ザ・グレート・展開予測ショー

とら2nd! 2) 魔鳥召喚!(前編)


投稿者名:ヴァージニア
投稿日時:(03/ 8/24)


■エミの事務所■

ある日タイガーの除霊事務所でアルバイトをしている茜は、エミの事務所を訪ねていた。
そこにはソファに座り、ひとり本を読んでいる、エミの助手の仙香がいた。


「 ちわーっす。 」
「 あら、茜さん久しぶりね。 」


―――夆仙香、霊体触手の能力を持つ、黒髪を肩まで伸ばし揃えている、一文字と同期の六道女学院卒業生の1人。
かつてタイガーの事務所の水樹と同じクラスであり、学生時代は弓と並び、学年で1・2を争っていた実力者である。
1年前からエミの助手をしており、現在はそのままエミの事務所に就職していた。


「 エミさんいるー? 」
「 いま春華(エミの事務所のもう1人の助手・六女卒業生)と呪いの仕事にいってるわ。 」
「 呪い? 」

「 あなたも知ってるでしょ。 エミおねーさまの特技は呪術に黒魔術。
  本業はGSだけど、ここはちょっと特殊でね。
  たまに政府や国際機関の依頼で、悪党に呪いをかけたりしてるのよ。 」
「 呪いって・・・(汗) 」
「 といっても、そんな悪いことしてるわけじゃないわよ。
  今回の依頼者も警察からで、ヤクの売人をちょっとこらしめる程度だから。
  この前の○○暴力団の組長の逮捕もおねーさまが関わっているのよ。
  いやーあの時の組長の顔といったら、もーおかしくておかしくて・・・あはははっ! 」

それを聞いた茜は、あの人に逆らうのだけはやめておこうと再認識した。

「 あ、このこと他の人に話したら駄目だからね。 」
「 言わねーよ。 」
「 エミおねーさまは夜まで帰らないわよ。 どうする? 」

茜は少し考えた後―――

「 なあ、ちょっと聞いていいか? 」
「 あら、何かしら? 」
「 あんた、六女(六道女学院)で強いほうだったんだろ? 」
「 強いほうとは心外ね。 実技の成績は弓と並んで学年トップだったわよ。
  それにあなたのところの所長、タイガーにも勝ったことあるのよ。 」
「 え!? 」
「 2年前の資格試験でね。 聞いてなかった? 」

そのことについて初耳だった茜は、仙香に詰めよって頼み込む。

「 なあ、霊力を強くするにはどうしたらいいんだ!? 」



―――茜は仙香に事の次第を話した。
魔理たち3人が入所してからというもの、自分の出番がすっかりなくなってしまったこと。
最初の何日かは事務仕事なんかを教えてはいたが、それさえ覚えたらあとは除霊の実践力のみのこの世界。
もともと自分は、タイガーの精神制御のために呼ばれたのだが、そのタイガーの出番もないくらい魔理たちは強いということ。
認めたくはないが、認めざるを得ない心境を仙香に語った―――



「 ・・・なるほどね。 まあ確かに半年前に力に目覚めたあなたと
  3年間除霊専門の高校に通ってた一文字さん達じゃあ力の差はあって当然だわ。 」
「 だからよ、強くなる方法をエミさんに聞きに来たんだ!
  なるべく簡単で、なんかぱーっと一気にレベルアップするやつ! 」
きっぱり
「 んなもんないわよ。
  まあそうよねえ〜、3人とも六女の中でもベスト10に入る強さだからね。
  水樹も実力は充分にあるから、今年は楽に資格をとれるでしょうし・・・ 」
「 それよ!! 」
「 え!? 」

「 その資格、あたいも取る!! 」

「 ・・・・・・・・・・・・・。 」

仙香は表情には出さなかったが、その沈黙から茜は仙香の考えを読みとり、顔を赤くそめた。

「 あ―――っ、いま無理だと思ったろ!! 」
「 あはははっ、ごめんなさい、まあ受けるのは自由だから。 」
「 むかっ! 帰る! これだからエリートってヤツは嫌いなんだよ! 」
「 待ちなさいよ。 いきなり霊力が高くなる方法は知らないけど、
  あなたの能力でレベルの高い霊を退治する方法なら知ってるわよ。 」
ぴくっ
「 それホントか!? 」 「 え、ええ・・・(汗) 」

茜は仙香に詰めより、目を輝かせた。

こほん
「 聞くけど、あなたの使う“獣の笛”は、どういう効果があるの? 」
「 だから所長の精神コントロールだろ。 」
「 他には? 」
「 ・・・なんかあったか? 」
「 あなたねー、動物霊を操れるってこと忘れてない? 」
「 ・・・・・・・・・・・<ぽんっ> おおーっ! 」

茜は納得して手を打った。

「 あなた本気で忘れてたわね。 ちゃんと“獣の笛の魔導書”は読んでるの? 」
「 いや〜 ははは! 」



獣の笛とは、エミがタイガーに使ってた笛のことで、獣の笛の魔導書とは、エミが茜に渡した獣の笛の説明書のことである。
仙香はひとつため息をついた後、淡々と話しだした。



「 ・・・いい、獣の笛はもともと動物を操るためのもので、
  動物霊などをコントロールし、悪霊と戦わせたり身を守ったりすることができるものなの。
  氷室さんのネクロマンサーの笛や悪魔パイパーの笛(ラッパ?)なんかもそうだけど、
  音の支配というものは、少量の霊力で強力なパワーを発揮することが可能なものよ。
  なぜなら音波攻撃は、基本的に聴覚のあるものなら全てに反応するものだからね。 」

「 ・・・で、具体的にどうすりゃ動物を操れるんだ? 」
「 そのための魔導書でしょ。 ちゃんと読んで勉強しなさい。 」
「 うっ・・・ 」
「 魔導書は持ってきてるの? 」
「 一応かばんの中に――― 」

茜は仙香に獣の笛の魔導書を渡した。 仙香はしばらく読んだあと、本をとじた。

ぱたむ・・・
「 なるほどね。 エミおねーさまが訳してくれてるとはいえ、
  専門用語が多く書かれていて、霊能の知識のないあなたが取得するには少し難解なものね。 」
「 だろ〜〜〜!! 」
「 でもこの程度なら英文を訳すみたいに、ちょっと辞書を引く程度で理解できると思うけど。 」
むかっ・・・
「 どーせあたいはバカだよ!! 」
「 ごめんごめん。 ・・・明日あいてる? 」

「 ? 」

「 私でよければ特訓に付き合ってあげるわよ。 」
「 いいのか? 」
「 あなたの霊力を最初に見つけたのも私だしね。 ただし厳しくいくわよ。 」
「 へっ、望むところだ。 」


その日から茜は事務所に休暇をとり、獣の笛をマスターするための特訓を行い、仙香も仕事がオフの時に茜に協力をしてあげていた。


―――そして10日後。




◆  ◆  ◆




■タイガー除霊事務所■

その日、事務所には所員の魔理と水樹がいた。
水樹は事務所に2つしかない所員用の机に座ってお札の整理をしており、
魔理は来客用の椅子に座り、書類に目を通しながらあくびをしていた。

「 ふあ〜〜〜っ・・・そういやあ最近あかねの奴見ねえな。 週3日は来てたのに。 」
「 茜ちゃん長期休暇とってるわよ。 」
「 なんで? 」 「 さあ。 」
「 もしかして! 」 「 もしかして? 」
にやっ
「 ひろい食いして腹でも壊したな。 」
チョップ!
「 んなわけねえだろ。 」

茜は後ろから魔理の頭に軽くチョップをくらわした。 魔理は驚いて振りかえる。

「 あかねいつの間に!? 」
「 事務所の入り口の扉、開けっ放しにしといて何いいやがる。 」

「 はあ〜い♪ 」
「 仙香!! 」

水樹は、茜の後ろから出てきた仙香に驚き、席から立ちあがる。

「 なんだなんだ? 珍しい組合せじゃねーか。 」
「 まーね。 タイガーは? 」
「 洋子と厄珍堂に買出しに行ってるぜ。 これからBランクの仕事が入ってるからな。 」

茜と仙香は顔を見合してうなづく。

「 その仕事、茜さんに先陣を任せてみない? 」 「「 は?? 」」

仙香の突然の無謀な要望に、魔理と水樹は驚いた。

「 何言ってんのよ仙香、茜ちゃんにんはまだ―― 」
「 ま、意見はいろいろあると思うけど、とりあえずまかせてみてよ。
  それで駄目だったらすぐ交代させて頂戴。 」

「「 ・・・・・・・・・・・・ 」」



その後タイガーと洋子が事務所に戻り、事情を聞くとタイガーは了解した。
タイガーの車は5人用だが、この日は仙香も加わり、6人という狭さのなかで現場に向かう。
その途中、茜はこの10日間動物霊を操る練習をしていたこと、その間仙香に手伝ってもらっていたことも話した。




◆  ◆  ◆




■除霊現場 工事中の建物■

タイガー達は、3階建ての建物の中に入った。

「 相手は強力な悪霊ジャケエ、ちょっとでも危なくなったら皆で一気にかかるケエノ。
  水樹サンはいつでもあかねサンに防御結界がかけられるよう準備しておいてツカーサイ。 」
「 大丈夫だって。 あたいにまかせときな! 」
「 あかねの奴、結局何の動物霊を操ったのか言わなかったな。 」
「 ・・・霊じゃないんだけどね。 」

仙香がつぶやきに、魔理は「?」だった。

「 ま、見ればわかるわ。 」
「 それにしても仙香ったら、最近外出が多いかと思ったら茜ちゃんのところにいたのね! 」
「 ごめんね水樹。 あのコがちゃんと獣の笛をマスターするまで口止めされてたから。 」



―――六道女学院を卒業した彼女たちは、その後女子寮を離れていた。
魔理と洋子は事務所の近くの同じアパートに住んでおり、
仙香と水樹は、エミとタイガーの事務所の中心に位置するマンションに一緒に移り住んだ。
同じクラスであり、女子寮も同じ部屋であった2人は仲がよく、とくに水樹は仙香を1番の親友だと思い、頼りにしていた。
仙香も最初は嫌がっていたが、水樹が1人暮らしは怖いとか言いだしてあまりにも自分に頼るため、
家賃も半分ですむことも考慮し、結局はまた一緒に住むこととなったのである―――



ゴオオオ―――ッ

≪ オノレGS! マタモ私ノネムリノ邪魔ヲスルノカー!! ≫


3メートル以上の大きな悪霊が姿を現すと、茜は口に獣の笛を近づけて呪文を発した。


〈  鳥よ! 鳥よ!   ぬばたまの夜の沼に漆黒と羽ばたいて!!

   そも、 いかなる不死の翼、 はたは眼の造りしか、 汝がゆゆしき―――


「 おい、今【鳥】って言わなかったか? 」
「 そう、【鳥】よ。 それもこの世界の生き物じゃない。 」


魔理の問いに仙香が答える。


〈  我が命により時空の扉を開き、 再び降臨するがいい!!  鳥よ!! 鳥よ!!  〉


ピュルルルルルルルルルルルッ


茜は獣の笛を吹いた。







―――後編に続く

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