ザ・グレート・展開予測ショー

じゃんけん。


投稿者名:ライス
投稿日時:(03/ 9/22)





【じゃんけん】

 (「石拳」から。一説に「両拳」の中国音から)拳の一種。掌を握ったのを石、掌を開いたのを紙、人差し指と中指の二本を出したのを鋏とし、鋏は紙に、紙は石に、石は鋏に勝つものとして勝負を争う遊戯。また、これで事を行う順番を決める。石拳。
                          ―広辞苑 第五版より―




 今、ある場所で壮絶な戦いが地味に繰り広げれていた……!

 戦場には横島とルシオラの二人。
 二人ともクッションに座り込み、対峙するように向き合っている。
 どちらも顔は真剣そのものだ。


「準備はいいか……、ルシオラ?」

「……望むところだわ、かかってきなさい、ヨコシマ!」

「じゃあ、『最初はグー』で始めるぞ?いいな?」


 頷くルシオラ。


「せーの……、」

『最初はグー、じゃんけん、ポイ!!』


 横島はチョキ。ルシオラはパー。
 勝ったルシオラはすぐさま人指し指を突き出し、横島の顔に向けて次の行動へ。


「あっち向いて、ホイ!」


 ルシオラの指は右を指す。
 しかし、横島の首は下に。そして、二人は素早く元の体勢に戻って、


『じゃんけん、ポイ!』


 今度は横島がパー。ルシオラがグー。
 横島の勝ち。すぐに人差し指をルシオラの顔に向け、


「あっち向いて、ホイ!」


 横島の人差し指は左。
 ルシオラの首はというと……、これも左に向けられていた。


「っしゃあ!」


 軽くガッツポーズする横島。
 その表情は嬉しそうである。負けたルシオラは少々膨れっ面をしていた。


「もう、ヨコシマばっか勝ってるじゃないの!?文珠か何か使って、細工してるんじゃない?」


 疑いの眼差しで横島を覗き込む。しかし、横島は笑いながら言った。


「まさか!時の運だよ、時の運。さぁ、背中を向けて向けて。」

「ハァ〜イ………。」


 ルシオラは仕方なそうに背中を横島の方に向けた。
 横島は人差し指一本のみを彼女の背中の首の付け根辺りにそ〜っと、触れる。



「ひゃあっ!?」



 人差し指が触れた途端、ルシオラは可愛らしい奇声を上げ、背中を仰け反った。


「おっと、声は出さないルールだぞ?」

「………ヨコシマの意地悪。」


 そして横島の人差し指が背骨のラインをつぅーーーっと、ゆっくり下に降りてゆく。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


 声を出せないせいか、ルシオラの声にもならないくすぐったそうな呻き声が漏れる。
 それは何だか艶かしく聞こえる声だった。
 顔の方も、笑い出すのを必死に堪えているせいで、
 眉を吊り上げ、赤面しながらまぶたを閉じている。
 それが可愛らしくも、妙に色っぽい。


 そして、横島の指が腰の辺りまで来ると、横島は背中から指を離した。


「ハイ、おしまい。」


 横島がそう言うと、ルシオラは床に手をついて、少しうつむくと顔を後の横島に振り向ける。


「……随分とゆっくりだったじゃない?」

「さぁ?」


 とぼける横島。すると彼女は再び横島の方に身体を向け直した。


「このまま負けっ放しなのも性に合わないわ……!
 なんとしてでも勝つまでやるわよ?
 そうだ、さっきヤったアレ、やりましょう、ね?」

「いいけど、またオレ勝っちゃうぞ?この調子じゃ……。」

「言ったわね?ヨ〜シ、絶対に勝ってやるんだから!!」


 そしてまた戦いが始まった……。


『最初はグー!じゃん、けん、ポイッ!!』


 意気込むルシオラはグー。対する横島はチョキ。


「やったぁ♪」

「チクショ〜。」


 すると、勝ったルシオラは横島の右ホッペをつかむ。
 そしてまた、小刻みに拳を素早く振って、


『じゃんけん、ポイッ!』


 横島はグー、ルシオラはパーだ。
 今度は左のホッペをつかんだ。
 横島はもう後がない。
 しかし、皮膚の伝わる彼女の細い指の絹の様な感触がなんとも言えず、
 そんなことはどうでも良かった。
 両方のホッペを手でつかんでいるので、今度は声でじゃんけんをする。


『じゃんけん、ポイ「チョキ」!』


 横島はパーを出している。


「ヤッタわぁ、ようやく勝てた♪じゃ、遠慮なくいかせてもらうよ?」

「あぁ、わひゃっひゃよ、はひゃくひゃれ、ルヒオラ。」

「じゃあ、行くわね?タテタテ、ヨコヨコ、マァ〜ル書いて、チョン♪」

「ッテ!?」


 ルシオラはさっきのお返しと言わんばかりに、少しキツめにホッペを引っ張って離す。


「イテェじゃないか。」

「アラ、さっきのお返しよ?文句ある?」


 にこやかに横島の苦言を流すルシオラ。横島も悔しかったのか、再勝負を願い出た。


「クッソ〜、ルシオラ、も一回だ!」


 そして……。


『アイコでしょ!!』


 グーとグー。さっきの再挑戦から、かれこれ20回近くアイコが続いている。
 その間も片方が勝てば、もう片方が勝つ。そういった状況が続いていた。
 ルシオラもこれにはうんざりし始めて、


「ネェ、もうヤめない?」


 と、言うが、横島は引かない。


「イ〜ヤ、俺が勝つまでやめねぇからな!?」

「ア〜ァ、なんか飽きてきたわ……。」

「そんなこと言わないでさ、ホラ、じゃ〜んけ〜ん……、」



「ポイ!」

 グーとパー。

「おっ。」


「ポイ!」

 パーとチョキ。横島二勝目。

「オォ!?」


「ポイ!グー!!」

 ……ルシオラはチョキだ。横島大勝利。

「オォォォ、ヤッタ、ヤッタぞぉぉっ!?」


 ようやく勝った喜びを噛み締める横島。
 その白っぽく、肌理の細かい頬を掴む横島はその感触に酔いしれている。
 ルシオラのホッペの感触はモチモチとしていて、とても柔らかくフニフニだ。


「やっぱ、何度触っても気持ちいいなぁ……。」

「ネヒェ、どうでもひぃへど、ひゃるんだったら、はひゃくやってくれない?」

「あぁ、悪い悪い。じゃあ早速……。」






「ナァニ、やっているのかしら?横島クン?」

「ゲフゥ」


 その言葉と共に横島の頭上には脳天カカト落としが降り注がれる。
 
 
 言葉の主は美神であった。


「さっきから屋根裏部屋で何をやってるかと思ってやって来てみたら、案の定ねぇ?」 

「えっと、その〜……、」

「見てて、小っ恥ずかしいったら、ありゃしないわ!?
 イチャつくんだったら、私の目の届かない所でヤってほしいわね!」

「見てたんスか?美神さん、それって……、」

「ウルサイ!!」

「ギャア!?」


 その怒声と共に横島は壁へとめり込み気絶した……。
 美神は顔を紅潮させながらフゥフゥ言っている。


「あ、分かった!美神さん、妬いてるのね?」

「なっ………!?そ、そんなこと……。」


 さらに顔が赤くなる美神。それを見て、ルシオラは言い放った。


「でもね、いくら美神さんがヤキモチ焼いたって、今のヨコシマは私のものよ!!」

「ア、アラ……、き、気にしてなんかないわよ?
 と、とにかくイチャつくんだったら、べべ、別の場所でやってよね?分かった?」

「エェ、とっても♪」

「じゃあ、これから仕事だから、横島クンに言っておいてね?」

「分かりました〜。」

  
 微笑むルシオラを背に部屋を慌てて、出て行こうとする美神。
 すると、ドアの隣の壁にめり込んで動かない横島を見て、
 さらに怒りの鉄槌を彼に浴びせると、その場を去っていった。


「美神さんも嘘が下手ね……クスッ。」


 今日は雨。
 いつもの美神なら、濡れるのがイヤだとかなんとか言って、サボる日だ。


「ネェ、ヨコシマ、起きてってば。」


 ルシオラはさらに壁の深みにめり込んだ横島を引っ張り出して、起こす。


「う、ん……、美神さんは?」

「もう出て行ったわよ。」

「そうか……。イテテ、ったく、美神さんッたらちっとも手加減しないんだから。」

「あの人も人並みに僻んでるのよ。」

「え、何を?」

「もう、ドンカンねぇ。でもそういう所、好きよ、ヨコシマ。」 


 嬉しそうに笑顔を振りまいて横島の肩に寄りかかるルシオラ。


「(ん?何のことだろ……。)まぁ、いっか。
 じゃあ、またやろうな、じゃんけん。な?」

「もちろん♪今度は負けないわよ?」




 今日は雨の日。
 そんな退屈な一日の楽しい出来事……。



 〜The End〜   

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