とらぶら〜ず・くろっしんぐ(3)
投稿者名:逢川 桐至
投稿日時:(03/ 8/25)
とらぶら〜ず・くろっしんぐ ──その3──
「宜しかったんですか?」
スーツを軽く着崩した妙齢の女性の問い掛けに、書類に目を通していた男が顔を上げる。
「ん? 何がかネ、柏木君?」
厳つい顔に似合わず、どこか柔らかい声音が尋ね返す。
「水元二尉と薫ちゃん達の事ですわ、局長」
「あぁ、その事ネ」
都心の官庁街。 その一角に居を占める建物丸ごと一つが、特務エスパー達を管理する特務機関『BABEL』の本部だ。
ここは、その局長室。
言うまでもなく、この一見ヤクザとも見紛われる男がこの部屋の主、『BABEL局長』桐壺帝三である。 女性の方はこの部屋付きの筆頭秘書、柏木朧。
「何か問題でも有るのかネ?」
「いえ、民間業者と我々……特にあの娘達が組むのは、どうかと思いまして」
懸念を顕に彼女は答えた。
「相手が相手だから、許可した向きも有るのだけどネ。
私は今回の件は、あの娘達にとってもチャンスだと思ってるのだヨ」
「は?」
お茶を淹れながら、思わず聞き返す。
「ウチに属するエスパー達と比べて、異能力者としては変わらない筈のGS達は、世間との間の壁が少ない事は判ってるネ?」
「はい、それはそうですね。
相手が人外の悪霊がメインのあちらに対して、私達は同じエスパー、もしくは人間相手。 害を成す相手が強いほど、こちらは世間の偏見の目に晒される事になりますし」
「そうだネ。
だから、ウチの特務スタッフ達、特にあの娘らは内に閉じこもる傾向が強い。 でも、それじゃあの娘達には良くないのだヨ」
渡された湯呑みを一口啜って、桐壺は続ける。
「だから、普通でない能力を持ちながら、普通の社会に溶け込んでいるGS達と触れ合わせるのは、悪くないと思うのだヨ」
「そう言うお考えでしたか。 では、Gメンが出払っていたのは、丁度良かったとも言えますわね」
腰を下ろした朧も、お茶を飲みながら頷いた
「うむ。
それにあの美神と言う一家とは、私も会ってそれなりの事は知っているしネ」
美神令子の父、美神(旧姓、吾妻)公彦は、史上初の7レベルテレパスなのだ。
この組織を立ち上げるまでに、出会った何人かの人間の中には、彼とその妻、美神美智恵も当然含まれていた。
個人的に美神の両親を知っているし、今回の手配も腹を割って話をしてある美智恵に拠る物だ。 だから、巧くすれば期待通りの結果が得られるだろうと、彼は考えていた。
「件の美神令子氏だが、父親が7レベルテレパス、実妹もまだ測定は行われていないが確実に5レベルを越えるパイロキノと、そもそもエスパーを家族に持っているしネ」
「ただでさえGSですし、それだとエスパーに対する偏見はほとんどありませんわね。
あ、お茶をもう一杯、如何ですか?」
空の湯呑みに目を留めて、尋ねる朧に桐壺は頷いた。
こぽこぽと急須を傾ける彼女を見やると、すぐに窓の外へと視線を向ける。
「ま、後は水元次第だ」
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変わって、長野山中。
ドライブインを目視出来る位置に設置された、対策本部の天幕の一角。
「まず、おキヌちゃん」
「はい」
指名されて顔を上げる。
「突入の際と、脱出の時の為に表で除霊を任せるわ」
彼女自身、自分が出来る事を弁えているから、それは推察出来ていた事。
おキヌはすぐに頷いた。
「判りました」
「で、シロはおキヌちゃんの護衛に回って」
続けて声を掛けられたシロは、こちらはちょっと不満が窺える。
「拙者は横島先生と…」
言うだろうと思っていたから、美神はそんな様子を無視して話を進めた。
「で、その娘達と、私、横島クン、タマモは、おキヌちゃんが道を開いたら突入。
ってところでいいかしら?」
視線を向けられて、水元は頷いた。
何の能力も無い……と自身の事を認識している……だけに、彼自身はバックアップに徹するしかない。 薫達のだけでなく、美神達の邪魔にすらなりかねないし。
「宜しくお願いします。
あの中じゃ、こいつらもけして有能だとは言い切れませんし」
「何だよ、ソレ」
薫のツッコミは、二人して黙殺する。
ムカっとしつつも、水元だけじゃないのだし、と薫も念動力を使ったいつもの行動にまでは出なかった。
自身、らしくないと思わないでもないが、あの一件以降、彼へ実力行使するのはどこか躊躇われた。 それで嫌われたりは、多分しないだろう。 でも、照れ隠しで攻撃することは、葵や紫穂に諌められていたし、自身でも尤もだと思うから。
「まぁその辺は、やりようも有るしね…」
そう言って美神は3人の役割に触れた。
あの霊圧の高さが問題ならば、それはそれで対応出来る筈。 結界を作って、彼女達の周囲だけでも押え込めばいいのだ。
たとい結界の外へは同じ事になろうとも、内側でなら大丈夫だろう。 そうすれば、他の二人はともかく、テレポーターの葵は充分以上の手札になる。
「試した事無いけど、それやったら何とかなると思う」
説明し終えた美神に、出来るかと視線で尋ねられて、指を頬に当てながら葵はそう答えた。
「じゃ次に突入に関してだけど…
取り敢えず、ウチの面子とそっちの3人とでペアを作るわ。 これは、中で不測の事態が起きた場合、個別に行動を取らなきゃならない場合があり得る事と、移動しながら維持出来る簡易結界の範囲がいいとこ2人用なのよ」
「あたしらから一人と、そっちから一人って事だな。 どう言う組み合わせにするんだ?」
「あんたはタマモと」
差されて、タマモがふいっと顔を向けて来る。
「そ、この子をお願い。
で、あんたは私」
頷くタマモから視線を葵に戻して、彼女と自分とを指で差す。
「って事は…」
「横島クンは、その子をお願い」
紫穂を指して美神は横島に答えた。
美神的に、これは必然の組み合わせだ。
要となるのは葵と紫穂。
薫には遊軍的なソレを期待するしかない。 となると、万が一にも自身は紫穂とだけは……色々秘するモノが有り過ぎて……組む事が出来ないし、何よりメインの葵は死守せねばならない以上、美神自身とが望ましい。 戦闘力的に問題のある紫穂は、手の多い横島に任せるのがベスト。 だから残りは、薫とタマモの組み合わせになるのだ。
判りました、と答えて、横島は隣に立った少女へと向き直る。
「よろしくな」
「はい。 お願いします」
ぺこりと紫穂も頭を下げる。
そんな仲良さ気な二人に、シロが羨ましそうな視線を投げ掛けていた。
【続く】
────────────────────
……ぽすとすくりぷつ……
人数の多さに呻いて居たくせに、増やしてどうする(苦笑)
それはさておき… まるまる1ヶ月以上開けてしまいました、すいません(__)
夏のお祭りとか、私的に色々あったんですぅ… って、それは言い訳(^^;
しかしシロ。 相変わらずの扱いだな(苦笑) 問答無用でぶっちらばる時とか、探索行みたいなのなら使い易いんだけどなぁ(^^;
人数的に、削るならこうするしかないのだが。 シロマスターな方々、ごめんなさい(__)
今までの
コメント:
- はじめまして。
人数が増えてまいりましたが、ここは逢川さんということでタマモに注目させていただきます。個人的にはシロの方が好きなんですが(笑)
そして3人組がエスパーを利用してどのようにして活躍するか、期待して待たせていただきます。
投稿お疲れ様でした。 (小天狗)
- さてこの組み合わせはどうなるのか!?
果たして作戦は無事にいくのか!?
これが原作『GS美神』と『絶対可憐チルドレン』という時点で何か事件が起こるであろうというわけで・・・w
次回にも期待!w (ユタ)
- お待ちしてました〜(笑
GS美神と絶対可憐チルドレンの完全なクロスってもしかしたらこのSSだけかもしれないですよね〜先の展開がとっても楽しみです〜
やっぱり自分もタマモに期待してしまいます〜
『タマモ道』(笑)の師である逢川さんを見習ってオレも精進せねば・・。
それにしても横島くんやっぱりひどい目に合いそうな気がします(笑
次回もがんばってくださいね〜 (かぜあめ)
- 3人娘の能力って、文殊で代用できるんですよね。
霊力膨大にして脳天気な横島の姿がいい影響を与えてくれる…かもしれない。
ところで、3人のリーダー格っぽい薫とタマモがコンビですから、
次回以降はタマモの見せ場がたっっっぷりとあったりしますよね? (YAM)
- 面白い、とても面白い物語です。エスパーと霊能者が入り混じったお話を違和感無く描写されているのが、すごいなあと思いました。
紫穂と横島の組み合わせに、異常に興味がそそられます(笑) (矢塚)
- そーいえば、
ひのめちゃんと絶対可憐チルドレンの3人組って年代が近いんですね。
公彦さんとひのめちゃんを超度で測ったところが
話をクロスさせてるのに違和感がないなぁって思いました♪
これからもGSと絶対可憐のキャラがどうからむのか期待です♪ (ハルカ)
- 椎名作品どうしは相性がいいのかな? それとも逢川さんの腕前か?
クロス作品なのに実に違和感がないです。
さて、メンバーの配置も終わりましたし、次回は突入ですか。
なるべく早めの更新を期待しております。
(でもそういう私は、こっちの更新が止まっているんだよなー。あちらを立てれば、こちらが立たず。汗) (湖畔のスナフキン)
- これから漸く突入なんで、なんか先は長そうですが、気長にお付き合い下さい(__)
小天狗さん
はじめまして。 えぇ、タマモもちゃんとヒロインする予定です(笑) …シロは、また割りくっちゃってますが(^^;
3人娘は次にはもう少し動くと思います。
ユタさん
ここで何事もなく行ったら、やっぱ(書いてても)面白く無い訳で(笑)
突入組6人には、どたばた暴れ回って貰う予定です。 (逢川 桐至)
- かぜあめさん
お待たせしました(苦笑) 確かに、聞いた事無いです、他には(^^; …って、短編の『絶対…』で連載しようってのが、そもそも無茶な気も(爆)
タマモ道って… あたしゃ、新興宗教の教祖かなんかですか(^^; ただ、好きなだけなのにぃ(笑)
YAMさん
確かに、代用可能っすね。 尤も細かい制御や出力は、文珠1個じゃ負けてるでしょうけど。
とまれ、自分達を特殊扱いはまずしない横島は、それぞれ程度はともかく良い影響受けてくれる筈…だと(^^;
次、乃至はその次でタマモも動いてくれる筈です。 …いや、まだ手が付いてないんで(苦笑) (逢川 桐至)
- 逢川 桐至
椎名センセのトコのトップがぁ〜(爆) 振り向き紫〜ぽんもそうだが、葵が良ひなぁ(^^;
もしかして、とっとと書き進めないとヤバい事になるかも…(^^; 設定増えたりすると対応しきれなくなるし(苦笑)
矢塚さん
ありがとうございます。 色々その為に余計な設定作っちゃってますが(^^;
紫〜ぽん達ですが、ある意味その組み合わせの為に書き始めたトコロがあります、コレって(苦笑) (逢川 桐至)
- ハルカさん
20世紀末にって言ってるから、公彦はその筋じゃ有名な能力者だったんじゃないかと思ったんで(^^; なら、桐壺は会ってても変じゃないし…
そう言うトコも、少しずつ織り込みながらがいいかなぁと思って(笑)
湖畔のスナフキンさん
違和感無いとすれば、椎名作品自体……と言うより作品世界に、先生らしい雰囲気が流れてるからかと(^^; 少しでも私の文にも有るなら、それはそれで嬉しいけど(笑)
更新は… そうですね(^^; いくつか持ってると追われちゃいますよね。
で、ADwFの5がもう少しなんで、その次の次くらいかなぁ(苦笑) (逢川 桐至)
- コメント返しのあとのコメントで申し訳ありません(^^;
シロの扱いに歯痒い思いをするのはまあ置いておいて、とても楽しんで読ませて頂きました(笑)
これほど多くの魅力的な、個性の強いキャラ達を書き分け、さらに原作から抜き出してきた様に動かす事の出来る腕前には脱帽です(^^)
お話としてはこれからどんどん盛り上がって来る事が予想されますし、次回の投稿をお待ちしております♪ (志狗)
- 志狗さん
いえ、遅い早いは気になさらずに(__) 頂けるだけで嬉しいですし(^^;
シロは、とにかく私の目がタマモに注がれすぎちゃってるからなんでしょうね(苦笑) 好きなのになぁ…
まだ、或る意味スタート地点なんで、これからも頑張ります(__) (逢川 桐至)
- 2作品のクロス、面白いです!
私的に局長の桐壺帝三と秘書の柏木朧の登場には、何故か拍手喝采でした。(笑) 2人がここに登場してくれること、期待してましたから。 局長さんたちは今後もセットで登場してくれること、ほぼ確定ですね。 バックアップとして、今後も水元たちを見守ってやってほしいものです。 違和感なくGSとエスパーの子供達が絡んでますし、1人ずつペアを組んだ彼らがこの先どうなるのか気になります。
続き早く読みたいです〜待ってますよ。 (ヴァージニア)
- ヴァージニアさん
取っ付きはクセのある人間だけど、考えの有るしっかとした大人なんですよね、彼ら。 やはり、出さないとと手が滑りまして(笑)
何せ、ちゃんと最後までのコンテを切らないまま、なんとなく書いてるもんで行き当たりばったりで…(^^; 続きは、暫しお待ちを(__) (逢川 桐至)
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