とら2nd! 7) 旅立ち
投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 9/ 2)
[ 4月25日金曜日 ]
ハーピーの襲来により、一文字魔理と魔鈴めぐみが連れていかれて3日―――
とり残されたタイガー・洋子・水樹・茜の4人は、魔鈴の家で2人を待ち続けていた。
家の中でじっとしてられなかった洋子と茜は、家の近くを歩いて探索していた。
■異界 魔鈴の家■
がちゃっ
「 ただいまー。 」
「 茜ちゃん洋子さんおかえりなさい、どうだった? 」
「 特に何にも。 半径10キロ程度は沼地ばっかでなんもないわ。 そっちも変化なしみたいやな。 」
「 ええ、タイガーさんも落ち込んじゃって・・。 」
テーブルのイスに座り、左足に包帯を巻いていた水樹は、奥のソファに座っているタイガーのほうを見た。
うつむいていたタイガーに、茜が近づく。
「 所長、元気だせよ。 あいつ(魔理)がそう簡単にくたばるかよ。 」
「 ・・・・・・もう3日経つノー。 」
「 ああ、遅いよな。 」
「 このままじゃあ、とりかえしのつかん事になるかもしれん。 」
「 そうだな、なんとかしねえといけねえよな。 」
「 一刻も早く、元の世界へ帰らんと! 」
「 ・・・・・・・・・・え? 」
「 だってもう3日も事務所閉めたままじゃぞ!!
契約していた除霊もすっぽかしとるし、今日までに支払わんといかん金とかも払えんですジャ!!
このまま元の世界に帰れんかったら、事務所の存続が―――信用が―――!! 」
両手で頭を押さえて、イヤイヤしながら涙を流すタイガー。
「 バカヤロー! 今考えるのはそういうことじゃねえだろ!
そりゃ所長にとっては事務所も大切だろうけどよ、今は魔理達を助けることのほうが重要だろ! 」
はっ
「 そ、そうジャ、魔理サンがさらわれたというのにワシは何を・・!!
ごんっ!がん!ごんっ!がんっ!
魔理サン スマンです!! 魔鈴サン スマンです!!
こんな大変なときに金や事務所のことを考えてしまって、わしはわっしは―――!! 」
「 ・・・重症やな。(汗) 」
「 タイガーさんそれぐらいで! 」
レンガの壁に頭をガンガンぶつけ、血を流すタイガーを水樹が止める。
「 ・・・まあ確かに元の世界と連絡がつかんのはちょっといけんな。
一人暮らしのうちらはともかく、茜は自宅に住んどるから、親が心配してるやろ。 」
「 けっ、あたいの親が心配なんかするかよ。 むしろいなくてせいせいしてらあ。 」
洋子と茜が話してるところに、床で丸まっていた、魔鈴の使い魔が声をかけてきた。
《 ニャア・・・・電話すればいいニャ。 》
「 それが繋がらんのや。
うちのケータイずっと圏外になったまんまやし。 異世界やから当たり前やけど。 」
《 だからうちの電話を使うんだニャ。 そこにある電話なら、人間世界の回線と繋がってるニャ。 》
「「「「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 」」」」
ずごごごご―――っ!
「 なんやとクロネコ―――!!(怒) 」 「 そういうことはもっと早く言え―――!!(怒怒) 」
≪ フミャミャ〜〜〜ッ!! ≫
威圧する洋子と茜。 電話を調べてた水樹が―――
「 でもこの電話、どうやって使ったらいいの? 」
「 こりゃまた古い電話ジャノー。 」
「 どう使うんだ、猫!! 」
茜はじたばたする黒猫の首元を掴んでいた。
≪ わかったから放すニャ〜! ≫
タイガー達は魔鈴の家の電話を使い、仕事のキャンセルや 茜の自宅への連絡などを行った。
そのあとタイガーはエミに連絡をいれ、これまでのいきさつを話した。
〈 そう、それはちょっと困ったわね・・・。 〉
「 エミさん、なんとかならんかノー。 」
〈 ・・・結論を言うと、はっきり言って私らがあんたたちのいる場所にたどりつくのは、ほぼ不可能なワケ。 〉
「 えっ!? 」
〈 GS界広しと言えども、異界と行き来できる人間なんてそうそういないワケ。
魔族にしても、人間界に自由にやってこれるものはほんの一部。
おそらくそういった能力も、魔族が魔鈴を狙う理由の一つでしょうね。 〉
「 じゃあやっぱりワシらは、魔鈴サンが帰ってくるまで、そっちの世界には帰れないとゆーことか・・・。 」
〈 ・・・あんた、3日も待ってるワケよね。 〉
「 そ、そうじゃが。 」
〈 助けに行く気はないワケ? 〉
「 そりゃもちろんあるが、どこいったのかもわからんし、
魔鈴サンの話じゃあこの異界は魔界にも通じとると言っとった!
もしハーピー以上に力をもった魔族に出くわしたりでもしたら―――!! 」
〈 ―――そんな所に魔鈴達は連れていかれたワケよね。
はっきり言って、そんな所から無事に戻ってくる確立は低いわよ。 〉
「 !! 」
〈 待ってるだけじゃ何も解決しないわ。
いま2人を助けられる可能性があるのは、同じ世界にいるあんたしかいないのよ。
・・・・・・・・・どうするワケ、タイガー。 〉
タイガーはしばらく沈黙した後―――
「 ・・・・・・エミさん、ワシ、魔理サン達を助けたい。
クビになった身分で申し訳ないが、ワシらに異界を歩く方法を教えてツカーサイ。 」
〈 フッ オーケー。 じゃあまずは――― 〉
エミは出来る限り、タイガー達に助言を行った。
特定の魔物を回避する方法、野宿する時に必要な簡易結界の張り方等・・・
そしてハーピーの行き先については、ハーピーも鳥の妖怪だし、習性から元にいた場所にまっすぐ帰るであろうと予測し、
タイガーに、魔鈴の家にあった方位磁石が有効かどうかを試させ、ハーピーの飛び去った方角を進むよう促した。
〈 ―――問題はその距離ね。
時速100キロ以上で飛ぶハーピーや魔鈴に対して、人の歩きじゃせいぜい5キロ。
下手したら何十日も異界を歩くことになるワケ。 魔鈴の家に何か便利なものはないワケ? 〉
「 ・・・使い魔サン、なんか魔鈴サンの道具でいい乗り物はないかノー。 」
《 そうだ二ャ〜〜〜・・・・・・あ、アレなら使えるかも! 》
■物置■
黒猫は家の裏側にある物置部屋に案内した。
そこにはいろんな道具が並んでおり、その奥にとりわけ目立つ、木製のタイヤをつけた大きなかぼちゃがあった。
かぼちゃの中はくりぬかれたように、4人座れる座席がついている。
「 これってもしかして・・・かぼちゃの馬車!? 」
「 そういや出てきたなあ、“シンデレラ”にも魔女が。 」
水樹、洋子が言った。
《 5・6年前かニャ。 イギリスでシンデレラの公演をみて感動した魔鈴ちゃんは
三日三晩かけて魔法の馬車を作ったニャ。 》
「 でも肝心の馬がいないようじゃが? 」
《 魔鈴ちゃんは魔法で動かしてたけど、“精霊石”でも可能ニャ。 そこのくぼみに精霊石をはめるんだニャ。 》
「 “精霊石”って、小さいのでも1個何千万もするっていう、あの有名な石のことか!? 」
茜の問いに洋子が答える。
「 ああ、エミさんや美神さん、魔鈴さんもいつも耳や首に身につけとったやろ。
特に美神さんの身につけてる大きいのは、3億か5億ぐらいするやろーな。 」
「 5億・・・どうやって元とってんだ?(汗) 」
「 いや、あれは護身用で 並の除霊では滅多に使わんし、
ワシもエミさんが使った所を見たのはあんまりないケン。 」
「 でも肝心の精霊石がないんじゃあしょうがないわ。 」
「 神通棍に埋め込まれたやつじゃあ無理やろうしなー。 」
水樹と洋子が肩を落としてるところに、黒猫が―――
《 確か魔鈴ちゃんの部屋にストックが何個かあったニャ。 》
「 ほんとか猫!! 」
黒猫と水樹は魔鈴の自室に行き、精霊石が入ったケースを持ってきた。
ぱかっ
「 5個あったわ。 」
水樹がケースを開くと小さめの精霊石が5個入っていた。 茜は興味深そうに精霊石を手にした。
「 初めて触るぜ・・・。 」
「 この大きさやと1個2・3000万ってとこやな。
精霊石の中では小さいほうやけど、魔族との戦いには充分役に立つな♪ 」
「 でもこんな高価なもの、勝手に使っちゃっていいの? 」
《 水樹ちゃん、おいらに聞かないでほしいニャ。 》
「 ・・・まあ今は2人を助けることが先決ジャ。
お金のことは後でワシが何とかしよう。 さ、旅の準備をしよう!! 」
■外■
そしてタイガー達は、魔鈴の家にあった食料などを馬車に詰め込み、旅の準備を整えた。
そしてかぼちゃの馬車に精霊石をはめ込むと、運転席の前に、2頭の半透明の馬が現れた。
使い魔によると、詳しい理屈は魔鈴に聞かないとわからないらしいが、これも魔法技術の1つらしい。
「 この精霊石1個でいつまで持つかノー? 」
「 まさか12時までじゃねえだろな。 」
「 本当に気をつけてね。 」
「 わかっとりますジャ。 水樹サンも気をつけて、魔族がやってこんとも限らんしノ。 」
うるっ
「 タイガーさん・・・ 」
神野水樹は魔鈴の家に残ることとなった。
彼女はハーピーに受けた足の傷がまだ完治しておらず、歩く分には問題ないが、戦いになると厳しい状態だった。
さらに水樹の得意とする神霊の力は、魔界からの影響を強く受けるこの異界では、その力は半減されるのである。
そしてもし、魔鈴や魔理が戻ってきた時のことも考え、留守番を1人残したほうがいいという判断から彼女を残すこととなった。
そして異界の案内役として同行することとなった、魔鈴の使い魔に洋子が話しかけた。
「 あんたも来るんやろ? 」
《 当然だニャ。 使い魔としてご主人サマの身を護るのは当然のことだニャ! 》
にやっ
「 ハーピーの襲撃があったとき、グースカ寝とったクセにな♪ 」
《 そ、それは言わない約束だニャ! 》
「 準備はいいな! それじゃ行くぜ! ハイッ!! 」
前方の運転席に座る茜がタヅナを叩くと、半透明の馬が走り始めた。
「 ちゃんと戻ってきてよー!! 本当に気をつけてよねー!! 」
水樹を残し、タイガー達は旅立つ。
タイガー・洋子・茜・使い魔の3人と1匹の異界の旅が今、始まる―――
―――next key word 『性悪な妖精』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
□後書き□
一度『GS美神』で、冒険もの(旅)をやりたかったんです!(握り拳)
今までの
コメント:
- >「 なんやとクロネコ―――!!(怒) 」 「 そういうことはもっと早く言え―――!!(怒怒) 」
この台詞に爆笑しました。
ついに、魔理と魔鈴の救出に向かうようですね。
しかし、カボチャの馬車で旅に出るとは・・・・。(苦笑)
さて、次回のキーワード『性悪な妖精』ですが、一体誰なんでしょうか?
美神の事務所に住み着いてる(た?)変態妖精(爆)でしょうか?
次回も楽しみにしています。 (TAITAN)
- やっと追いついたです(大汗)魔鈴さんと魔理の安否が気に掛かります!!
魔法習得は一体どうなるのでしょうか?!魔理頑張れ!!
で、タイガー達ですが・・・大丈夫ですかねえ(汗)精霊石も勝手に使っちゃって
後でどんな請求が来るのか?!色んな意味でドキドキの三人と一匹の――――旅 (えび団子)
- オリキャラ+オリ設定+オリ舞台+オリエピソード。
グレテンも変わったものだね。より悪い方向に。
おーい。誰か注意してやれよー。
見捨てたら可哀想だろー。 (U−SUKE)
- ↑↑
あんたら、本当にGSファン?
これのどこがGS美神なんだよ(嘲笑) (U−SUKE)
- 馬車がかぼちゃなら、やはり引くのは馬ではなくネズミが相応しいかと(笑)。
タイガーが事務所の心配ばかりするのは、経営者としての自覚がある証拠なのでしょうが、所員の心配もね。(^^;
「ここは座して死を待つより、能動的に行動するべき」というエミのアドバイスに同意。
次回からの魔界珍道中(?)、楽しみにしております。 (dry)
□賛成票くださった皆様へ感謝の気持ちを込めて―――ここGTYでのこのお話、最後のコメント返しです。
>TAITANさんへ
ううっ、マイナーすぎてわからない方多いかも。(汗)
『性悪な妖精』とは別名『ボガート』のことで、横島が小鳩とデートした時に出てきた妖怪なんですよ〜〜〜。
>えび団子さんへ
魔法習得は、きっと難しいです。
精霊石の請求は・・・相手は魔鈴だから、いろんなパターンが考えられますね。
>dryさんへ
馬ではなくネズミと聞いて、すぐに「サザエをボリボリ食う女」を思い出しました。
だってこの後の旅の中でその女が―――登場予定ですから。 (ヴァージニア)
- 同じく例のシーンで笑わせてもらった横叉です。
冒険ものいいですねえ。僕も好きですよ。
さてタイガー達は魔鈴救出に間に合うのか!?
次回も楽しみにしてますよ。 (横叉)
- □今後の『とら2nd!』について
私自身第2期を始めるにあたり、今後のお話は、GTYの主旨とは離れたものになるのではと危惧しておりました。 お話も創作すればするほど長くなりますし、途中で終わらせるのも忍びないですから、第2期は「煩悩の部屋」での投稿も考えておりました。 字数制限による分断も正直辛い所だったのですが、一度ここで始めたからにはこのGTYの中で終わらせることが主要だと思い、こちらへの投稿を続けた次第です。 厳しいコメントですが、U−SUKEさんの言葉も理解できますし、他に違和感を感じている方もいると思います。 私も無理に投稿を続けてこの場の雰囲気を悪くしたくはありませんし、いい意味で決心もつきました。 (ヴァージニア)
- (横叉さん、コメント感謝!)―――この『とら2nd!』に関して、ここでの投稿は今回で最後とし、今後は「煩悩の部屋」で続きを書きたいと思います。 もちろん途中からでは中途半端になるため、第2期の1話からを再編集したものか、もしくは前作を加筆修正したものから投稿し、今後はある程度まとめた形でお届けしようかと考えています。 まとめ読みをされる方もそちらのほうが読みやすいと思いますし。
以上のことより、大変申し訳ありませんが続きはもうしばらくお待ちください。
そしてここGTYでの投稿、勝手ながら話の途中で終了すること、お許しください。
この場を提供していただいたfukazawa様、今までコメントくださった方、読んでくださったすべての皆様に心よりお礼を申し上げます。
ありがとうございました。 m(__)m (ヴァージニア)
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