#GS美神 告白大作戦 「Kiss ××× again」
投稿者名:Maria's Crisis
投稿日時:(03/ 9/25)
―――そっと目を閉じて、あなたを感じるこの季節。
私の告げたその想いに、横島はただただ狼狽するばかり。そして、私を見つめるその表情は「冗談」という言葉を催促するもの。
もちろん、私はその催促に乗るつもりはない。冗談なんかじゃない。私の本気の想いなんだから。
「いや、でもさ・・・。タマモでもわかるだろ?俺の立場・・・」
―――素っ気無い言葉。
私はむっとしたその気持ちを『勇気』に変えて・・・。
―――そっとキスをした。
「・・・なっ!?」
驚いた表情の横島。
そして、その向こうに見える同じような表情をした人々。
「おい!タマモ!よせって!」
少し顔を赤くして私を突き放す横島。
ねえ、恥ずかしいの?みんなの前でこんなことをして?
ねえ、恥ずかしいの?でも、キスしたのは私よ?横島が照れることはないでしょ?
『初恋』という言葉の定義って、簡単そうに思えるけど、実は複雑なのよね。
もし、あの時・・・、あなたと出会えなかったら、私は人間達に殺されていたに違いない。あの場から逃げれることができたのは、あなたのおかげ。
命の恩人?それって、その言葉の定義に当てはめちゃってもいいの?
平安時代。私の前世。その頃にはあなたは存在していなかった。似た存在だったら、いっぱい・・・。
でも・・・、似ているだけではダメなの・・・。
―――あなたでなければダメなの。
一過性の感情のものだとは思えない。
あれから何度もあなたの香りが、この私の体を包みこんでくれた。
そう・・・、あなたが私の体に入っていく度に幸せを感じた。
不覚よね・・・。この私が・・・。
でもね。私は金毛百面九尾。
思えばこうやって、あなたに似た存在に頼り、幾千の星霜を駆け抜けてきたのよね。
「・・・なあ、タマモ?」
「好きなのよ、私・・・」
「・・・・・」
「だって、そもそも横島が・・・」
「ああ、分かってるよ。覚えているよ・・・、あの時のこと・・・」
「そう。横島がいけないのよ」
「でも、あの時俺が助けてやらなきゃ、おまえ・・・」
「・・・・・。そうね・・・。ごめん」
「い、いや・・・。謝るほどのことじゃないけど・・・」
「でも・・・、うれしかった・・・」
横島の相変わらずの狼狽の様子・・・。周りの視線を気にしているのかしら?
逆に私は一向に気にならなかった。
『告白』なんて言葉は、少し大げさだけど、ここはどうしても譲れない場面。
「私に恥をかかせる気?」
「えっ?うっ・・・、いや・・・、そんな・・・」
私達に降り注ぐ、周りに居る人々の視線・・・。それを気にしながらの苦渋に満ちた横島の表情。
そんな表情にもお構いなく、私は強く迫る。これは女のプライドを賭けた勝負だから。
「横島は・・・、嫌いなの?」
「いや、俺も・・・、好きだよ」
「じゃあ、お願い・・・」
「・・・でもさあ」
曖昧の言葉を並べて、その場を取り繕うとする横島。
横島の気持ちを考えれば、言ってはいけない言葉だと思う。でも、私の焦れた気持ちがその言葉を発せさせた・・・。
「美神さんのことでしょ?」
「・・・・・」
横島の表情が急に険しくなる・・・。
言ってから後悔したけど、もうあとには戻れない。
「美神さんが横島に・・・」
「違う!美神さんは関係ない!」
「嘘よ!だって、私、聞いちゃったんだもん!美神さんが横島に・・・」
そう言って、見つめた横島の表情は怒っているようにも、怯えているようにも見て取れた。
だから・・・、私はこれ以上を続けることを止めた・・・。
「・・・私、帰る」
そう言って、この場を去ろうとする私に、後ろから横島が声をかけた。
「わかったよ・・・、タマモ・・・」
その言葉を聞き、振り返る・・・。
「本当に・・・?」たった一言だけど、私はかみ締めるように横島に問いかける。
「ああ」
そう言って、にこりと笑う横島。さっきまでの怒りの感情はどこからも感じられなかった。
「本当に・・・?」もう一度、かみ締めるように横島に問う。
「ああ」
少し潤んだ視線を向けながら、笑ってくれた・・・。
「・・・ありがとう。横島」
自分の頬が少し緩むのが分かった。
同じように横島もにこりと微笑んで「いいよ、分かったよ」と言ってくれた。
「じゃあ・・・」
「ああ」
横島はそう応えると、後ろを振り返る・・・。
「おばちゃん、やっぱ『ごん兵衛 きつねうどん』も・・・」
「やったぁ〜!」
私の口から思わず歓喜の声が漏れ、もう一度あなたに――カップうどん――にキスをする。
「やっと決まったみたいね・・・。はい、じゃあ、2685円ね・・・」と、スーパーのレジのおばさん。
横島は美神さんからもらった2500円を先に手渡すと、ポケットから500円玉を取り出し、それもレジのおばさんに渡した。
「じゃあ、315円とレシートのお返しね。ありがとうございました」
横島と私がそこを離れると、後ろに並んでいた他のお客さんが待ちくたびれた表情で買い物かごをレジ台に乗せていた・・・。
「はあ・・・」
横島が大きなため息を吐く。
「美神さんには2500円までで済ませて来い、って言われてたんだぞ」
そう言って、恨めしそうに買い物袋を見つめる。
「うん、さっきも言ったけど、聞いてた」
「怒るだろうなあ・・・。何億も稼いでいるのに、こういうことは一円単位でうるさいから、あの人・・・」
「ホント・・・、つらい立場よね・・・。でもいいじゃない?レシートを捨てちゃえば」
「まあ、それはいいんだけど、はみ出した分は俺の自腹だぞ?給料日まであと十日もあるっていうのに、残り315円でどうせいっていうんや・・・」
「・・・・・」
「あっ・・・、うん、まあ、なんとかなるさ!貧乏にはとっくに慣れてるしな!」
そう言って、無理に笑ってみせる横島・・・。
そう言えば、横島があなたと出会わせてくれたのよね・・・、と手に持っているカップうどんにつぶやいてみる。
「まさか、カップうどんにキスするとはなぁ・・・。そりゃあ、買わなきゃあかんよな」
呆れた表情で私とその手にあるカップうどんを一瞥する横島。
「あ・・・、でも、タマモのキスマークの入ったカップうどんなら、普段の十倍以上の値段がつくかもなあ・・・」
「・・・サイッテー」
その言葉に、少し照れたような笑みを浮かべる横島。
「ねえ、横島?」
「あん?」
「事務所に戻ったら、これ半分っこしてあげよっか?」
「おいおい、そんな貧乏くさい・・・。いや、まあ、たしかに貧乏なんだけど・・・。っていうか、『あげよっか?』って、それは俺が金払ったんだぞ!」
「じゃあ、いい。私が食べる・・・」
「あ、いや・・・。余った汁は取って置いてください・・・。ご飯にかけて食べますんで・・・」
「私、先に帰るね。お腹すいちゃったぁ・・・」
「お〜い!ちゃんと汁、取って置けよ〜!」という横島の声を背に、私は事務所への最短コースを民家の屋根伝いに走り始める。
夏は誰に告げることもなくいつのまにか過ぎ去り、外は少し肌寒くなってきた・・・。
―――そっと目を閉じて、あなたを感じるこの季節。
もう、うどんの美味しい季節よね?
完
今までの
コメント:
- 15回目の投稿です。
というわけで、マリあんの企画SS一番手は私でした♪・・・っていうか、私ですみません、ごめんなさい(汗)
今回もこのような企画を設けていただいた斑駒さんに感謝いたします。そして、勝手な行動をしてしまい、申し訳ありません(恐縮)
斑駒さんの号令がかかってから、二時間くらいで書き上げたものでして、いささか推敲の足りない部分も多くて恐縮です。
普段はこういうことはしないのですが、ネタがかぶるのが怖くて・・・(^^;
なんていうか、早い者勝ちな面っていうのもありますよね(^^; (Maria's Crisis)
- うどんが美味しいどころか、鍋焼きうどんが恋しいくらいの季候の折、いかがお過ごしでしょうか(笑)
企画への早速のご投稿ありがとうございます。
今回の告白、タマモにとってはそれほど大それたことではなかったかもしれませんが、横島くんにとっては告白した人の事を想い、悩み、自分の気持ちも考慮した上で答えを返さなければならない、非常に重たいものになりましたね。
セリフのやりとりひとつひとつに両面の解釈での解説を加えたくなるくらいに緻密な構成がすばらしかったです(笑)
なんかこー。企画がこのまま全てこの方向に流れても、それはそれで面白いかもしれないと思う今日このごろです(礼) (斑駒)
- 季節は夏と秋の狭間。食欲と芸術。そして熱燗、鍋、おでん、すき焼きへの愛を日々募らせているハウンドです(笑)。
なんだか「おいしい」愛を感じました(笑)。
タイトルにも驚きましたが、いやぁ、作風がなんとも可愛らしいですねぇ。胸ドキものです。
と、いいますか、マリクラさんがこういう『きゅーと』な展開を書かれるとは、このハウンド、してやられました。お見事です(感服)。
キツネうどんになんでそこまで? というツッコミはさておき(笑) 優しさゆえか、横島くんも苦労してますなぁ(笑)
キャラたちの可愛さと、2時間でこれほどのレヴェルを仕上げられたという、その手腕に賛辞と敬意を表して、賛成の一票を投じさせていただきます。
大変、美味しゅうございました。どうも、ご馳走様でした(笑) (ロックハウンド)
- いや、まぁ……まさかマリクラさんにまで騙されるなんて……(ノД`)(挨拶)
何となく、マリクラさんには『正統派』というイメージがあった所為か、最後まで騙された事に気づく余裕もなく読みきってしまいました。――非常に、美味しい話でした。一粒で二度美味しいというか、いちタマ者としての作品そのものの意味というか……(謎)
ここまで美味しい話を二時間で書く事が可能なマリクラさんに、とてつもなく深い尊敬の念を抱きつつ、『ごちそうさまでした』の一言を言わせて頂きます。
ごちそうさまでした(-人-)
(ロックンロール)
- ああ、もう(涙)感動しか残らないよお(><)
騙された、かんっぺきに騙されました!うどんねえ、美味しそう♪ (えび団子)
- やっぱり、レジの前でカップうどんにキスをするのは、恥ずかしいことだと思います(挨拶w)
てことでして、前作をちゃんと読んでいたものですから何の疑問も持たずに読みすすんだわけでして、後半部分でうどんに告白だったんかい、と爆笑してしまったわけでして、なんか、負けた、みたいな(笑)
ともかくも、生き生きとしたタマモと横島のやり取りがすっごく良いなあと思いました(^^)
投稿、お疲れ様でした。 (矢塚)
- これを読み終えた瞬間に・・・・
「うあああああ!!!ネタかぶったあぁぁぁっ!!」
と、叫んだのは秘密です(笑)
マリクラさんが書いたほうが上手いし面白しね♪
そして、
「ああ・・・マリクラさんも読者をひっかける時代なのね・・・ (ノД`) 」
と思ったのも秘密です(笑) (ユタ)
- ・・・というわけで、この投稿企画にみなさんも参加してみませんか?
参加資格は特に無し、ただ『告白』をテーマに投稿するだけです。
詳細はGTYのサポートサイト、マリアのあんてなトップページの掲示板を参照してください。 (マリクラ)
- マリクラさん、お見事なひっくり返し…自分危うくだまされるところでした(汗)
横島が狼狽したのは、タマモがキスしたうどんに例の如く嫉妬したと勝手に解釈して、読了。面白かったです! (AS)
- ひっかけられた、騙された……(ノД`)
なんでとーとつにタマモ横島が? とか思ってたら、こんなオチでしたか。
いやこれはこれで素敵なオチだと思います。はい、面白かったです!
(……騙されて勘違いしたまま読んでもそれはそれで……) (紫)
- こうして見るとタマモっていい女だなぁ・・・と、そう思いました。
・・・いろんな意味で(謎)。
また、オチを見てびっくりしましたが、マリクラさんの文、流れが上手いことの証明ですよね(^^)
特に最後の『もう、うどんの美味しい季節よね?』にはやられました(笑)
投稿、お疲れさまでした♪ (NGK)
- つゆの染みたお揚げが、これまた美味しいんです(力説)。
大好物に対するあふれんばかりのタマモの愛が、カップうどんへのキスに集約されていますね(笑)。
購入決定で歓声を上げる子供っぽさが可愛らしいです。
投稿お疲れ様でした。 (dry)
- いきなりの初球フォークです。
それこそもう、ベース手前でストンと落ちるタマに騙されました。
それでいてパスボールにならずに纏め上げているので、やっぱり上手いなぁと感心してしまいました。 (赤蛇)
- 変化タマっ!!(挨拶)
まさかマリクラさんが変化球を投げるなんて………
単純な私は見事に引っかかりました。ええ、疑いもしませんでしたよ。
タマモちゃんのうどんへの愛に一票です♪ (ハルカ)
- 斑駒さんへ:
>うどんが美味しいどころか、鍋焼きうどんが恋しいくらいの季候の折、いかがお過ごしでしょうか
はい、元気です♪
一番最初ということで緊張しましたが・・・、いや、別にそれほどでもなかったのですが、私の後ろからも面白い投稿ががたくさんされましたので大成功でしたね(^^
ハウンドさんへ:
>熱燗、鍋、おでん、すき焼きへの愛を日々募らせているハウンドです
もうすっかり、おじさまですね(^^;
>キツネうどんになんでそこまで?
いや、なにかに固執してもらわないと話が作れなかったものでして(^^;
「きゅーと」という言葉もなにか不思議な響きを感じましたが、ともかくコメントありがとうございました(^^ (マリクラ)
- ロックさんへ:
はい、自称「正統派」です(^^;
こういうのはもうやらないと思いますので、これからは安心して読んでください(^^;
騙してしまってごめんなさい(^^
えび団子さんへ:
いや、別に感動するような内容では・・・(^^;
とりあえず、騙してしまってごめんなさい♪
矢塚さんへ:
前々作の続きのようなタイトルでしたが、思いつかなくてテキトーにつけただけのなのです(^^;
「騙しの矢塚」さんを騙せたということは、私の勝ちですか・・・?(^^; (マリクラ)
- ユタさんへ:
このコメントを読み終えた瞬間に・・・・
「どうせ最初から参加する気ないくせに・・・」
と、つぶやいたのは秘密です(笑)
ユタさんが書いたほうが上手いし面白いのにね♪
そして、
「ああ・・・ユタさんの企画投稿を読める時代はいつやって来るのか・・・ (ノД`) 」
と思ったのも秘密です(笑) (マリクラ)
- ASさんへ:
>横島が狼狽したのは、タマモがキスしたうどんに例の如く嫉妬したと勝手に解釈
面白い解釈だと思います(^^
コメントありがとうございました♪
紫さんへ:
なんでも最後まで読んでみないとわからないと・・・(^^
騙してしまってごめんなさい!
NGKさんへ:
NGKさんのお好きなタイプは魔鈴さんかと思ってましたが・・・(謎)
文や流れについては、まだまだ修行不足です(^^; (マリクラ)
- dryさんへ:
かつおのだしが効いていると、なお美味しいのです(力説)
考えてみれば、ある意味パラノイアなタマモちゃんでしたが、可愛く感じていただけたようでほっとしています(^^;
コメントありがとうございました♪
赤蛇さんへ:
初球フォーク・・・。ええ、結構空振ってもらえたようです。振ってもらえないと、ただのボールですからねえ(^^;
上手く纏まっていたようでよかったです(^^
ハルカさんへ:
変化球については、まあ、せっかくの企画ですので、お祭り感覚に投稿してみたんです。
今後はまたストレート勝負になると思いますが、よろしくです(^^ (マリクラ)
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