ザ・グレート・展開予測ショー

AFTER THE BACK IN THE BORNED 2


投稿者名:ヒロ
投稿日時:(03/ 9/14)

 気が付いたらそこは教室だった。チャイムの余韻がこだましている。どうやら、それで起きたようだった。
 周りで適当に話をしていたらしい生徒が、急いで席へと向かう。5つほど離れた席にいる良樹が、恥ずかしそうに・・・というよりは、汚物でも見るようにこちらを見ていた。
「そんな目で見るなよぉ。仕方がなかったんやぁ。若気のいたりなんやぁ」
 なみだ目で訴えてはみたが、
「お前とはもう話さん」
 痛烈な視線が帰ってくるばかりであった。
 
キーンコーン・・・
「はいはい、みんな席に座って」
 パンパンと手をたたいて入ってきたのは、霊史科の小倉先生だ。彼女は、ドアを開けると、こちらを見もせずにそう叫んだ。そしてなぜか、その言葉道理に、生徒の半分ほどは、席をはずして話し合っていたのだからなぞだ。
 小倉は、手に持っていた何かの資料らしきものを、教卓に置くと、
「ハイ、今日は霊能者たちの長きに渡る大きな戦いの歴史を教えてやるー」
と、大きめな声で言った。
「あの年増、なんか今日はやけにはるりきってるなぁ」
 前に座っていた友人が苦笑した。・・・直後、
   ・・・パン!!・・・
 一瞬誉人は、彼の脳がはぜ割れたのかと思った。彼の頭には破魔チョークがめっちりと突き刺さっていて、ついでに彼自身というか、その分身というかが、頭から飛び出ようとしていた。
「今日こそは、いける!!」
「いくなぁっ!!」
 あわてて誉人は、彼(分身)の頭をたたいて一つの状態に戻した。
「今日は、特別講師を呼んである。先ほどのような狼言を吐いたものには貴重な幽体離脱を体験させてやるからな。ちゃんとしてろよな」
 彼女の目は『張り切る』というよりは、鬼気迫るものがあったので、生徒たちはみな素直にうなずいた。
「素直でよろしい」
 満足げに言った彼女は、果たして素直とは従順であるという意味をどこまで理解していたのだろうか。
「では、お入りください」
 慇懃にそういうと、廊下から何者かを招きいれた。
「しつれいします」
 そう言い出てきたのは、はかま姿の少女だった。
 まるで、購買部にでもいそうな・・・いるのか?
「あぁ!!」
 横島が奇怪な声を発したのに気が付いて、少女もこちらに気が付く。
「あぁ、よこしまさん・・・・・・ん?」
 少女がそこに見つけたものは、すでに『二つになった横島』の片割れであった。

 かつかつかつ
 少女が黒板に書いた文字は『英雄 横島忠夫の生涯』であった。
 えいゆう、ねぇ。どこか皮肉げ気持ちで誉人は見上げる。
 最も色濃く霊能世界から見れば英雄と呼ぶべき存在は、美神令子の母である美智恵であろう。
 類まれなる霊力。時をかける体質。彼女はそれらを利用し魔族とも互角に戦ったという。
 さらにGメンと呼ばれる特殊部隊を用い、平和維持に貢献し、数々の若手霊能者たちにその神秘性を如実にアピールした。
 いやむしろ、その神秘さがなければ英雄とは呼べまい。私生活、というよりは人間性が顕になれば、英雄などとはまったく持って不必要なのだろう。なぜならば、自軍においての士気向上や、敵軍においての戦意減退などには人間性などあってはならないからである。
 日常生活では犯罪者だが、戦場に行けば歴史的英雄になる。との言葉は残忍である人間性を、戦場であればカムフラージュできうるから、とのことである。
 そういう意味合いでは、確かに美智恵は心霊史上類を見ない英雄であろう。
 だが、まったくもって英雄としては考えられないようなもの、玲子と横島が英雄として名をはぜるのは何故であろうか。
 美神令子は、史上稀に見る守銭奴である。愛金主義者、鬼、悪魔、エトセトラエトセトラ。金の為ならば、悪魔でさえも喧嘩を売るようなものである。
 一方横島は、・・・・・・よこしまは・・・・・・
 何気なく黒板に書いてあった文字をノートに書き写していっていた誉人だが、ふと、顔を上げて鉛筆を止める。
 しばらく考えていたようだが、消しゴムでごしごしと文字を消すとこう書いた。
 『俺のじーちゃんのじーちゃんのじーちゃんのじーちゃん』
 いまいち実感が持てなかったが、それなりに気持ちよかったので、よしとする。
 横島忠夫は。ほんとぉにスケベで、ほんとぉにエロでほんとぉぉにでばがめで、しかも馬鹿とおつりのきそうなくらい役立たずであったらしい。
 誉人は顔があつくなるのをおさえられず、しかたなしにうつむいた。特に前半は女子がくすくす笑う声が妙に気になった。
「ばかじじぃ」
 やはり聞いていると恥ずかしいので、書き足した文字を訂正、『糞じじい』へとかきかえた。
 そんな誉人を悲しそうに少女は見つめ、話を続ける。
 美神令子が、始めてその歴史に名を刻んだのが、竜神の王子を助けた事件である。このとき横島はまだその力を発揮していなかったため、歴史に名を残すことはなかったが、美神は竜神の力を駆り、見事竜族の殺し屋を撃退することに成功した。
 そして、美神を暗殺しようと動き出す魔族たち。
 横島の力の開花。
 教科書にないさまざまな歴史があふれ出す。
 そして、美智恵でさえも目を見張る横島の成長。世界的に広がる魔族の脅威の最中であった。
 この事件は、霊史、世界史、さまざまな分野によってさまざまな報道がなされたとても大きな事件。
 その中で特に多大な貢献をしたのが、横島忠男だといわれている。彼は、戦いの中でさまざまな出会いをし、別れ、また何か一つ、数えられない何かが大きくなっていき、最後は魔神アシュタロスを撃破したといわれている。
 そして、その後も妖弧や未知なる悪魔と戦っていき、これらを撃破していった。
 だが、彼の生涯は意外とあっけなかった。
 除霊中の出来事だった。そのときはちょうど仕事が重なっていて、妻である美神とは別行動中であったため、一人で仕事していた。
 まさかこんな低級霊になどとある程度自分の実力に自惚れていた彼は、一瞬の隙を突かれ、遭えなく命を落とす。彼は美神のアシスタント時代にも、たびたびそういうことがあり、何度も注意をされていたはずであったが。
 
 シンと、教室が静まり返っていた。横島の『死』という、これから自分たちも歩むであろう現実からか、それとも、
「えぇ、うあぁぁん、うえぇぇ」
涙をぼろぼろとこぼして泣いている特別講師のためであろうか・・・
「あ、・・・あの、おキヌさん?」
 さすがにこれには困って小倉が声をかける。
 少女もあわてて涙を拭いて授業を再開しようと勤めるが、緩い涙腺がそれを許そうとはしなかった。
 
 誉人たちは体育着に着替えて、体育館にいた。中止になった授業の穴埋めにと、いつもよりも早く体育館に行くことになったからだ。
「お前の祖先て結構悲惨だったんだなぁ」
 良樹はバスケットボールをバムバム叩きながらつぶやいた。
「あぁ、でも俺も今日初めて知ったからな。それまでは、知らなかったよ」
 どこか人事のように、むしろ達観したかのように誉人も返す。
「だって400年も前だぞ。今じゃ霊力だって昔よりも弱くなっているような世代になぁ。本人たちよりも文部省のほうが知っているっていうようなほど・・・・・・なぁんものこってないんだモノな」
 悲しそうな呟きに良樹は返す。
「知らないんじゃなくて、知ろうとしていないだけなんじゃないのか?」
 しばらく馬鹿見たいにボールを叩いていた良樹も彼を向きやって、
「かもしれない」
と、弱弱しく肯定する。こういう気弱なところが、彼と忠夫の大きな違いでもあった。

 
 あとがきの様な者

 はじめまして、初投稿のヒロです。
 えーー、舞台は一応横島が死んでから400年後ということです。たぶんここら辺でふざけんなぁ、とか言われるような気もしたんですが、寛大な処置をお願いします。これの一個前では話が入んなかったんでここに後がはいってますが、次回からは気をつけますので、許してやってください。
 謝ってばっかですけど、それではさようなら。

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