ザ・グレート・展開予測ショー

鯉(後編1)


投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 8/31)

のほほんとした笑顔で、お見舞いの品である花束をもってきた冥子を、呆然と鬼道は眺めていた。
つーか動きたくても、うごけないといったほうが良いのだろう。
普通ならば、こーいままで気付かなかった思い人を現れた瞬間、赤くなってぱっと目をそらしたり、どきどきと可愛らしく伺ってみたりするものである。
(大の男がそんなことをした日には、気持ちわるいだろうが)

それどころか、一気に血の気が引いた気さえする。

「ま〜く〜ん大丈夫〜?」

可愛らしく、それこそ、その姿だけみれば可憐な(すこしボケた)美少女といったいでたちである。
(本当は、それどころではない、歩く天災なのだが)

「冥子、鬼道くんは今人生の岐路にいるのよ」
ぽんっと
冥子の肩をたたき美神。
有る意味トドメをさした人間が言う台詞ではないだろう。

「えっそうなんですか?」
はっと目を見張りおきぬ。

「はぁ?」
腹部をおさえつつ横島はうさんくさそうな声を出す。


「………そうね、例えていうならば、隣に安全な整備された道があるというのに、その道ではない、大型の肉食獣ありの、茨道ありの、迷い道ありの、道へといこうとしている人の心境かしら」
うんうんと、納得するように腕組みをし美神。
とんでもないが、鬼道の心境としては近いものがあるだろう。
そして何が最悪かというならば、どちらを選ぶなどという選択肢が鬼道にないということだったりする。


そして、大抵の場合、錯乱した状態のときにそんなことを─
逃れたくても、逃れられない状況に追い込まれたときなにをするか?

─かんがえるまでもないだろう。



(にげようっ!)


鬼道は動かない頭で、それだけを思い。
ばっと、跳ね起きようとしたら、冥子の心配そうな表情があった。
かすかに眉をよせて、心配そうに、こちらを見ている。

どんなに不本意な相手だといっても、まがりもなにも、彫れて(鬼道にとっては、誤字ではありません)いる相手なのだ。
気にならないわけがない。

「あ。大丈夫やで、冥子はん」

だらだらと顔中汗をながしつつ、鬼道。


「でも〜具合わるそうよ〜」
ゴメンね〜っと目を伏せ冥子。


「ああ、そんなキミの─ぶはっ」
横島は、そんな冥子に近づき、肩を抱こうとするが直前で美神にぐーではたかれ失敗。
そして襟首をつかまれ、ずりずりと引きずり、おきぬと共に退場する。

「お邪魔虫は、ここらで退散するわv」(はーとまーくつきである)

まあこの場合、鬼道の片思い(?)を美神はしっているのだし、少し気の利く人間なら誰でもする気遣いなのだが、その言葉を聞いた鬼道は、はっと絶望のふち(笑)にたたせられたかのような表情である。

まあそりゃそうだろう。

寧ろ鬼道にとっては、茨道へといかないためのお邪魔虫というよりも、救いの天使(爆)というべき存在だったのだが。
手を伸ばし、いかないでくれっと言わんばかりの表情だが
そんなもの美神に通ずるわけもない。

にっこしと、意地の悪い笑顔で、

「往生際がわるいわよ〜」

とひとりごちながらその扉を閉めた。


美神令子、鬼である。




「どうしたのかしら〜令子ちゃん〜」

ひとりそんなことを呟き冥子。


「な、なんやろうな」
あははと、乾いた笑いを響かせながら鬼道はいつかぜったいこの恨みはらしてやるっと心に誓った。

─できるかどうかは別として。

つづく

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