#まりあん一周年記念『ヒト』(完結編8)
投稿者名:hazuki
投稿日時:(03/ 8/29)
ジムは少しづつかすんできた視界のなかで、ないている親友を見る。
こんなふうに、泣かせたくなかったのに。
大好きなのに、笑っていてほしいのに、泣く。
ジムは初めて見る、親友が泣いている姿に身体の痛みではないもっと奥深くにある痛みを感じた。
そんなふうに、謝る事なんてないのに。
だって、きてくれたんだ。
ベンクは、怖かっただろうに、きてくれた。
こんなくらい夜道を、きっと灯りも灯さずにきたんだ。
ジムはこの日初めて
人生の終わりの日に始めて親友が自分のために泣いている姿を
いや、泣くではない。
慟哭─と呼ぶに相応しい姿をかすむ視界でとらえた。
ベンクはひくつく喉を抑えながら、涙に濡れる頬をそのままに、口から漏れそうになる声を堪え、がくがくと恐怖のために震える身体をそのままにジムを見ていた。
もうすぐいなくなるであろう、親友を。
そしてこれが、自分のしたことの結果だということを。
なにがあっても、忘れないために。
これは、自分がしたことだ。
だけど、ジムは自分を許すといった。
ならば、自分はどんなに、自分が許せなくても、許さないといけない。
だって、親友がそういっているんだ。
けれど、どんなに許されても、これは自分がした事だという事を覚えてないといけないのだ。
こんなにあっけなく人は死ぬのだ。
殺せるのだ。
そんなことをしらない自分がなにをしたか─覚えておかないといけない。
どんなに怖くても、哀しくても。
どんなに、逃げ出したくても。
「……………………か、おす」
もう目もみえなくなってきているのだろうか?
焦点の合わない瞳で、視線を彷徨わせジム。
「…なんじゃ」
カオスはいつもと変わりない、穏やかな知性を感じさせる声で言う。
「……ごめん、ね……いけなくなっちゃった」
すこしだけ哀しげな声でジム。
「ああ」
淡々とカオス。
表情も穏やかなものだ。
けれどよく見るとその感情に耐えかねてか、全身が細かく震えている。
がそんなものはジムにはわからない。
ジムは、透き通るような笑みを浮かべ、言う。
「けど…………すごく、うれし…かったんだ」
ほとんど泣き落としみたいだったけど、連れて行ってくれるって言ってくれて。
「ワシも、…そう言ってくれて嬉しかったぞ」
「ほんとお?」
「もちろんじゃ」
「…………ああ、すっごく、今嬉しい…」
「マリア…」
「ジム・なんですか?」
「唄、聞きた…いな…あよく…うたってる…子守唄」
「でも・マリア・子守唄・下手・ジムも・そう・言っています」
首を傾げマリア。
マリアは、寝付けないとジムが言うたびにその子守唄をうたっているのだが、そのたびにジムは笑うのだ。
笑いながら言うのだ。
『マリア唄へったくそだなあ』
と。
「うん…マリアの…うた…ききたい」
へったくそな、けれど自分にとっての子守唄を。
いつも共にあった唄を。
旋律が、流れる。
すこし調子外れた声。
情感豊かな、曲を口ずさんでいるのに、ひどく無機質なそして感情を感じられない声でうたうそれ。
決して上手とは、いやむしろ下手くそとさえいえる唄である。
けれどジムはそれを満足そうに聞いている。
「やっぱ、…マリア…唄へたくそ…だなあ」
満足そうに、嬉しそうに言ったこの言葉の後
ジムはゆったりと瞼を閉じそして─もう起きることのない眠りについた。
そしてエピローグへ。
今までの
コメント:
- 次で終わります(つд`)
長かったほんとーに長かったよ(汗)
…てーかこんな話を読んでくださるみなさま本当にありがとうございます。
感謝ですまじで。 (hazuki)
- ついに・・・ついにこの時が来たのですね。
ジムがマリアをかばった時から覚悟はしていましたが・・・やっぱり悲しいです。
でも・・・でもでも、いいと思える話はいいのです!
最初の頃の、ほのぼの子育て物語は何処へ・・・ということはともかく、次回は本当の本当にラストなのですね。
カオスとマリアがジムを通して『ヒト』という存在に対してどう感じたのか、マリアは何を学びとったのか・・・
2人の今後の行く末もきにしつつ、エピローグを楽しみにしています。 (ヴァージニア)
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