ザ・グレート・展開予測ショー

眠り姫 ・・・後半・・・


投稿者名:えび団子
投稿日時:(03/ 9/ 9)


九月に入ったばかりで残暑厳しい道のり。
もっと言えば人一人担いで行けば夏そのもの。
しかし、思ったよりそれは軽く、細かった。
霊体がないからだとかヤボな質問はなしにして、大切にしたいと思った。
長い間、一緒に居て・・・きっと一番長く一緒に居たと。
この場を借りて改めて、心底!思った。



「大丈夫ですかっ・・・?!私のせいで・・・」

ふよふよふよふよ・・・と空を背に気遣う彼女。
もちろん、浮いているのだ。

「あ、ああ・・・ちょっと暑いだけ。」

少し前屈みになって歩いている少年の姿があった。
額には汗。バンダナが湿気を帯びて色が濃くなっている。
地面のアスファルトから地下熱が立ちこめ気温がさっきより上昇しているだろう。
雨でも欲しいくらいに・・・。いや、もっと蒸せるか。

「気にしないでよっ・・いつもおキヌちゃんには世話掛けっ放しだからさ。」

微笑するつもりが苦笑になってたのを後になって気付く。
すぐに念押しも込めて『気にしない、気にしない』と付け加えておいた。
おそらく、その時にすら苦笑だったかもしれないが。

「本当にごめんなさい、ごめんなさいっ!!私がこんなばっかりに〜・・・」

「だからっ・・・気にすんなって!!!!」

少し怒鳴ってしまったかもしれない。彼女はそれから少し黙って・・・

「そうでよね、横島さん頑張ってくれてるんですから・・・」

反省の表情が伺えた。俺も自分自身を悔いた。
怒るつもりはなかったんだけどなあ。ともかく暑くて・・・





















     ――――――――ドキドキ、ドキドキ・・・――――――――





















「あれっ・・・?!何か俺・・・・」

鼓動が速い、異常なほどに。こんな感じ今までなかった。
おキヌちゃんとはずっと一緒だったけど。経験がなかった。

「横島さん、覚えてますか・・・?」

妙な気持ちがもどかしい中、彼女が目線の少し上から問いかけてきた。

「んっ?何、おキヌちゃん?」

ぎこちない返事を返した。

「前・・・にもありましたね。こうして・・・////」

思い出す作業をほんの数秒行い。

「ああ・・・おキヌちゃんが帰って来た日だろ?覚えてるよ。」

彼女は相槌を小さく短く打った。恥ずかしがっている様子だ。

「あの時、美神さんがお酒を飲ますもんだから。おキヌちゃん酔いつぶれちゃったんだろ?ったくあの人は俺たち未成年ってことを頭にねーなあ。」

「あの時・・・」

彼女が頬を染めて、語尾が消えた。

「そうそう、あの時俺が・・・」

後になって俺も頬を染めていたことを知る。

「・・・・」「・・・・」

出て・・・こない。
こんなに長く彼女に触れていたのは初めてかもしれない。
事務所までの延々の道を二人で、たった二人で。
身体に霊体はないけど、傍にちゃんとあって昔を思い出させる。
幽霊時代の頃。いつも傍で支えてくれていて・・・
応援してくれていて・・・助けてくれて。
なのに俺は甘えてばっかで。苦労だけが増えていったんだな。
それでもずっと彼女・・・おキヌちゃんは、俺を守ってくれて。

「・・・・っ!」

喉が渇く。緊張で・・・。
水が欲しかった。けど、暑さなど微塵もなくむしろ涼しかった。
身体は熱いけど、心はどんどん澄んでいく。
きっと暑かったのは気持ちのせいで、決心が揺らぐことがなければ。

「おキヌちゃんっっ・・・・!!」

太陽の一筋の光が上空から雲を突き抜け。
見晴らしは、ほどほどの晴れだった。特に快晴でもなく、曇ってる訳でなく。
唯、晴れ。いつも大抵変わることない・・・。それは俺達にも言えて・・・。

「何ですかっ・・・?!////」

これだけは確実に着実に言える。変わらぬ関係ではないと言うこと。

「俺はっ・・・俺は・・・・」



















   ――――――――おキヌちゃんのことがっ・・・――――――――
















「あっ・・・戻れました!戻れましたよっ、横島さん♪」

背中から声が聴こえた。優しい綺麗な美声が。
聴き慣れていても、新鮮に。歌何かそれは上手で。

「あっ・・・そうなの!?あ・・・はは。」

拍子抜けと言うか何と言うか・・・。

「あっ・・・あの・・・・さっき何を言おうとしてたんですか?」

とぼけた風でなく真面目に聞いてくる彼女。
悪いけど俺はとぼけた。今でなくても少しずつ・・・だろ?

「べっつに、何でもないよ♪」

?を空中に投げ出すおキヌちゃん。
空は青く、水は白く、太陽は赤く、地面はグレーで。
路地は長く続いてまだ終りそうにない。

「あの・・・横島さん?////」

俺はまだ彼女をおんぶしている。けど・・・

「このまま、行こうか♪」

「えっ・・・?!////」






       ――――――――いい夢を・・・――――――――






「嫌っ・・・?」

俺は期待を込めて言った。

「・・・・////」

待った。

「・・・・お願いします♪////」

「了解♪」

一歩一歩が嬉しくて、見るもの全てが輝いてて。
俺はいつか俺の背中で眠ってくれるくらいになろうと心に決めた。
可愛い可愛い眠り姫に。
      ――――――――これから・・・な♪――――――――













             チャンチャン、おしまい♪










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