ザ・グレート・展開予測ショー

遠い世界の近い未来(1)


投稿者名:よりみち
投稿日時:(03/ 9/14)

はじめまして よりみちと申します。長らくみなさまの作品を読ませていただいてきましたが、今回初めて投稿させていただきます。初めてなのでお見苦しい点も多々あると思いますが、良ければ読んでみてください。

 遠い世界の近い未来


 200X年、超能力の存在が科学的に検証されて十年がたった。それと平行して超能力を発現させることができる人間−エスパーは年々増加の一途をたどっている。日本だけでも公認されたエスパーは約100名、未登録エスパーなら一桁、潜在的なエスパーはもう一桁上がると見られている。

 遠い世界の近い未来(1)

 現在、内務省に設けられた公安部特殊任務部隊は、民間施設への襲撃という決して公にできない任務を遂行している。その施設は奥多摩にあり、超能力に関する基礎的な調査/研究を行っていることになっている。

 あるルートから、ここで非合法な研究−人工的にエスパーを造りだす研究が人体実験を含め行われているとの情報が政府にもたらされた。

 情報自体は信用できるものであったが、入手した方法に問題があったため、政府は、『表』から研究をやめさせることをあきらめ、特殊部隊の投入し、秘密の内にその研究を処分することにした。

 併せて、人工エスパーが抵抗に使われた場合に備え、超能力に関する政府唯一の切り札、『内務省特務機関 超能力支援研究所』、通称”バベル”の特務エスパーチームを帯同させることにした。

危惧は当たり、相手は、人工(らしき)エスパーを使い抵抗する姿勢を示し、特務エスパーがその抵抗を排除することになった。


「大丈夫ですかぁ?」
がらんとしたホールの片隅で、三宮紫穂は緊張感のカケラもない口調で倒れている人に声をかけた。
 声を掛けられた人は苦痛のため酸欠の魚のように口をぱくぱくさせるだけだ。野戦服の上から防弾ジャケット身につけ、厳しい戦闘訓練をくぐり抜けたエリート兵士とはいえ、普通の人間である。
 時速80 kmに近いスピードで人に衝突するなど自動車の追突事故にあったドライバーと同じである。アバラ(骨)の2〜3本がイッていても不思議はない。もっとも、彼に衝突され、そのままの勢いで1mほど後ろの壁にまで吹っ飛び、意識を失った人よりはましかもしれないが。

ぶつかった壁の下で意識を失っている方は、大病院の入院患者という風な服装のどこにでもいそうな二十歳代の男性である。今回、相手側のエスパーはみんな同じ服装をしており、この男性もエスパーと考えて間違いないはずである。

「思い知ったか、悪の改造人間!」
赤毛をショートにまとめた髪をわずかに掻き上げ明石薫が誇らしげにうそぶく。この衝突を実演させた張本人である。

「ところで、この人、どんな『力』だったのかしら。」
 野上葵が二人の後ろから聞いてくる。

「さあね。」
 すんだことに興味はないといった様子で見下ろす薫。
 このエスパーは、「先手必勝!!」とばかりに、薫の必殺フライング・ボディ・アタック(自分は痛くないヴァージョン)の直撃を受け、『力』を発揮する間もなく意識を失ってしまったのだ。
「まぁ、どんなエスパーでも、しょせんバッタもんや。ウチらに対抗できるはずないやんか。」

 事前のミーティングで、今回の相手は、超能力を人工的に発揮できるようになった連中であると聞いている。今まで人工エスパーたちと戦ってきたが、発動するまでの時間、狙い通りに作用させる精度、あるいは単純なパワーなど、どれも薫たちが桁違いに上であり、三人ともかすり傷も負っていない。

「そやねー。養殖モンより天然モンの方が値段は高いし。」
 葵がからかうように付け加える。

「ウチらは、鯛かうなぎか!」とむくれる薫。

「あんただけやったら、フグがピッタリするけどな。」とさらにつっこむ。

 言い返そうとする薫を制するように紫穂が口を挟む。
「葵〜ぃ、薫〜ぅ、話し中〜何なんだけど、この二人をどうにかしてあげましょ〜。 」
二人は、あらためて、うめく二人へ注意を向けた。たしかに、早い目に手当をにした方が良さそうである。

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