ザ・グレート・展開予測ショー

そんな『貴方』だから…


投稿者名:マサ
投稿日時:(03/ 9/ 3)

朝。
それは一日の始まり。
人々が眠りから覚める筈の時間。
そして、登校する学生なる人種が群れをなして歩き、公共交通機関の世話になり、或いは死に物狂いで駆け、また或いは禁止されていようと自転車に乗る(時として二人乗りなどしている)時間帯のこと…(飽く迄一例として)。

「ちょっと速すぎますよ、横島さん」
「へーきへーき♪」
後ろの少女が注意するが、横島は軽く返して揚々と自転車を走らせる。
ここ最近だと良く見かけるようになった光景である。
一応の名目上は彼女を学校へ送るために。
何にせよ、結果的に彼の欠席の頻度が多少なりとも下がったらしいのは良いことかもしれない。
説明するまでもなく、横島と言う人物は例え多少遅刻しようが登校した時点で驚かれるような状況だったりするわけで。
しかも、内容からして彼が断るなど、キーやんが魔族側につくよりも在り得ないわけで…。
「(せ、背中にや〜らかい感触がぁぁぁぁっ!?)」
とっても楽しそう(?)だったりする。
「横島さん?」(汗)
それが背後からでも分かりそーな辺りが問題なのだが。
「えっ、何?///」
瞬間的に緩みきった顔を整えて横島が後ろを見る。
流石に横島でもそんな顔を見せることには抵抗があるらしい。
すると、当然の如く彼女が発した言葉は…。
「横島さん、前!!」
「へっ?」
急いで視線を戻すと、目前に忙しく乗用車が往来しまくってる道路が近づいていたりする。
「うわぁぁぁぁっ!?」
「きゃ―――っ!!」
「文珠ぅ〜!」

 ばしゅぅっ

慌てて“跳”の文珠をかけて道路を跳び越えた―が。
直後に背後からクラクションのけたたましいブーイングや、ブレーキを掛けたタイヤの擦れる音や、何らかの物体が衝突する音がちょっと聞こえたが、この際に反射的に横島が逃走を選んだことは言うまでも無い。
ごめんなさい、と彼女の口から言葉が出るが、そんなこと聞こえるわけも無かった。
「横島さんんんっ!(じろっ)」
「ははは…ごめん。次からは気をつけるからさ」
冷や汗混じりに横島が言う。
いや、それ以前にそんなことで済まされるのかっ?
「ほんとですよぉ」
呆れ気味に溜め息を漏らす後ろの少女。
二人にとってはもうどうしようもない状況と言うほか無い。
「ともかく、行こか」
「やっぱりそれしかないんですか…?(いいのかなー…)」





学校。それは、学生という名の人種が時として昼には腹を空かせて死にそうだとか言ったり、『青春』をエンジョイしていることに幸福を覚えたり、友人とある種の話題を楽しんだり、ハートを浮かべているカップルに怨念の篭った視線を浴びせたりする場所…(やはり飽く迄一例として)。

「おはよ、おキヌちゃん…て、またおめぇも一緒か」
六道女学院の校門の手前で会った一文字が溢した言葉である。
「何時もながら酷い言い草やなー(青筋)」
「………おキヌちゃん、行くよ(無視)」
「はーい。…ありがとう、横島さん///」
にっこりと笑うおキヌの顔は輝いているようで、横島は一瞬固まる。
「あ、…うん(可愛いぃぃ…/////)」





「やはり、友人として、仲間として、…いいえ、人間としてあのような殿方の自転車に乗るなんて絶対にいけませんわ!」
どんっ、と机を叩き正面に座ったおキヌに力説したのは弓。
「そ、そうかなぁ」(汗)
「「そう!」」
弓と、彼女とおキヌの間で逆向きに椅子に馬乗りになっている一文字が同時に頷く。
と、弓が天然記念物が空から降ってきたような物珍しそうな表情をしてのたもうた。
「あら、“珍しぃ〜〜〜く”あなたと意見が合いましたわね」
「その“珍しぃ〜〜〜く”が気になるけど、みたいだな」
うっすら青筋を浮かべ同意する一文字。
「ともかく、あのような下品な輩と付き合うのはお止めなさいな」
「ほぉ、あの雪之丞ってやつはそんなにお上品なお方なわけかい?」
「戦車みたいな巨人がお好みなあなたに言われたくはありませんわね、一文字さん…?(ぴきぴき)」
うししし、とからかい気味な口調で言う一文字に弓はむっとする。
結果的に互いに痛いところを突かれたようで、んだとぉ、としか一文字は言えなかった。
「まーまー、二人とも…」
危うく修羅場になる寸前でおキヌが止めに入るのだが…。
「あのさ、おキヌちゃん。癪だけど、私も結論は弓と同じだよ」
「分かってるんじゃない」
「うっせーな。…あの横島ってやつ、かなりの女好きだろ?」
「ええ、まー、それは………常軌を逸して」(汗)
流石に反論できない、こればかりは(笑)。
「あんまし言いたくないけどさ、あいつだったら…その…別にこれ(小指を立てて)がいてもおかしくないんじゃないかな?」
言い終わってしばし黙り込む一文字。
「一文字さん…」
「残念ながら、私も同意見ですわ」
「弓さんまで…。違いますよ!横島さんはそーいう風に見えるけど、実際はそんなこと出来る人じゃありません!」
目に涙を溜めておキヌが言い放つが、自分が声を張り上げてクラスの視線が集まっていることに気付いて慌てて口を抑えた。
「(氷室さんには可哀相ですが…)」
「(友人としては心配なんだよなぁ…)」
二人も二人で、友人のためにと思ってなのである。
友情、それは時には友を思い厳しくなることのできる心の叫びであるっ!(好い加減思い込みっぽい…)





その頃、横島は―。

「おいおい、横島ぁ。お前、またあの元幽霊のコをチャリに乗せてたって話があるがその辺どーなんだ?」
クラスメートにいぢわるい目で問い詰められていた。
「え?んー、まあ…」
「ほぉ?そうかそうか、ならば、ここは一つ俺たちも友人として………。友人として…ぇ…?」
「「「「「不純異性交遊など許さーん!!!!」」」」」
周囲が暴走することもあるわけで、この後横島が体育館裏だとか、男子トイレだとか、お決まりな場所に連れ出された結果は敢えてここでは記さないでおこう…。

「…おキヌちゃん、やるわね。流石に横島クン相手では学校妖怪の私には分が悪すぎるのよね。ああっ、こーゆー悩みって青春って感じっ!」
「あ、愛子ちゃん…?」(大汗)
傍では青春を謳歌している愛子の姿もあったりするのだが。





場所は戻って六道女学院1年B組―。
「(二人にはああ言ったけど、そんなこと言われちゃうと不安だなぁ…)」
はぁぁぁ...、とおキヌが小さく溜め息をつく。
「(別に横島さんを疑ってるわけじゃないけど、女の人に弱いから…。あれ?でも、やっぱりこれって〔疑ってる〕っていうのかな?)」
「ミス・おキヌ?」
「(あうあう、どーしよー)」
「ミス・おキヌ?」
「え、あ、はいっ!」
「今は何時間目ですか?」
「え、えーと、一時間目の歴史…」
と、黒板を見ると英文がずらりと並んでたりするわけで…。
「ノーノー。今は3時間目の英語ですよ?」(青筋)
「すいませーん、あうあうっ」
冷や汗をかきかきその場で頭を下げる、が…。

 ごちっ

ボケていたせいか、見事に机に頭をぶつけた。
「いたぁい....」
「んー、テイク・ケア―気をつけてね」
失笑する英語の桜井先生(?)。
「すいません...」










放課後、それは学生なる人種が苦痛と束縛から解放される至福の時であるっ!(やめい)
「(横島さん帰っちゃったかなぁ)」
横島の高校の校門の所に立っておキヌが横島が出てくるのを待つ。
近頃は横島が帰りも彼女を乗せに六道女学院に現れるので随分と久々に見たような気がする。
そもそも、横島と言う人物を分かっているはずが―否、分かっているからこそかも知れない。
本当に自分の考えている横島と言う人物は本物と一致しているのだろうか。
やはり自分は“数人の内の一人”とでもいうのだろうか。
疑心暗鬼―とでも言うべきかも知れない、こういった場合。
自分の中の『横島』が崩れたとき―――それが一番怖いかもしれないし、他に相手が居るのならそれは自分のこの気持ちに対する裏切りではないか。
端的に言えば――怖い――。
思い過ごしならいい―――が、悪い方向へと考えを巡らせると見ない方が幸せなのかも知れないのだ。
しかし、確かめないとそれはそれで気持ちが悪い―――そんな思いでおキヌはここにいた。
「横島さんこないなぁ...」
小声でそう呟く。
暫時の沈黙―――とその時。
「きゃっ、ちょっと!?」
人影もまばらになった頃に突如響く人の声。
「………え?!」
一瞬反応が遅れたが、確かに女性の声だ。
否、それよりも、おキヌは何処かで聞いたような気がする―この声。

 だっ

おキヌは急いで声のした方―校舎裏の物置小屋へと向かった。
そこにいたのは…






























「よ、横島さん…、何…やってるんですか………?」
恐る恐る、途切れながらその人物にそう問うた。
微妙に服を肌蹴させ、仰向けに草の上に倒れた愛子に同じく上着を肌蹴させてうつ伏せに重なるようにして倒れている横島へ―――だ。
「お…おキヌちゃん………?!!…えーと、これには色々と成り行きが…」
「私は…『何をしてるのか』を聞いて…るんですよ?」
取り合えず愛子から離れて弁解しようとする横島に、問うおキヌの方がだんだんと涙声になってくる。
「あ、あの、だから…」
「おキヌちゃん、本当に何でもないから…(どきどきで青春ってかんじだったけどっ///)」
「愛子さんには聞いてません!!」
おキヌ自身も驚くほど強くそう言った。
「おキヌちゃん…」
恐々おキヌの様子を伺う横島。
「……んの…」
「へ?」
「横島さんの…」
「ちょ、ちょっとぉ…」(汗)
「ばかぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」



 ぱ―――――んっ!



「おキヌちゃん……」
痛む頬を抑えながら、太陽の光を反射した涙を散らして走り行く少女の後姿を唯見守るしか横島には出来なかった。
「(なんで…なんで追いかけないんだよ………俺っ!!)」
胸がずきん、と痛む感覚と息苦しさが…辛かった。









「(横島さんなんか…横島さんなんか…もう……知らない!)」

                    ―――つづく―――

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