ザ・グレート・展開予測ショー

たいけつ


投稿者名:NGK
投稿日時:(03/ 9/ 6)

其の遭遇は必然であった。

二人それぞれの職場から彼のマンションに行くにはこの道を通らなくては行けなかったし、仕事が終る時間も重なった。

一人は漆黒の上着に漆黒のスカート、漆黒のとんがり帽子を身に纏った三つ編みの女性。
一人は時代のかかったボディコンスーツを纏った長い髪の女性。
共に意志の強そうな瞳を宿している。

最初に口を開いたのは長い髪の女性であった。

「・・・偶然ね。何処に行こうとしているのか教えてくれない?」

いの一番に言う台詞に適した言葉ではないと思われるが、三つ編みの女性は気にする様子も無く、答えた。

「届けるものがありますから」

そう言うと軽く会釈をした。小脇に小さな箱を抱えている。

「それは・・・薬、ね」
「そうです」

彼女の自分をまるで意に介してないような表情に苛立ちを強める。

「あんたは・・・本当に効き目があると思っているの?」
「勿論です」

彼女の自信に満ちた台詞と表情に長い髪の女性はついにキレた。

「あんたの・・・あんたのその傲慢さが、彼を傷つけていることを知らないのっ!?そんな夢物語を見せて何が楽しいのよ!!」
「夢物語・・・ですか?」

三つ編みの女性はムッとした表情を見せる。
それを確認し、僅かな時間優越感に浸ると、長い髪の女性は言葉を続ける。

「あなたには分からない?それがどれだけ途方も無い夢か。彼が不幸になるだけだけね。現実を見なさい」

そう言って長い髪の女性は、自分の考えた解決策を三つ編みの女性に言う。

「これなら、手っ取り早く、彼の悩みを解決できる!・・・この解決方は私が見つけたのよ!あんたじゃなくて、この私が、ね」

瞬間的に考え付いた事はあったが、考えれば考えるほどこの解決法が良いと思う。

「どう?これなら―――」
「そんな・・・それが出来るなら、初めからそうしてます!けど!出来ないから・・・彼には、先輩には、そんな事出来ません!!」
「何時までも幻想に縛られているより良いと思うわ」

長い髪の女性は彼に『強さ』を求めた。夢を打ち切り、現実を見つめる強さを。
自分が想いを寄せる彼は、それが出来る強さを持っているはずだから。

「あなたが思っているような強さは、先輩は持ってはいません・・・けど、夢を追い続ける強さは持っています!」

彼が『夢』を追い続けている年数は、自分の知る限り、十年近くに及ぶ。それだけの意志の強さを三つ編みの女性は見た。

「・・・平行線ね」
「そうですね」

そう言う二人―――魔鈴と美神―――ではあったが、互いの意志を確認し認めたのは確かであった。
其の意思を認めたからこそ、相手に道を譲り、自分は去ることを決め、『二人とも』去っていった・・・。







其の頃、西条輝彦は届くはずのものが来ず、来るはずの人が来ずと、途方にくれていた。




―――おしまい。

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