とら2nd! 6) 襲来 (後編)
投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 8/30)
■名も無き森■
魔鈴が住む異界にて。
ハーピーのもとから逃げ出した一文字魔理と、怪我を負った魔鈴めぐみは、森の中に身を隠していた。
「 ハーピーについていくって本気かよ! 」
「 ここまでされて私も黙ってられないわ。
一度ハーピーの上司に会ってちゃんと話し合わないとね。
あなたは私とハーピーが出ていった後、私の箒に乗って私の家に戻ってて頂戴。 」
「 なっ、嫌だぜ! 魔鈴さんが行くなら私も行く! 仲間を見捨てて私だけ逃げれるわけねえだろ!! 」
そう言った魔理に、魔鈴は笑みを浮かべる。
「 ・・・仲間か。 私ももう少し若かったら、あなたと友達になれたかもしれないのにね。 」
「 何言ってんだよ、私ら友達だろ。 年が10や20違ったって関係ねえさ。 」
ぴくっ
「 失礼ねえ〜そんなに違わないわよ。 」
「 あ、いや、そういう意味じゃ・・・(汗) 」
微笑んだまま、重いオーラを放つ魔鈴。 だがそれもすぐに消える。
「 フフフッ わかってるわ。 私、学生の頃まで友達いなかったから、あなた達が羨ましくて。 」
「 え? 魔鈴さんが? 」
一文字魔理は、この時初めて魔鈴の過去について触れることとなる。
魔鈴はこの力のせいで、小さい頃からいろいろと気味悪がられていたこと。
イギリスの大学に通っていた時も、中世魔法技術の研究に賛同してくれたのは結局西条だけで、
今でも魔女という存在は、社会的にあまり好意的なのもではないということ。
いつも笑顔でおいしい料理を作ってくれていた魔鈴に そのような過去・事情があったこと、魔理は知らなかった。
「 一文字さん、あなた私の箒に乗ったわよね。 」
「 ああ・・・。 」
「 中世に作られた、“青き稲妻”や“赤い狐”といった強力な魔法の箒なら
誰でも乗ることは可能なんだけど、この箒は私専用につくったオリジナルの箒で、
飛ぶときも常に魔力を必要とするし、並のGSがそう簡単に扱える代物じゃないのよ。 」
「 じゃあ私が乗れたのは・・・ 」
「 あなたには“魔力”が備わっている・・・“魔女”としてのね。 」
魔鈴の言葉に魔理は言葉を失い、固まっていた。
「 それにあなたの名前に、「魔」の文字が入っているのも偶然だとは思えないしね。 」
「 ・・・あ、いや、名前は偶然だろ。(汗) 」
ばさっばさっ
≪ みい〜つけたっ! ≫
「 ハーピー!! 」
「 意外と早かったわね! 」
ハーピーはゆったりと翼を羽ばたかせ、すーっと地上に降り立った。
≪ さっきはよくもやってくれたじゃん! ぶっ殺してやる!! ≫
「 待って、ハーピー。 別に人質をとらなくても私はあなたの言うとおりにするわ。
だからこのコのやったことは許してあげて。 」
≪ ふざけるな! すっごく痛かったんだぞ!! ≫
「 おめえも私のみぞおちに1発くれたじゃねーか!! 」
≪ キサマは痛む間もなく気絶したじゃん!! 弱いからな!! ≫
ぴしっ
「 なんだと妖怪の分際で!! 」 ≪ なんだと人間の分際で!! ≫
にらみ合う魔理とハーピー。
「 2人共やめなさいってば!
それに今度このコに手を出したら、私は今後なにがあっても一切あなた方に協力はしないわよ。
そうなって困るのはあなたのほうじゃなくて? 」
≪ うむむむ・・・!! ≫
「 任務に失敗してもいいんですか? この前私に負けた部下さんにもしめしがつきませんよ♪ 」
≪ こ、このアマ・・・! ≫
ニコニコしながら魔鈴が言うと、ハーピーは歯をギリギリ言わせ、悔しがっていた。
ハーピーはしばらく魔鈴を睨み続け、ため息を1つついた後―――
≪ ・・・わ、わかったじゃん。 協力するなら問題ないじゃん! ≫
「 ただ見ての通り私は怪我をしてるし、もうこれ以上飛べないわ。 今日はここで休まない? 」
≪ い、いいだろう。 ≫
◆ ◆ ◆
その日の夜、魔理・魔鈴・ハーピーは焚き木を囲み、ハーピーのとってきた体長1メートル程度の獣を魔鈴が調理していた。
魔鈴は獣の肉のスープを差し出すと、魔理は口元をヒクヒクさせ顔を引きつらせていた。
「 ・・・これ食えんのかよ。(汗) 」
「 あら? 私の魔法料理の腕前は知ってるでしょう。 」
「 そりゃ知ってるけど、この肉があのグロテスクな生き物だと知ってたら・・・(汗) 」
≪ なら食うな。 人間にこの美味はわからんじゃん! ≫
ハーピーはあぐらを組んでむしゃむしゃと食べていた。
「 うう、絵で表せないのが残念だ。 」
「 ちなみに料理道具や食器は私が魔法で出しました♪ 」
≪ 誰に言ってんだ?(汗) ≫
そして食後―――
「 ・・・それで目的地まであとどれくらいかかるの? 」
≪ 今日のペースだとあと10時間ちょいってとこじゃん! ≫
「 じゃあ、明日中には着けるのね。
ところであなたに私を連れてくるよう言った上司はいったい誰なの? 」
≪ それはボスに会うまで秘密じゃん!
まあヒントだけ言うなら ボスはもと上級魔族で、人間界では神としてもあがめられていたじゃん! ≫
『 上級魔族か・・・・・・厄介ね。 』
魔鈴は深刻な顔をしていた。
ぼそっ・・・
≪ まあ今はちょっと力が落ちているんだけど・・・。 ≫
「 ? どういうことだ? 」
≪ むっ・・・キサマには関係ないことじゃん! ≫
ばさばさばさっ
ハーピーは飛び上がり、巨木の枝の上でそのまま横たわり眠りについた。
◆ ◆ ◆
翌日、魔鈴たちはハーピーのボスがいる場所に向かった。
魔理も結局ついていくことにし、再びハーピーに肩を掴んでもらった。
魔鈴の箒に一緒に乗る予定だったが、怪我の完治してない魔鈴に、2人乗りは厳しかったのである。
≪ 今度おかしなまねしたら、今度こそぶっ殺すじゃん! ≫
「 ちっ・・・わあったよ! 」
■古城■
そして飛ぶこと14時間後、荒野を抜け、大きな門をくぐり抜け、更に突き進むと、
ようやくハーピーの目的地、中世ヨーロッパ風の古びた城にたどり着いた。
すでに空は暗く、星一つ見えぬ夜。
城の中では所々に蝋燭の火が立ち並び、人面鳥(ハーピー)族を中心とした、複数の妖魔がうごめいている。
そんな中、魔鈴と魔理を連れてきた茶褐色の毛色のハーピーは、同じ人面鳥族の若いハーピー達と話をしていた。
≪ ボスは? ≫
≪ ルウ様、それが今外出中でしばらくここには・・・・ ≫
ひそひそ・・
『 魔鈴さん、本当にここから無事に出れるのか? 』
『 魔力さえ回復すれば、いつでもテレポートで脱出できるから。 』
≪ 何をしてる! こっちだ! ≫
ハーピーのルウが案内したその部屋は、普通に人が住めそうな広々とした洋室であった。
30畳ぐらいの広い部屋に洋風ベッドが2つ、テーブルや椅子もきれいに揃えられている。
「 なーんだ、てっきり牢屋にでも入れられるんかと思ったぜ。 」
≪ 牢屋じゃん! ≫
「 えっ!? 」
ばたんっ グオ――――ン
ハーピーが扉を閉めると、部屋全体に結界らしきものが起動された。
「 な、なんだ!? 」
「 これは魔力封じの結界!! 」
≪ 魔法で逃げられちゃかなわんからな! ボスが戻られるまでここにいるじゃん! ≫
ハーピーは扉の前から離れ、どこかに行ってしまったようだった。
魔鈴はベットに腰掛けて、魔理にここでしばらく休むよう促した。
しかし魔理は、扉と部屋の中の様子を注意深く見回していた。
「 ・・・なあ、この結界なら外から中の様子はわからねえよな。 」
「 ? そうみたいね。 」
すると魔理は、意を決したように魔鈴に言う。
「 魔鈴さん! 私に魔法を教えてくれ! 」
「 え!? 」
「 昨日言ってたろ、私には魔力があるって!
今のうちに少しでもなにか覚えていたほうが、今後何かと役に立つかもしれねえしよ! 」
「 ・・・・・・。 」
魔鈴は少し考えると―――
「 “魔女”がどういう存在だったか、昨日話したこと覚えてますよね・・・覚悟はいいのね。 」
「 ああ、私なりにずっと考えてたんだ。 敵はハーピーの一族。
空を飛べるだけじゃ、いざって時に足手まといになるしな。 」
魔理の握り拳に力が入る。
「 ・・・約束してもらえます? 魔法を決して悪用しない、決して悪い魔女にならないと。 」
「 もちろんだ!! 約束する!! 」
「 それにいくら私が教えても、一文字さんが魔法を習得できるという保証はないわ。
私はホウキ乗りのコントロールを一度見ただけで、可能性があると思っただけのことですから。 」
「 わかってる!! 」
魔鈴は念入りに条件付けを言い渡すと、魔理はその条件を力強く受け入れた。
それを見た魔鈴は微笑み、彼女にに魔法を教えることを決心した。
こうして一文字魔理は、ハーピーのボスが来るまでの間、魔鈴に魔法を習うことになったのである。
―――そして舞台は タイガーのいる魔鈴の家からはじまる―――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
□後書き□
3話投稿はたぶん今回だけ!
本当は2話で収めたかったんです〜〜〜。_| ̄|○.oO(つーかどんどん話が長くなっていく・・・)
原作のハーピーとは別人ですが、姿形・性格はほぼ一緒です。
“魔鈴の住む異界”が“魔界”なのかどうかは、原作を読む限り不明でしたので、
“魔鈴の住む異界”は一般的に魔族が住む“魔界”と呼ばれる世界とは繋がっていて、
魔物も幾分存在している―――というように考えています。
そしてだれも思わなかったであろう 魔女見習い・一文字魔理―――
もし魔鈴が弟子をとるようなことがあれば、魔法使いの場合もあるかなあと思いました。
一文字の場合 名前に「魔」が入ってますし・・・安直だ。(汗)
―――魔界や魔女のこと、違和感いろいろあるかも・・・今はこれが精一杯なんですよ〜〜〜!
広い心でご容赦ください。(つд`)
そしてこの異世界編は、タイガー達が人間界へ戻るまでの話です。 9月中に帰れるといいな〜(遠い目)
今までの
コメント:
- あぁ、魔理と魔鈴が魔族の手に・・・・。
あの美神を苦戦させたハーピー、ここに健在ですね。
しかし、魔理が魔女としての素質があるとは・・・。
面白い展開です。
次回も楽しみにしています。 (TAITAN)
- 魔鈴の行動に違和感があります。魔族に襲われる危険性がある自宅に足手まといを招待した挙句人質を取られ、自分の未熟さを反省するどころかテレポートを過信した所為で、あっさり魔力封じの結界に囚われる。いささか状況認識がが甘いかと。彼女は天然な性格でもありますが、ここまでミスが重なるとは思えません。
また、一文字魔理が魔女候補になるのもやや唐突過ぎです。これ以上六女OGに新たな才能を付加すると、物語の持つ説得力(この場合、魔女の希少性も)が薄れてしまうのではないでしょうか。個人的には、原作で出て来た能力(魔理の場合は肉弾戦?)を伸ばす方向で進めて欲しいです。
今回は辛口の評価にしましたが、次回も楽しみにしております。 (dry)
- 魔理に魔法の力が加わると魔法拳みたいなのも使えるようになるんですかねえ。
さて自宅に残されたメンバーはどのように動くのか楽しみにしています。
次回もがんばってください。 (横叉)
- >TAITANさんへ
実は今回登場したハーピーが、はじめての本格的な対妖怪バトルだったりします。
今まで修行とか、悪霊の除霊ばかりでしたから。
魔理の魔女については・・・とりあえず受け入れられたようでよかったです。
>dryさんへ
ううっ、ついに来たか、dryさんの反対票。_| ̄|○
魔鈴の行動の違和感・・・焦るべき所は焦らせ、落ちつくべき所は落ちつかせたつもりだったのですが・・・
そのあたりうまく表現出来なかったようです〜。 (ヴァージニア)
- [続き] 魔理は・・・やっぱり唐突ですよね。(汗) 実は(ここで言っちゃっていいのかな?)彼女に魔法の習得は難しいもの、として捉えています。 魔女の貴重さは今回のテーマの1つですし・・・
私も魔理には拳か木刀の戦いが似合ってると思いますから、基本的には肉弾戦を主軸にしていく予定です。
ならば何故ここで魔女なのか?
それはこのお話の最後のほうで判明させますので、その時まで平にご容赦を―――m(_ _)m
>横叉さんへ
魔法拳・・・霊気拳との区別が難しそうですが、それもおもしろいかも♪
自宅に残されたメンバー達は、ただ待ち続けるだけではないでしょう。
何らかの行動を起こすと思います。 ・・・使い魔もいるしね! (ヴァージニア)
- 魔鈴さんが、捕まる事を前提とした動きをしちゃってるのは、まぁ確かですね(^^; 話の為にキャラが曲がってしまうのは、好ましくない事だけど、実際、難しいんですよね(苦笑) その辺は、頑張って下さいとしか…
魔理の名前に『魔』の字が入ってるから、ってのは有っていいと思います。 魔鈴なんか『マーリン』の漢字宛てでしょうし。 言霊を絡めて説明は……魔鈴は西洋系の人だから無理か(^^; (逢川 桐至)
- >逢川 桐至さんへ
う〜ん、やっぱり話の組み立て方とか、色々難しいですね。
とりあえず、『魔』の字が入ってるからというのはアリということでよかったです。
コメント・助言、これまで本当にありがとうございました。
今後この話は別舞台で頑張らさせて頂きたいと思いますので、またこれからもよろしくお願いします。 (ヴァージニア)
- うあ・・まずは土下座を(笑
オレってこんな昔からコメントしてなかったんですね・・。本当にすみません〜
というわけで感想です〜
魔理が魔法使ってる姿って絵にしたらどんな感じなんでしょうね(笑
今後の魔鈴さんと魔理の師弟(?)関係にも注目って感じです。
実はハーピーが出てきた瞬間、うわ〜なつかしい!とはしゃいでしまいました(笑
なかなか他の小説にでてこないですよね〜
続きが楽しみです〜明日またコメントしますね。
ヴァージニアさん、お疲れ様でした〜 (かぜあめ)
- かぜあめさあああああああん!!(だきっ☆ (←03/11/19『Pure Darkness』より)
まさか本当に3ヶ月も前のお話にコメントしていただけるなんて、嬉しくて涙が(TT)
それなのに次回でお話がストップしてしまってること、なんとお詫びしていいものやら‥‥
はう〜〜〜こうなったら一刻も早く続きを書かせていただきます。
でも今年中は無理っぽく、ここまでのリメイクだけで精一杯(汗)
しばし御猶予ください。m(__)m (ヴァージニア)
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa