ザ・グレート・展開予測ショー

使い魔の見る夢


投稿者名:ハルカ
投稿日時:(03/ 9/13)


「魔鈴ちゃんっ!!
 今日こそボクに名前をほしいニャ!!」

「あのね、黒猫さん。
 魔女の使い魔は名前がないものなのよ。」


それはいつもの何気ない会話。
使い魔の黒猫クンが名前がほしいと言いだしたのです。


「ど、どうしてニャっ!?」

「使い魔が名前を持つということは上司の魔女から独立するということ。
 魔女……つまり私や関係者の名前も顔も忘れて
 一人前の魔法使いとして独立するということなの。
 私やそのほかの知り合いの顔も名前も忘れるなんて、そんなのイヤでしょ?
 ―――――少なくとも私はイヤだな。」


黒猫クンをなだめる魔鈴さん。
微笑ましく、なによりも幸せな光景。

確かに黒猫クンが独立することになれば
いつかは魔鈴さんのこともみんなのことも忘れて
一人で魔法使いとしてやっていく事になるでしょう。

そして同じように使い魔を持つのかもしれません。


でも、それはまだまだ先のおはなし。
だって黒猫クンは魔法もまだ使えなければ魔鈴さんのお手伝いも失敗してばかり。

この幸せな毎日がまだまだ続くとばかり思ってました。








「魔鈴ちゃんっ!?」
「だ、大丈夫よ…
 ちょっとだけ魔力が落ちてるだけ……」

―――――突然、魔鈴さんを襲う謎の奇病。



「―――――そんなっ!?
 魔力の減衰期のために備えておいた霊力コンデンサにもうストックがないなんて………」


度重なるアクシデント。
―――――運命は、二人を引き裂こうとする。



(怖い……怖い………けどっ!!
 少しでも魔鈴ちゃんが楽になる方法があるのならっ!!!!)

「だ、ダメよ!黒猫さんっ!!
 あなたが人間の言葉を喋ったり、聞いたりできるのは魔法が効いてるからなのっ!!
 魔力が無くなったら黒猫さんの人格は消えて無くなってしまうわっ!!!!」


―――――魔鈴さんの悲痛な叫び。




「やっぱり最後に名前がほしかったかニャ?
 ボク、魔鈴ちゃんに名前を呼んでもらうのが夢だったから…………」


そう、魔鈴さんの魔力がなければボクはただの黒い猫。
だけど、ただの猫だってやるときはやるんです。


―――――そして黒猫クンの決意!!



「魔鈴ちゃん………
 ボクのこと、忘れないでね。」


使い魔の猫はニコリと笑う。
大好きな魔鈴さんのためになるのならば。



そんなに哀しい涙を流さないで、魔鈴ちゃん。

貴女の為にできることがある。
―――――ボクはそのことが幸せでならないのです。



だけどっ!そんな運命になんて敗けないっ!!
魔鈴さんを想う黒猫クンの心が―――――奇跡を起こすっ!!!!




「黒猫……さん………?」
「ニャア…」

黒猫クンの言葉は聞こえない。
ただ、ネコの鳴き声が聞こえるだけ。



再び奇跡は……………起こるのか……












〜数日後〜

「ま、魔鈴ちゃん!
 アレがおいしそうだニャっ!!買うニャっ!!!!」

「待って、黒猫さん。
 そんなに急がなくても食材は逃げないわよ?」


街には仲良く食材や花を買いに
ショッピングする魔鈴さんと黒猫クンの姿が。


「今日もこうして魔鈴ちゃんとショッピングできるなんて嬉しいニャ。」

「もう!あの時は本当に心配したんだからっ!!」



☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★



あのとき、ただの黒い猫に戻ってしまった黒猫クン……

本当にただの黒い猫になったのでしょうか?
魔鈴さんへの想いも消えてしまった?

いいえ。そんなはずはありません。
言葉はしゃべれなくとも魔鈴さんを想う心は決して消えてなくなるはずがないのです。


魔鈴さんの肩にとびのってスリ寄る黒猫クン。


「黒猫さん………
 黒猫さん!黒猫さんっ!!黒猫さん…………っ!!!!」


涙をボロボロと流しながら黒猫クンを抱きしめる魔鈴さん。
黒猫クンの行為が嬉しい反面、心を締め付けられる思いでもあるのです。


抱きしめられた黒猫クン。
そのまま魔鈴さんの唇にKiss。

――――――――――奇跡は、起こった。


魔法使いにとってキスは契約の証。
意味は『これからも貴女についていきます』。


☆  ★  ☆  ★  ☆  ★  ☆  ★



「あれ?
 そういえばボクのファースト・キスは魔鈴ちゃんだニャ。
 責任とってこれからもよろしくニャ♪」

「―――――っ!!(赤)
 もう、知らないんだからっ!!今夜は黒猫さんは晩ご飯抜きね♪」


幸せな日常は―――――まだまだ続きます。
きっといつかは黒猫クンも魔鈴さんを卒業しなければならない日がくることでしょう。

でも、それはまだまだ先のおはなし。


「ま、待ってほしいニャ〜!!」


願わくばその日が少しでも先であらんことを………




                     〜 Fin 〜

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