ザ・グレート・展開予測ショー

シロ味100%っ!


投稿者名:しく&ヴぇるど
投稿日時:(03/ 9/ 9)



 Case.1―――お日様と横島 ―――writer:志狗―――


 「何でござるか?これ?」

 差し出されたそれ、どちらかと言えば安っぽい見た目のケースをシロは不思議そうに見つめ、ハナをくんと鳴らした。

 「日焼け止めだよ。最近日差しが強いしお前だって女の子なんだから、ちょっとは…な」
 「―――――――う〜ん…せっかくでござるが、いらないでござるよ」

 日焼け止めという物の一通りの説明を受けたシロが、思案顔の後に発した言葉はそんなものだった。
 申し訳なさそうに、だがはっきり不要との意を告げられ、横島は特に不満に思うでもなくただきょとんとする。

 「なんでだ?」

 言い訳がましく進める言葉も如何してか浮かんだものの、結局何もひねりも無い疑問の言葉が発せられる。
 それとなく意識してみた彼女の肌は、確かに日焼け止めなどは無粋なのだと思えるほど健康的に見えた。

 「お日様が可哀想でござるよ」
 「?」

 疑問符を浮べる彼を前に両手を大きく広げ、日の光を心地良さそうに全身で受け
止める。
 突き出した手、空を仰ぎ見た顔、そっと閉じた瞳は日に向けている様でも目の前
の彼に向けている様でもあり…

 「日焼けはお日様が元気をくれた証拠でござるよ」

 すうっと、空気と共に光まで取り込むかのように胸を膨らませ、吐く息にささやかな思いを乗せる。

 「たくさん外に出て、お日様の元気を貰って……お日様を嫌っちゃ可哀想でござるよ?」

 訳の分からぬ理屈に、どこかぽおっとしてしまい。
 子供の発想に窘めを受け入れてしまっている事に気付いてしまった彼は、苦笑する事で何とか僅かながらの『師匠』としての自分に縋った。

 「それじゃ、お日様の元気を貰いにサンポにでも行くか?」

 その一言にぱあっと顔を輝かせ、ぐいぐいと引く腕には先ほどの説得力など微塵も残さず、ぶんぶんと振る尻尾は喜び一杯に。
 ふと引く腕を放し、振り返ったシロには悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。

 「でも。先生がどーしてもって言うんだったら、拙者は全然おっけーでござるよっ」
 「お日様はどーした、お日様は」

 やっぱり子供だよなぁ……、そんな想いに苦笑してから、自分の方を見上げる、見つめるシロの顔に気付いた。
 逆光の中で僅かに紅く見える頬は、血色の良さだけでは片付けられなく…


 「だってお日様より先生のほうが、ずっと好きでござるもんっ♪」

 発した言葉はもっと子供っぽく、でも十分に純粋な想い…告げて駆け出すシロは陽光の中へと溶け込みそうで―――――――――


 慌てて彼はその靡く髪の軌跡を追いかけた。



 ――――――――――お日様に彼女を取られぬように………


 Taste:
「ちょっぴり甘い、すいか味」









Case.2 ―――夜に ―――writer:veld―――

 天井から注ぐ光がオレンジ色に変わる頃に、俺と彼女は一つの布団に身を合わせて横たわる。いつまで経っても、慣れない時間。どきどきと高鳴る鼓動を無理矢理に静め、俺は彼女と向かい合う。

 彼女が一瞬、微笑むのが見えて―――寝入るわずか二秒間、俺が取れた行動と言うのは、彼女の赤みの差した頬を撫でることくらいなものだった―――そして、彼女は背中を向ける。

 つれないなぁ・・・と、半ば泣きの入った俺はいじいじと彼女の背中をつつき―――気付く。

 ・・・こんなに綺麗な白だったのか。

 シロだけに・・・?

 透き通るような白い背中―――が、俺の目の前にある。手の平をそっと当ててみると、弾力のある肌がふるるんと跳ねる。面白くて、何度もやってみる・・・と、彼女が身を震わせ、身体をこちらに向ける。

 眠そうに細められた目に苛立ちが浮かんでいるような気がしてたじろぐけれど、狭い布団の中、離れられるわけでもない。―――だから、彼女の視線を受け止めて、俺は―――焦る。

 「忠夫さん・・・くすぐったいでござるよ・・・」

 ぷぅ、と頬を膨らませて、彼女はむぅ、とした口調で言う。これは、つまり―――「拙者、ちょっぴり怒ったでござるよ、今晩はお肉いっぱいのカレーでござるよ」という程度の怒り具合―――怒ってるのかそれとも喜んでるのかいまいち良くわからない怒り具合の時。


 「・・・シロ・・・あの・・・」

 「忠夫さん・・・拙者、くすぐったかったでござるよぉ!」

 「・・・あ、あぁ」

 「先生・・・拙者、背中がむずむずするでござるよぉ・・・」

 目を潤ませ、上目遣いで俺を見る彼女―――

 「・・・はうッ」

 見とれてしまって、一瞬、前後不確かになった俺の手は彼女の身体を抱こうとしていた―――あまつさえ、指先はひくひくと蠢き―――い、いかん!!

 「シロ、わ、わりぃ。ちょっと悪戯心で・・・」

 「忠夫さん・・・その・・・拙者の背中を・・・掻いて欲しいでござるよ」

 「・・・あの、その、それで、いやらしい気持ちが・・・あったけど・・・っ
て、え?」

 もじもじと身をゆすりながら、彼女は照れ臭そうにいった。



 「えっと、さっき、忠夫さんが背中をくすぐって・・・それで・・・拙者・・
・あの、くすぐったさが消えなくて・・・」



 ―――つまりである。

 俺がくすぐったせいで、彼女は未だにむずむずとした背中のかゆみに苦
しんでいると・・・。

 これは、俺の責任である。

 よって、俺の手で解決しなければならない。



 「んじゃ・・・背中向けな?」



 こくり、彼女は頷くと、背中を寝転んだまま背中を向けた。

 そして―――俺は彼女の背中を優しく上下に―――



 ひくんっ・・・彼女の身体が跳ねた。

「た、忠夫さん・・・もっと強く・・・」


 弱すぎたらしい。

 「わ、悪ぃ・・・んじゃ・・・」


  今度はやや強く・・・と。



 彼女は身を抱き、ふるふると身を震わせていた。



 「なぁ。この位の強さで良いのか?」


 背中から見える彼女の頭が沈んだ。そして上がる。何度も何度も。



 「そっか・・・良かった」



 何が良かったのか、は分からないけど、俺は安心してこの強さで彼女の背中を
掻き続けた。











 そして、翌日。


 「シロちゃん?何だか背中が赤くなってるけど・・・」



 事務所のリビングで眠っていた俺の耳に入ってきたおキヌちゃんの声に、俺ははっと目を覚ました。背中・・・きっと、俺が睡眠不足になっている原因の事だろう。
 俺は起き上がろうと身を起こして―――そこで動きを止めた。何で、わざわざ俺が行かなきゃいけないんだ?やましい事は何もない。ただ、背中を掻いただけじゃないか。そうだ。別に俺はわざわざ釈明に行く必要はないんだ。―――思い直し、再び横になる。―――その僅かに二分後。



 「はうううううううううぅぅぅぅぅぅ!!!」


 俺の耳にシロの悲鳴が聞こえた。
 絶叫、もう、何というか、断末魔の悲鳴のような。
 今度はもう、逡巡もせず、彼女の元へ走る!!
 ―――いや、そこまで距離はないけど!



 そして、行き着いた先に―――上半身、裸のまま、地面にうつ伏せになって倒れている彼女の姿が見えた。そして、その傍らにはおキヌちゃんの姿―――手に持っているのは・・・



 「え、と・・・あの、背中が日に焼けて痛そうだったんで・・・あの・・・」



 おどおどと手についたそれを捏ねるおキヌちゃん―――。

 そして、俺と同じく、彼女の悲鳴を聞いてここに来て、倒れた彼女の頭をつんつんとつついているタマモ。―――俺を見、首を横に振る。どうやら、気を失っているらしい。



 俺は何と言えば良いのか迷い―――溜息をついた。

 「おキヌちゃん・・・日に焼けた肌には塗っちゃ駄目だよ・・・」

 と、心中で呟きながら。





 そして、その日から、シロは日焼け止めクリームが嫌いになったとか。


 Taste
「かすかにむず痒い、葡萄味」

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