神がいう。
まあギャラの取り分多ければ私は、いいんですけどね。
まったくもってそのとおりである。

名高いのかなんぞどっちの意味なのかわからないけれども、士道はそんなものに興味はない。




数分二人は、軽い打ち合わせをしただけで、段取りを全て決めると、美神はさきほどの少年と、少女を紹介する。
「氷室キヌと、いいます。一応死霊使いです」
ぺこっと頭を下げて少女はいう。

(死霊使い─…)

もうその存在自体が希少といわれるほどの能力である。


(始めてみた)


ほんのすこし目を見張り、士道はふたりをみる。

「で、俺は、横島忠夫……えっと荷物もち?兼霊刀……とかいろいろでわからんかなあ??」

とは首を捻りながらの少年である。
どうやらこの少年自分の力をきちっと把握でききれてないのであろう。
それはこの年頃にはよくあることであり、自分にはなかったことなので、なんとなく微笑ましく思える。


いや羨ましいともいえるのかもしれない。



自分には、たったひとつの、力しかなかったから。




つづく

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