ザ・グレート・展開予測ショー

遠い世界の近い未来(3)


投稿者名:よりみち
投稿日時:(03/ 9/15)

 遠い世界の近い未来(3)

その男の周囲には”火気厳禁” ”危険”の文字と赤や黄色で描かれた如何にもというマークが団体で表記されている。

 やはり入院患者風の服を着た三十代の貧相な男が、安全ピンを抜いた手榴弾を手に握り、遠巻きにする特殊工作隊員たちを見据えている。
 表情はパニック寸前であり、少しでも動きがあると手榴弾を持った手をつきだし威嚇する。

葵たちの出現に驚くが、次の瞬間、その表情がさらに引きつる。
突然、手榴弾を持った手をぶんぶん振り始める。手と手榴弾が一体化したようになったらしい。
薫のテレキネシスで、掴んだ指が動かないように押さえているのだ。

その隙に葵は、紫穂とその男の死角にテレポート。

 紫穂は、相手の体に接触する。一瞬、放電のような光が瞬き、サイコメトラーとして、その一瞬で必要なことを読みとる。

「心配ないわよ〜。この人、テレパスだけど超度2の落ちこぼれ。追いつめられたんでどうしていいのかわからないだけ。この程度の爆弾じゃ、ここは吹っ飛ばないそうよ。」

「しょうもな。気合い入れて損したわ。」
勢い込んで来た割にしょぼい相手たったので、一気にやる気が失せる。後はまかす、とばかりに彼をテレキネシスから解放する。
 当然、放そうとしていた手榴弾は手から放れ、足下へ。安全レバーもはずれる。

 見守っていた隊員たちがあわてて屋外に飛び出す。男は腰を抜かしその場に座り込む。
葵は、紫穂と腰が抜けた男と共に薫の横にテレポート。さらに、薫を加え、再度、テレポート。水元たちの前にもどる。

「片づいた‥‥」
どっかーーーん!
 葵の言葉は、予想を越すかなり大きな爆発音に遮られる。続いて建物の屋根を突き抜け、大きい火柱が生じる。

「まぁ〜、本人の思っていることと現実が違うことは珍しいことじゃないし〜ぃ。」
 燃えさかる建物を手をかざしつぶやく紫穂。

 そこにいる全員のもはや殺意に近い感情が三人と水元にそそがれる。

「ほな、偵察に行ってくるわ。」
 さすがにいたたまれなくなったのか、葵が残る二人と手をつなぎ、姿が消える。

先のホールで実体化。
「ちょっと、やりすぎたかしら。」
 一応、良心的に葵がつぶやく。
「まぁ〜、今は気にしても仕方がないし〜、あとで謝ればいいんじゃな〜い。」
紫穂は、特に気にしないといった様子で答える。
『こいつは、謝れば全部すむと思っとんのか!?』
と自分たちのことを棚に上げ薫と葵は目を合わす。


 少しして、幸いにも、爆発に飲み込まれたものの死人は出なかったとの報告が入る。重体一名、重傷二名、他全員が大なり小なりの火傷を負ったことを”幸い”といえればの話だが。

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