お前になら後ろを許そう
投稿者名:えび団子
投稿日時:(03/ 9/11)
「ったくいつまで飲むんだよ?いい加減・・・」
「五月蠅いっ、君ももう少し飲・・・め・・」
とうとう意識が遠のいて来たのか目が虚ろだ。さっきからずっと飲みっぱなしで、
悪酔いしている。趣のある居酒屋で酷く目立ってはなかったが隣に居る俺には傍迷惑な話しで。早く帰りたかったが後が心配なんで一緒にいることにした。
「君は何でもっと・・・こう・・・・品位のあ・・る店を・・・・」
ギロッと店主に睨まれたことは言うまでもなく、俺は忙しく謝罪した。
「おいっ、悪酔いだぞ!少しは控え・・・」
「な〜んで、こうなるのかな〜〜・・・・」
グスッ、グスッ・・・。泣き上戸かよお次は・・・。
仕事でちょっと失敗したからって、俺何か今では殆どないけど昔なんかなあ・・・
気にすんなよ。上手く掛ける言葉はこれしか思い浮かばない。
「君はいつのまにそんなに強くなったんだい?」
顔をアルコールで赤くして俺に疑問を投げかけてくる。
どう答えていいか直ぐには分からず適当に流した。それからの沈黙を利用した。
他の客には笑っている奴、泣いている奴、怒っている奴、沈んでいる奴。
多種多彩に富んでいる。酒臭い匂いにも慣れてきて笑い声の方が多く聞こえる様になってきた。上に付いた明々と光る黄色の電気に見惚れていると・・・
「令子ちゃんは・・・」
お前のそんな顔は今までで初めてだぞ?弱気じゃねえか。
自信に溢れた貴族の義務やら何やらは何処に行った?
「君のことが好きなのかい?・・・僕は」
「・・・・・・」
つまみの枝豆も半分以上なくなって寂しくなってきた座敷。
座布団を後ろに少し寄せて深く座り直した。店内は古ぼけた造りで、
一つ一つの汚れも思い出らしく綺麗に残していた。
店員は三人で主人と奥さん、バイトさん。てな風に。
バイトさんが大声をあげて注文を取っていて元気良くて雰囲気が良かった。
「ふふ・・・君らしいな。真面目な話しになると・・・」
又一杯飲み干すお前。
「俺のことは好きじゃねーよ、あの人は・・・」
なるべく興味なし気にぼやいた。先ず俺何かじゃ手の届く訳でもなく、
高嶺の花的存在だったろう?所詮は近くでセクハラが精一杯かな。
「お前、気付いてるか?美神さんの初恋の相手って・・・」
「ん?」
うつ伏せになって涙を流した情けない顔をゆっくりと起こした。本当に、前のお前に戻れよな。
「それはな・・・」
・
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「ああ、そうさ。意識してなかった訳じゃない・・」
さっきから水を口に運んで酔いが覚めたのか、口調も態度も穏やかになってきた。
俺は自分の知りうる情報をお前に繋いだ。気持ちが楽になった。
これからは、いや・・・今までだって俺は何にもあの人とはなかったけど。
――――――――お前にバトンタッチだ――――――――
「じゃあな、俺はこれで・・・」
時計を見て。待ち合わせの時間の30分前になったのであいつに別れを告げた。
やっぱり心配だったから文珠で叩き起こしてやった。
「行くのかい?」
俺は微笑して片手を天井に向けかざした。あいつなら分かってんだろうな。
この意味が。ああ、きっと分かってるよな?
そのころには水もなく。お手拭も冷たくなっていた。
――――――――ガララララッ・・・――――――――
静かに、長年の音を立てて戸を閉めた。外の景色は日が落ち。
闇が街を閉ざした。だが、昼間張りの明るさと音響で賑やかな歩道は、
ビルとビルの間でさえ包み込んだ。人々が行き交う交差点。
歩道橋から聞こえる車の音とネオンのカラフル色。
「うわあ、間に合うかな?」
俺は走って走って。息の切れる程走った。気分は爽快だった。
汗が染みて、折角のスーツもクシャクシャだ。
「ごめんっ・・・待った?」
会うと直後に土下座を始める俺。
「まだ約束の時間じゃないですよ、横島さん♪」
未だ15分前だった、全然気付かなかった。
「あ、ああ。そうなんだ・・・」
「ふふ・・・♪」
笑った顔はとても綺麗だった。数年前ではきっと予想もつかなかっただろうなあ。
も一つ言えば身体がなかったんだもんなあ・・・、本当。
俺の掴んだ幸せは彼女と一緒に歩んでいきたい。なあ、『おキヌちゃん』♪
そのころの西条はと言うと・・・
「ふっ・・・勘定せず行きやがって横島くんめ。」
財布を持ってレジでの彼。言葉とは裏腹に口元は緩んでいた。
「お前になら・・・」 「君になら・・・」
きっと・・・
きっと・・・
「「後ろを守って貰えるだろうな」」
チャンチャン、おしまい♪
今までの
コメント:
- こ、これは・・・誰がメインなのですか!?
横島くんか、西条か?!美神さんか、おキヌちゃんか!!??
教えてくださいませ〜(泣)つーよりも、おキヌちゃんSS連続が止まってしまう?!どうなることやら・・・唯西条さんをここまで書いたのは自分は初めてで楽しかったです♪ (えび団子)
- やっぱり横島クンにはおキヌちゃんですよね〜、何て月並みな感想は置いといて、
本気で(?)張り合った男ふたりのその後の友情、すごくよく書けてると思います。
西条を励ます(?)横島クンもかっこいいし、酔っぱらってアレだった西条も最後でキメてるし。
横島クンとおキヌちゃん、西条と美神さんの2組が成立すると、横島クンと西条っていい友人になれそうな気がするんですよね。シャアとアムロみたいなもの? ちょっと違うか。ただ、西条が美神さんのペースについて行けるのかどうかは別ですが……。 (U. Woodfield)
- おはようございます、U.Woodfieldさん♪朝一にコメント返しです〜
誠に二作続けてのコメントありがとうございます!!西条さんがおそらくメイン?
なこの作品、自分自身よく書いたなあ・・・と。男の友情を分かってもらえてとっても嬉しいです♪ (えび団子)
- はじめましてm(__)m
西条と横島…二人の掛け合いが良かったです。エピローグ的なおキヌちゃんとの待ち合わせのシーンで掴んだ幸せを噛み締める横島も良かったです。
ただ最後の「「後ろを守って貰えるだろうな」」が、意味わからなかったです。
「後ろ」って?…西条から横島に?…と
原作の時点で横島は 西条が令子(の性格・行動・生き方等)と付き合うのは無理 と思っているフシがあるので、このお話では令子を「(西条になら)守って貰えるだろうな」と横島が西条を認めていて、思った事だろうと……『西条=令子の恋人』『横島=令子の相棒(一人前のGSとして)』其々が其々を認めている――そして「「守って貰えるだろうな」」と想像しました…
それとも二人が一緒に仕事をしたなら…って事なんだろうか?……とも(^^;) (ぴろしき)
- 「誰がメイン?」と聞かれたら、【横島とおキヌちゃんの物語】の中の【西条メインのお話】 続きモノならそんな感じの閑話みたいなお話――そう感じました。(←おキヌちゃんSS連続 とあるんですが…続きモノだったら御免なさい 他を読んでないんですm(__)m
色々書いてしまいましたが二人の掛け合いのシーンは面白かったです。 (ぴろしき)
- 初めまして、ぴろしきさん♪誠にコメントありがとうございます!!
え〜と、色々説明不足があって分からなかった所があったみたいで本当にごめんなさいっ・・・!!(大泣)『後ろを守って貰えるだろうな』についてはぴろしきさんの仰る中では後者の方に当たるかと存じます(><)b♪唯、お互いが信頼しあっている点を意識して書いたので『死角』を任せられる、でしょうか?まあ、つまりは深い絆ができた!とでも♪最後になりましたが、横島くんの幸せに乾杯(謎)
あ、もう一つ・・・続きものではないですよ(汗)今作品 (えび団子)
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