ザ・グレート・展開予測ショー

或る夏の情景


投稿者名:逢川 桐至
投稿日時:(03/ 9/12)




 キュポっとキャップを外す音がした。
 海に向かって座っている、俺の背後でシロがもぞもぞとサンオイルの準備をしているのだ。

 TVか何かで見たらしい。 海に遊びに行って、互いにオイルを塗るのを。
 やってみたいと駄々を捏ねられ、暇もあったしいつものサンポよりはマシかと、こうして付き合っているのだ。 …尤も、海まで散歩させられてしまったのだが。

 で? まだか?

「それでは、いくでござるよ」

 無駄に気合を入れてるなぁと苦笑した瞬間。

 いでででででぇっ!!

「どうしたんでござるか?!」

 サンオイル塗るのに、爪を立てるんじゃないっ!

 痛かった。 背中に筋が出来てんのと違うか?
 しかも気合入れてるから、かなり力も入ってたし。

 こうゆうんはな、掌で撫ぜる様に伸ばすんだってぇの。

「そ、それは申し分けないでござる。
 では改めて、もう一度…」

 今度は、痛くない。 ちょっとさっきの傷がチクチクするが、痛くは無かった。
 と言うより、シロの思いの外小さい、柔らかい掌が背中を滑っていくのは、これは結構気持ちいい。

「どうでござるか?」

 おう。 こんどはいいぞ。

「それは良かったでござる」

 周りは閑散としている。
 9月に入っててシーズンからも外れてるし、何より平日だ。 ちょこっとだけしていた期待……そいでも、水着の姉ぇちゃんやサーファーな女性は居ないかと思っていたのだ……は、すっかり外れてしまったが、偶にゃこう言うのもいいか…

 背中から肩に上っていく掌がこそばゆい。

 なぁ、シ…
「わわ…」

 身体を起こして、首を振り向かせた瞬間、全てが起こった。

 振り向いた俺の動きで、バランスが崩れて…
 肩に乗ってた手がオイルで滑って、シロの上体が流れ…
 ふわぁっと髪を靡かせて、倒れかかるその身体を支えきれないまま…


 一瞬だけ、シロの唇が俺の口元に触れた。


 思わず固まってしまった俺と、そのまま俺の身体を乗り越えて砂につんのめるシロ。

「うぅ… 失敗、失敗でござる」

 そう言いながら、指先を唇に当てたシロが小さく笑う。
 やっぱ、気付いたか。 …気付いてしまったか。 ぬぉおおぉぉぉ…

 どう、あしらおうか。

 けど…
 いつもの様な大袈裟な騒ぎ方をしやがらないから、どうにも調子が狂っうな。

「えへへへ…」

 何時もと比べたら、微かと言っていいほどの小さな笑顔。 軽く潤んだ瞳と、小さく笑みを形作る唇が可愛…

 ……はっ?!
 ち、違う。 見とれてなんかいないぞ。
 俺は、俺は、俺はぁ…

「どうしたのでござるか?」

 な、なんでもない。

 参ったな、熱中症か? 顔が火照って、頭がちょっとクラクラしてる。
 俺はそのまま、再びビーチマットに伏せた。

「先生? 先生っ?!」

 暫し、待て。 …気持ちに整理が着くまで、な。

「むぅうぅぅ… しょうがないでござるな」

 ぺたんと、伏せてる俺の横にシロが腰を下ろした。
 時折流れて来る潮風が、ちょいと冷たいくらいで心地好い。

 なぁ…

「なんでござるか?」

 いや、こう言うのも結構いいな、と思ってさ。

「拙者は、先生と一緒なら、なんでもいいでござる」

 でも、散歩が一番なんだろ?

「そりゃあ、勿論」

 拳を振り上げて、力強く断言するシロに、思わず笑ってしまう。

「…変でござるか?」

 んにゃ、おまえらしいよ。

「そうでござろう」

 そう言うと、ちょっぴり物欲しげに浜の端の方へと目を向ける。

 よもや、ここで一緒に走ろうとか言う気か?
 気付かなかった振りで、俺は海の方へと目を逸らす。

 でも、ま…
 ホント、こう言うのもいいかな。

  

 

 

 部屋へ戻ったら、何で私も連れて行かなかったんだとタマモに怒られた。

 サンオイルのおかげで大して焼けなかった俺の肌は、しかしこんがりとローストにされてしまいましたとさ。

 

 【おわり】

  

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……ぽすとすくりぷつ……

 私と言えば『タマモ』と言う、人様の期待を裏切る様な(爆) いや、ほんのちょっぴり出てるけど。
 しかも、途中で照れ臭くなって誤魔化しに走っちゃったよ、おひおひ…(^^;
 ちなみに、志さま・veさまの『シロ味100%っ!』を見ての電波でありまする。

 更新間隔がみぢかい? …そりゃそうでしょうよ、ペルで詰まってるんだもん(泣)
 なら、電波受信してないで『とら・くろ』の続き書け? そりゃ。ごもっとも(^^;

 シロますたーな方々の心を、多少でも動かせたかしらん?

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